野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

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キス・グッドナイト(アメリカ旅行記)





  一、パサデナ

 高度一万メートルに初期値を置いて
 自転の方向を腹ばいに飛行機は滑る
 馴れぬ国際線に身体はざわめき
 わずかな揺れにも心騒いで少しも眠れずにいた
 寝息も聞こえるさなか、機内チャンネルの曲名を覚えている
 「Alone in the Universe」
 一時間、二時間、・・・・・・、嗚呼、ついに九時間!
 長旅の果てに降り立ったのは二月十二日午前十一時
 私は一度、この時間を生きたことがある


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 唐突に目覚めた真夜中は、考え事をするのにちょうどよい
 出国のターミナルの景色も瞼に留まるままに
 街に出て、ピザとコーラに決め込み
 マーケットで買い物をした
 私はいまアメリカにいる
 俄かには信じがたいが・・・
 家も草木も看板も、皆アメリカの顔つきをしている
 見上げる月とオリオンだけは変わらぬ姿だが
 私の異邦人の胸はそわそわとして
 その結果として、パサデナの夜に目覚めて、この項を草している
 この時間にも、モーテル沿いの道を走る車の音は絶えない
 往きの飛行機、機内チャンネルで聴いた曲をふと思い出す
 「Alone in the Universe」


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  二、ラスベガス
 
 シルク・ドゥ・ソレイユ「O」
 水深が瞬時に変わるプールで繰り広げられるアクロバット・ショー
 世界のエンターテイメントの最高峰
 私はこの芸術作品の観劇を、一生の念願に据えていた
 それが観れる、この緊張感
 私の鑑賞眼は少しく歪んでいるのか
 念願としての期待や思い入れが先行して
 素直な感興が兆さない
 それよりも悲しかった
 自分が積み重ねてきた多くのものが終わってしまったような気がして


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 至るところにネオンのケミカルな煌き
 ここは不夜城ラスベガス
 人々の叫声尽きることなく
 隅々に配された誘惑に囲まれて歩く
 ラスベガスの夜は素敵な夜
 こんなに綺麗な夜には、ふと立ち止まってみたい
 カラフルな街の姿をずっと眺めてみたい
 しかし、私を待つものはいない
 ああ、こんなに素敵な夜なのに―


  三、ラスベガス2

 誰も寝ぬ不夜城の朝
 蠱惑の漂う夜とは一味違い
 ストリートには健康的な活気がみなぎっている
 道ばたで思い思いのパフォーマーが日銭を稼ぐ
 多くを受け入れる土壌がここにはある
 私はこの街が好きになったのだった


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 「O」と並ぶラスベガスエンターテイメントのツートップ
 シルク・ドゥ・ソレイユ「KA’」
 ショーは劇場に足を踏み入れた瞬間にはもう始まっている
 巨大なシアターと舞台装置に、まずは圧倒される
 珍しくストーリー仕立てで、その合間に演目が挟まれる
 サーカスというよりは演劇の要素が強い
 しかし、凄い、凄い、凄い!
 自在に可動、回転するステージや
 映像が連動するハイテクの数々に、思わず身を乗り出してしまう

 夜はカジノ
 私は賭けごとは嫌いだったが、行く所行く所の派手な賭場と
 そこでギャンブルに興じる人々の熱気に当てられて
 最早、勝負せずにはいられない面持ちとなった
 ディーラーとのかけひきは初めてで、緊張しながら卓につく
 ギャンブルは運頼みでなく、いかに謙虚でいられるかの勝負と見た
 ブラックジャックで五十ドル勝ち、スリーカードポーカーで六十ドル負けた
 まあ、おおむねこんなもん


  四、カナブ

 レンタカーを借りて回っていた
 アメリカのドライブは刺激的だ
 ハイウェイはどこまでも真っ直ぐに伸びているし
 見渡す限り、どこか造り物のような荒野と岩山が広がり、また連なっている
 ドキドキのロードワークにトラブルはあって然るべき
 スピード超過をコップに見つかり
 ナビが示す先は途方もない砂漠の真ん中だった
 (ここがお前たちのモーテルだよ!)


