野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

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Recall

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  1. 2016/04/01(金) 00:00:00|
  2. 日記
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Prologue (最終回)

 雨が降ってきた。だが空を見上げれば、雲一つない。何、この町ではよくあること。お天道様を彼方に見やりながら、雨に打たれるなどは茶飯事である。
―嗚呼、全く忌々しい空だ。
 そういえば奴は、この空がとにかく嫌いだった。
「ここに来てだいぶ長くなるが、結局最後までこの町を好きになるなんてことはなかったな。“住めば都”なんて、あれは詭弁だね」
「まあ、いいだろう。もうすぐこことも縁が切れるはずだ」
「それもそうか。いや、全く清々するね。こんな町に住んでりゃ、人生損ばかりだ。さあ、これから忙しくなるぞ。明日は真壁、明後日は内子だ」
「なんだ、随分張りきってるようだが、大丈夫か」
「何、思うだけで何処へだって行けるさ。だが実際忙しい。用事が済んだら俺はもう行くぜ」
「用事?用事とは何のことだ」
「おいおい、今から惚けてもらっちゃ困るぜ。君と俺との間に、用事のない時なんてあったか?」
 そこで目が覚めた。室の中はまだ暗い。置き時計を見ると、床に入ってからまだ一時間も経っていない。
 時々こういうことがある。寝ようと思って目を閉じても、しばらくは無意識と意識の間を漂っているような心地で、その間、奇妙な映像がひっきりなしに瞼の裏に映し出される。はっと正気に戻ると、時間はそれほど進んでいない。私は、これが白日夢というものだろうかと思った。
 また、偶には幻覚のようなものを感ずることもあった。ある夜、布団に入りざまにふと目を開けてみると、天井から細長い脚を有つ蜘蛛のような、あるいは指の長い人の手のようなものが、私の顔めがけてスーッと下りてきた。私は思わず飛び起きて、室の灯りを点けたのだが、そこには何もない。はだけた布団があるだけだった。他日、風雨の荒れる夜半、突然に男女の楽しげな笑い声が聞こえるということもあった。外を歩く人の話し声かもしれなかったが、あんな嵐の晩に、賑々しく歩ける人がいるだろうか。それに、外にいる人たちの声が、耳元で聞こえることがあるのだろうか。
 そういうこともあり、近頃私は、眠るのが無性に恐くなり、夜にすんなり寝つくことができなくなったのだ。
「おい君、虚弱を気取っちゃいけないよ。悪趣味じゃないか」
「しかし駄目なものは駄目なんだ。俺は疲れている。放っといてくれ」
「君はいつも考え過ぎだ。何も不安に思うことはないだろう」
「不安。不安ならたしかにある。ただ言葉にはできないだけで」
「それならないのと同じだ」
「誰がこんな俺を愛してくれるのだろうか。こんなに醜い俺を」
「止せよ。似合わないぜ。いいか。君が何を云ったって、世の中の人間は少しも気に留めちゃくれない。だが忘れてはいけない。それでも何人かの人たちは君を愛してくれているんだぜ」
「そんなの綺麗事さ」
「綺麗事で結構。もともと真意なんてどこにもねえ。ほら、阿桜はどうだ。なんならウイスキイもあるぞ。まずは落ち着くことだね」
「それもそうだな。一杯いただこう」
「いいね。そうこなくちゃ」
 歩いている時に道を渡る猫を見たり、割引の映画を観てあくびを催している時は、こんなことを思い出す。忘れはしない。奴の、廃屋を歩く楽しそうな表情も、酒杯を傾ける寂しそうな表情も。
「君には他に友達はいないのか」
 不意討ちの質問だった。
「いや、俺にも友達のひとりや二人はいる。だがどうしてそんなことを聞くんだ」
「人は同じ話を聞くのを嫌がる筈だが、同じ話をするのもまた嫌なものだ。なのに君ときたら、いつも、まるでこの話をするのはこれが最初であるかのように、どこか楽しそうだ。君は、他の友達に話しはしないのかい」
「こんなこと他の奴らには話せないよ。話せば嫌な顔をされる」
「そうか。いや、それは、済まなかった」
「お前が謝ることじゃない。悪いのは全部俺なんだ」
「まあ、それでもいいよ。でなきゃ俺がいる甲斐がないからな。また、話、聞かせてくれよ」
 その日から私は実生活が忙しくなった。そんな私を気遣ってかどうかは知らんが、奴もぱったりと私を訪ねなくなった。

