野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

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野良犬の生活

その男は、確かにここにいました。
朝の挨拶をし、腹が減ったら食べ物を食べ、眠たくなったら布団に入る。
はたから見れば、男はちゃんと身体をもって、確かにそこにいる存在として真っ当に生きていたのです。

ですが男はかなりの神経質で、よく頭をかかえて自分の人生について考え込んでしまうことがありました。
「ああ、オレはしっかりと地に足つけて、この世界を生きているのだろうか。オレの存在にも何かひとつくらいは意味のようなものがあってもいいはずなのに。」
実を言うとこの男、町を歩いていても、本を読んでいても、はたまた友だちと酒を飲んでいても、まるで生きている実感がないのです。
気晴らしに、時々は旅行にも出かけてみましたが、そこでも自分の存在を確かめることができません。
たくさんの人が楽しそうな顔で持ちかける誘惑も、彼にはそれほど魅力的には見えません。
とにかく、世の中が用意しているあらゆるものが、男の感覚と少しずつ違っているのです。
世界が自分にとって、大変に馴染みづらいものに思えてきます。
友だちがいるのに、自分がいつもひとりぼっちであるように思えてきます。
生きている実感のない男は、まるで地面から数センチ浮いてふわふわと宙を漂って生活しているような気分でした。
自分のことを、幽霊みたいなやつだと思えてしょうがないのです。


気がつくと男は、夢の中を歩いています。
懐かしい人たちが彼を出迎え、好きだった子がやさしく話しかけてくれます。
草木は生い茂り、川のせせらぎと鳥の鳴き声が実にさわやかです。
「いい景色ですね。こういうところをひとめ母に見せたいものだ。」
おそらく彼は、夢の世界に夢を見たのでしょう。
でもどこか妙です。この夢には出口というものがないのです。
田舎町や地下鉄の駅、あらゆる場所を探しても、やはり出口だけが見あたらないのです。
ついには車に乗って探すことにしましたが、運転が下手な男はとたんに大きな事故を起こしてしまいました。
男は全身の骨を折り、隣に乗っていた女の子は噴き出した血で真っ赤に染まっています。
男は不安になりました。
「困ったな。オレはここから出ることもできずにこのまま死んでいくのだろうか。」
ふと見ると、先ほどきちんと閉めたはずのカーテンの隙間から、日差しが洩れています。
男はそのまましばらく、動かないでじっとしていました。


男がコンピュータの電源をつけると、そこにひとりの偏屈そうな男「H」が映っていました。
Hは、周りの人々から嫌な顔をされたり、睨まれたりしながらも、実に活き活きと楽しそうにしています。
あまりに活き活きとしているので、男は不思議に思って「あなたはずいぶん楽しそうですが、どうしてですか。そんなに楽しくなる秘訣を教えて下さい。」とHに尋ねてみました。
Hは少し怪訝な表情をしました。それでも彼は、彼自身で見つけたありとあらゆる生活のアイデアを、一から十まで男に教えてくれました。
男はHの言うことを熱心に聞いて、一字一句もらさず手帳にメモをしました。
ですが、本当のところ、男にはHが言っていることの少しも理解することはできなかったのです。
それでもHの話を聞いて、今まで彼が世界だと思っていたものは実は本当の世界ではないことに、男は気がつきました。
幽霊だったのは、男ではなく世の中のほうだったのです。
Hは、あの本当ではない世界を捨て、自分自身で彼の世界を見つけて、その中で生活をしていたのです。
「私には私の世界があったように、キミにはキミの世界があるはずだ。」Hは男を励ましてくれました。
男はHに救われるようでした。Hは男の存在を、男の抱える悩みごと肯定してくれたのです。
そして男はHが言っていたとおり、過去から未来まで続いているこの宇宙には、自分の本当に生きるべき世界が必ずあるはずだと信じました。


そこから男は、きっとどこかにあるであろう自分の生きるべき世界を発見するために、本当の旅に出ることを、決心しました。



「野良犬の生活」のはじまりです。






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  1. 2014/01/30(木) 18:28:03|
  2. 未分類

筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

筆者結語

日常系赤面ブログ「野良犬の生活」を応援していただきありがとうございました

「野良犬の生活」の物語

 はじめましての皆さんへ

長い間ありがとうございました

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