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 誰かが「普通」と云った
 グランドキャニオンの大峡谷
 私の眼には「普通」ではなかった
 断崖の下に臨むのは、地割れ、地割れ、そして地割れ・・・
 そのスケールの大きさ、広さに眼がくらむ
 谷に向かってすっと突き出た、小さな足場に立ってみる
 一つ足を滑らすと文字通り命を落とす
 安全圏に復帰して程なく
 その状況の深刻さがじわりと真に迫って
 しばらく冷や汗を滲ませていた


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  五、カナブ2
 
 ナバホの聖地へはトラックバスで行こう
 ビッグホーンシープも身動きせずにこちらを見ている
 アンテロープ・キャニオンの
 幾重にも薄く重ねられた地層が
 円形にえぐれられて岩肌はあくまで滑らか
 どこか他の惑星にいるような
 空想的な景趣を往く


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 アメリカ西部の田舎町
 カナブは静かで星が綺麗で心地好い町
 荒地の真ん中、ひっそりとしたこの町には
 もう二度とは来ないだろう
 メキシコ料理屋で食べたタコサラダがおいしい
 アメリカでは野菜を摂れる時に摂るのがいい


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  六、ラスベガス3

 心の故郷、ラスベガスに「ただいま」を
 腰に疼く下心をぶらさげて、真昼間からジェントルマン・クラブ
 ストリップは日本でも行ったことがあるし、下調べもしてきた
 本格的なポールダンスを観たかったのだ
 そう、これは俗なエロ目的ではない
 芸術としての女体を堪能したかった、その純粋な一心である
 が、ダメ!
 思っていたのと大違いで、終始ビクビク
 ポールダンス等のショーは全く行われず
 私たちはひとりに分断され、そして各自にひとりの女性があてがわれた
 よく分からないままに、あれよあれよとプライベート・ダンスへ
 よく分からないままに、あれよあれよとベンジャミン先生を見失う
 (いや、しかし外国人の豊満な身体にぱふぱふされるのは気持ちよかったし)
 (ケツも揉めたので、よかったのだが)
 すきを見て逃げるように店の外へ
 見合わせるのは完全に敗者の顔
 流れるのは典型的な賢者の時間
 愚かな賢者たちがそこに集っていた・・・


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 シルク・ドゥ・ソレイユ「ZARKANA」
 割引の当日券で用意された席は
 劇場中央の真ん中、つまりいい席!
 キャラクター、演目、コンセプトはクラシックかつゴシックながら
 音楽は痺れるロック、映像技術や舞台装置もメカニカルで、その折衷がハイセンス
 サーカスの伝統は守っていて、ラスベガスの他のショーと比べると、カジュアル
 そして素直に楽しい、素晴らしい作品


  七、アナハイム

 レンタカーの旅が終わった
 実を云うと、ドライブ旅行に不安がないわけではなかった
 それは最後まで変わらないままだった
 私は車の運転はできないが
 事故やその他のトラブルが起きるのが恐ろしく
 揺られている時はいつも、全く気が気でなかった
 それが終わった、安堵感
 一つ大きな関門を抜けた、達成感
 さあ、これからはただ、ただ、遊ぼう

 私には、意味のある行動や言動が出来ない
 複数人の中でも、私はひとりになる
 しかし、もう少し立ち止まることをしてもいいのではないか
 一体何を急いでいるのだろう、それがまず分からない


  八、アナハイム2

 アナハイムの空からさし込む日差しはとにかく強い
 ナイロンのロングコートを脱いで、チェックシャツを脱いで
 Tシャツ一枚になっても暑い
 耐えかねて、グッズショップで帽子を求めたのだった
 「タグはお取りしましょうか」
 「ええ、お願いします」
 「賢明な選択ね。今日はとても暑いものね」


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 ディズニーランド・パークは開園六十周年だ
 「ワールド・オブ・カラー」も、それを記念するバージョンになっている
 メインショーが終わって、あたりのゲストも散り散りになってからも
 水は踊り、光は色づき、音楽は奏でられる
 この瞬間に、「余韻」の二文字を押したい
 切なさと美しさの溢れて、感情がしめつけられ、自然と涙が滲む
 「グッド・ナイト」
 とウォルトが云った
 そう、今夜は本当に素敵な夜