 そして季節がまた一つ巡る頃のこと。
「仕事が決まったそうだね。おめでとう」
「いやそれはいいが、しかしお前、今まで何処に行っていた」
「君の代わりに湯宿に少々。同僚はどうだった」
「趣味は合わないが、中々気さくみたいだ」
「そりゃいい。そういや、向こうには好い人もいるんだってねえ」
「馬鹿。ただの友達だよ」
「まあ、せいぜいお世話されることだね。いやしかし、神童の里帰りか。全く誇らしいことだね。凱旋のお供はすごいキャラバンかい。それとも狂気のパレードかな」
「師匠の詞を云えばいいと思うなよ」
「軽やかに行こう必要ない歌うたい」
「そのことを云っている」
「だがまあ、しっかりとした職を有って働くというのは君の長年の悲願だったな。俺も自分のことのように嬉しいんだぜ。本当におめでとう」
「それはまあ、有難う」
「さてと。もう用事は全部済んだ。俺は忙しいんだ。そろそろ行くぜ。明日は真壁、明後日は岩国ってな」
「明後日は内子じゃなかったか」
「あれ、そうだったかな」
「まあいいさ。何処へでも行くがいい」
「ああ、君が望むなら何処へでも行ってみせるぜ。それじゃあな。達者で暮らせよ」
 奴の背中が小さくなって、いつの間にか消えていった。
 鏡だ。鏡には残された私の顔が映っている。顎髭をだらしなく蓄えさせて、このままでは仕事になりそうもない。トレードマークも度を過ぎれば汚点になる。髭をこのままにするわけにはいかない。ああ、そういえば新しい住居に入り用な物がいくらかあったはずだ。それも買いに行かなくちゃいけないのだ。昨日とはまるで違う暮らしはもう始まっている。
 そして室を出た。天象は青色。もう晴天から雨が落ちることもない。この町の空はとにかく広い。
「おや、お早う。どこに行くんだい」
「お早うございます。いや何、ちょっとそこまで・・・」
―軽やかに行こう必要ない歌うたい。
「・・・いや、何処へでも行ってみせますよ」
 君が望むなら何処へでも。

(終)

  1. 2016/03/25(金) 19:00:00|
  2. 日記
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謝辞 (先に書く“あとがき”2)

同業者の皆さんへ

ウェンツさん
 新人ブロガーだった私を、オフ会にお誘いいただきありがとうございました。あの時、常識知らずの私にウェンツさんが注意してくれたことは、私のブロガー活動に大きな影響をもたらしてくれました。

たきい(敬称略)
 度々オフ会に誘ってくれたり、秋田に遊びに来てくれたりしてありがとう。医大生や大学生の範疇で満足しないで、今よりももっと大きな存在を目指してください。また秋田にいらっしゃい。

陸さん
 時々コメントをくれてありがとうございました。ネガティブなんだかポジティブなんだか分からない陸さんのブログは面白かったです。これからも執筆がんばってください。応援しています。

こなりかほさん
 時々コメントをくれてありがとうございました。ブログの方はフェードアウト気味のようですが、実生活での仕事や活動が忙しいことだろうと思います。これからもがんばってください。


 そして、その他たくさんの同業者の皆さんも、私のブロガー活動に刺激をくれてありがとうございました。


身近にいる読者の皆さんへ

 今までオレのブログを読んでくれてどうもありがとうございました。時々話してくれる感想は執筆の参考になりました。あと、軽々しい内輪コメントを今までしないでくれたこと、心から感謝しています。


コメントをくれた読者の皆さんへ

 私のブログは、筆者の顔がよく見えないので、コメントがしづらい雰囲気になってしまっています。それにも関わらず、時々読者の皆さんからいただくコメントは、本当に嬉しいものでした。皆さんの勇気に感謝します。



 そして、ただ一度きりでもこのブログを読んでくださった皆さん
 皆さんの存在が励みになったからこそ、私は今までの間、書き続けることができました。心からの感謝をお伝えいたします。
 私と「野良犬の生活」の3年間を支えていただき、本当にありがとうございました。



 次回、日常系赤面ブログ「野良犬の生活」は最終回になります。どうぞお楽しみに。

(シバケン-いかれたNeet-)

  1. 2016/03/24(木) 19:00:00|
  2. 日記
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筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

筆者結語

日常系赤面ブログ「野良犬の生活」を応援していただきありがとうございました

「野良犬の生活」の物語

 はじめましての皆さんへ

長い間ありがとうございました

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