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  九、アナハイム3

 ウォルト・ディズニーが鉄道好きだったことは、誰もが知っている
 だからディズニーランドの構想に、最初期から鉄道はあった
 そのディズニーランド鉄道は、諸事情のために運行をしていなかった
 走る姿を見れない、かつ乗れないのは残念だったが
 そのおかげで駅に停車した機関車を、間近で見、触れることができた
 このことは貴重ではないだろうか
 ディッキーズのつなぎを着た熟練の機関士が、蒸気機関車の仕組みを説明してくれる
 英語はすべて聞き取れるわけではないが、云いたいことは分かる
 ひとしきりの講義を終えて、その機関士がぼそっと口にした
 “It is fun.”
 何気ない言葉だが、とても簡単な一言だが、だからこそ心に残った
 鉄道は楽しい―
 その思いから、自らのテーマパークに鉄道を走らせたウォルト
 その魅力を半世紀経ったいまでも受け継ぎ、守る者がいる
 そして、ここに集まる私のような者もいるのだ


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  十、アナハイム4


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 六十年の歴史のあるディズニーランド・パークはただ楽しいだけの場所ではない
 一つ紐解けば、文化遺産の宝庫と知ることができる
 ホーンテッド・マンション、カリブの海賊、蒸気船マークトウェイン号、ディズニーランド鉄道
 ウォルトの足跡、思いのこもったアトラクションがたくさん残されている
 ことに、魅惑のチキルームがよかった
 一九六三年オープン、晩年のウォルトが力を入れた新技術「オーディオ・アニマトロニクス」を初導入したアトラクション
 余計な演出なく、オープン当時とほぼ同じショーが行われているという
 そのタイトル・ロゴに“Walt Disney’s”という冠を見つけた
 説得力、重厚感、深み
 日本のパークが忘れてしまったもの、消してしまったものが
 ここには未だに息づいている、そしてそれを愛する人もたくさんいる
 それがただただ嬉しかったのだ


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 ディズニーランド開園六十周年記念のいちばんの目玉は
 「ディズニーランド・フォーエバー」だと云っていい
 プロジェクション・マッピングとファイアーワークスの融合したショー
 眠れる森の美女の城に、手をつないで歩くウォルトとミッキーマウスが映された
 これは「ワンマンズ・ドリーム」を結晶させたスペクタキュラーなのだと感じる
 メインショーの終わりに、リチャード・シャーマンがウォルトに捧げる「Kiss Goodnight」が流れる
 その優しい旋律に、あまりに幸せな時間に涙が止まらない


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  十一、ロスアンゼルス

 およそ十日の“アメリカぐらし”を終えてつく帰国の途
 その帰り道は海の上にある
 往きより長い十一時間のフライト
 結局一睡もせず、身体中がムズムズと疼くのをこらえていた
 アメリカ時間で深夜二時のテンションで、二月二十三日午後七時の日本に着いた
 このうちに、一度も生きなかった時間が生まれたことになる
 そんなことよりも気持ちが悪い
 ああ、これが時差ボケというやつなのだな
 宿舎へ向かう電車は鈍いトドメを与えた
 しかし、生きながらえて国に帰ってこられた安心、喜びを噛みしめる気持ちもある
 ふと思い返せば、どの夜もそれぞれ違って魅力的だったのを憶えている
 そして、こうしてコンビニで買ったフルーツゼリーを食べる日本の夜も、またいいものだ
 “A kiss goodnight is the start of a journey”
 “A kiss goodnight is the door where your dreams live”
 素敵な夜を過ごすたびに、あの歌を口ずさむのだろう

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  1. 2016/02/26(金) 19:00:00|
  2. 旅行記
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先に書く“あとがき”―日常系赤面ブログ「野良犬の生活」3rd.Anniversary

 本日、日常系赤面ブログ「野良犬の生活」はブログ開設3周年を迎えることができました。これもひとえに応援してくださる読者の皆さんのおかげです。心から、御礼申し上げます。
 以前からお知らせしていた通り、今年の3月、筆者の大学卒業を機に、このブログは凍結いたします。残り1か月と活動期間もあとわずかとなりましたが、近頃は実生活での仕事が忙しく、まともな執筆はできていないので、どこか尻すぼみ的に、徐々に徐々に収束して、最後は息絶えるように静かに終わりそうです。少し寂しいような気もしますが、私らしい終わり方のようにも思えます。
 最終回はすでに書き始めております。提出日も決めました。3月25日です。
 今のところ、最終回として、どうもしっくりこない文章になりそうな予感もするので、本当はあとがきのようなものを残しておいた方が親切でいいのかもしれませんが、あくまで最終回は最終回。その後で何かごちゃごちゃ物申すようなことはあまりしたくない。
 そこで、本来、あとがきとして伝えたかったことは、今回の赤面レポートにしたためることにします。あとがきを先に書く、というわけです。伝えたかったこと、などと云っても別に大したことではありません。最後に、ちょっとした思い出話をさせてください。



 私はこの大学生活において、特に部活動もバイトもやってきませんでした。そのことで後ろめたさを感じることは今も全くないのですが、それでも、自分には何か「これぞ!」と云えるものがないということは気にかかっていました。
 引き出しは人並み以上に有っている自覚はありましたが、どれも自分の芯になるほどの存在ではありませんでした。とにかく、何か一つでもいいから、自分を強く表すものが欲しくて、いつもアンテナを張りながら探していました。
 そんな時に「大学のある先生がブログをやっている」という話を偶然に耳にしました。その先生がどんなブログをやっているのかは正直どうでもよくて(笑)、ただ「ブログ」というその言葉ばかりが頭の中に残ったのです。「ブログを書いてみるのはどうか?」と。もともと言葉で表現するのには慣れてましたから。
 そして、その後にひょんなきっかけで“医大生ブログ”という業界があることを知りました。これはとても心強くて、「自分と同じ学生という立場でもブログを書いている人たちがいる!」ということを知って、いよいよ心を決めることになったのです。「ブログ書くぞ!」と。
 こうして私もブログを開設するに至ったのですが、すべては、偶然耳にした話と、ひょんなきっかけで知ったことから始まったのですね。でも案外と、新しい引き出しはこうした偶然からできるものかもしれないなんて思います。

 ブログを書き始めてもしばらくは自分以外にアクセスはゼロという日々が続きました。どうにかアクセスを増やしたいと、twitterと連動させたり、ブログランキングサイトに参加したりして、まずは業界にこのブログの名前が通るようにしようとあれこれやりました。
 その甲斐あってか、アクセスは次第に増え、ランキングもいいところに入り、読者の皆さんからコメントなどのレスポンスもいただくようになりました。ようやく自分のやっていることがひとりよがりではなくなって、それはもう嬉しかったのなんの!
 記事の内容にも気を遣うようになりました。個人のブログでありがちな「○○食べた☆」みたいなものは、“己の欲せざるところ人に施すこと勿れ”の教えに従って、繕う気は少しもなかったので、それじゃあ、何を書こうかということになりますが、実はあまりネタには困りませんでした。引き出しの多さが私の武器ですから!ブログというのは自分の引き出しも有効活用できるので、自分の一本芯にするにはちょうどよかったなと感じています。

 ブロガーとしての活動も板についてきた頃、ブログの更新そのものよりも、ブログの記事を書くことの方に意識を傾けるようになっていきました。正直、ただブログを更新するだけではつまんなくなったんですよね(笑)。
 ブログの記事なんて、やろうと思えばいくらでも手を抜けるので、極端な話、毎日更新すること自体はそれほど偉いことではないし(中身も濃くて毎日更新するから偉いのだ)。私も一時期は毎日更新するように躍起になっていましたが、段々記事の出来が粗くなっていくのが自分でも分かって、それに嫌気が差して、しばらくブログに手をつけなくなった時がありました。その時に、毎日更新することよりも、自分でも納得できる記事を書くことを決意しました。
 その結果はまあ、読んでの通りで(笑)。素人個人のブログでこれは流石に・・・と筆者も思ってしまうような、実にヘヴィーな記事が多くなりました。これ、読むの疲れますよねえ?読者の皆さんはどう思っていたんだろうか。
 でも書いてる私は楽しかったですよ。文量が多ければ多いほど、推敲する余地もたくさん出てくるので、創意工夫のしがいがあるというものです。
 文章を書くことって、自分自身とやりとりをすることだなあと実感しました。その過程のなかで、隠された自分の気持ちにも気づけますし、自分の存在が自分の中でもっとハッキリとしたものになるような気がしました。そして、文章を書くって、本当は滅茶苦茶疲れることなんだとやっと分かりました(笑)。やっぱり頭脳労働も立派な“労働”なんですね。

 そんなこんなでブログを書き続けて三年間。新しいブログも開設する予定ですが、ひとまずこのブログ「野良犬の生活」は凍結することにします。「野良犬の生活」というタイトルは自分でもかなり気に入っているので、もうこの名を名乗れないことは物凄く寂しいのですが、私の実生活も大きく変わるということで、ブログも心機一転したほうがいい整理になるでしょう。
 ブログを始めて、私の生活が大きく変わったというわけではありません。ですが、同業者の皆さんと出会い、読者の皆さんとやりとりをし、自分自身と語り合ったことで、ブログを書く前には有っていなかった、数えきれないほどたくさんのものを手に入れることができたと感じています。ブログを書いていてよかった。今の私は、嘘偽りなくそう云えるのです。


 それではあと1か月とわずかな間ではありますが、日常系赤面ブログ「野良犬の生活」をどうぞお楽しみください。


(シバケン-いかれたNeet-)

  1. 2016/02/15(月) 19:00:00|
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俺の第110回医師国家試験(これからの医学生へ)

 第110回医師国家試験を受験してきた。
 まだ公式解答も出ていないし、合否も全く分からないので、あまり歯切れのいいことは云えないが、解いていた手応えとして、まあ、壊滅はしていないと思われるので、おそらくは大丈夫なはずである。
 さて、卒業が決まり、この一世一代の大勝負も終わった今、いよいよ私の堕医学生としての仕事はすべて片付いたということになる。これからしばらくの間は、最早「堕医学生Neet」でもなく、ただの「Neet」として生きる日々である。
 ところで、私は医学生ブロガーである。だが、最近は医学生らしい記事はとんと書いていない。そういう記事は、他のたくさんの同業者が書いているから、別に私が書く必要はないわけだ。
 だが、国家試験、つまり6年間の堕医学生生活でいちばん大きな勝負のことは、流石に無視することはできない。だから簡単に、私が国家試験を受けた感想等を、ここに書き留めておくことにした。ただ書くのも芸がないので、なるべく、これからの医学生たちの参考になってくれるように、メッセージのようなものも織り交ぜたい。おそらく、このブログを読んでいる医学生はそれほどいないと思うが、偶然これを目にした時、少しでも参考になるようなものがあったら、他の人にも広めてみるといいだろう。
 なお、以下はあくまで私個人の感想である。もっともらしい講評や今後の対策を求めるならば、各予備校や穂澄氏など、プロの人間の元に駆け寄るのがいいだろう。


◇前提:勉強時間

 私は国家試験の対策を第5学年のうちから少しずつ始め、第6学年への進級時にさらに本腰を入れるように進めていた。だから、大体2年間を対策に充てたわけである。それなりに長めの計画だと思う。
 私は短期間にガーっとやるのが苦手な(というか体力がもたないからできない)性分なので、最初からこのような長期計画を取るつもりでいた。全日程を長めに設定した分、1日1日の仕事量は少なかった。だから、大まかに決めていた勉強のノルマは日中のうちに終わらせて、夜は本を読んだりしてゆったり過ごしていた。
 夜遅くまで勉強はしたくなかった。1日、2日くらい、たまにはしたが、それを続けてしまうと、勉強というものに嫌気が生まれてきそうだったし、なあなあでやって、勉強したつもりになりそうだと思った。そういうことは避けたかった。

 国家試験本番に向けて、私は自分の時間を以上のように使ったが、他の人たちがどうだったのかは、果たして分からない。でも一つだけ分かるのは、時間の適切な使い方は、人それぞれで全く違うということだ。私については、自分には長くて平坦な時間が適していると思った、ただそれだけの話である。
 これからの医学生の皆さんが、先輩から、例えば「国試勉強は夏からでも間に合う」とか、そういった話を耳にした時、その話を真に受けるのだけはおよしなさい。その話中の勉強期間が短くなれば短くなるほど、真に受けるのはおよしなさい。そこで話されることは、その先輩だけに当てはまることで、それがそのままあなたも当てはまるというものでは決してない。

 で、国家試験の勉強を始めるにあたって、まずは自分にはどのくらいの勉強が必要であって、そこまで達するにはどれくらいの期間を要するのか、大体の計画、見通しを持っておくことを、私は薦めたい。
 計画と云っても、別にガッチリ決める必要はない。むしろガチガチの計画の方が失敗することが多い。だから、大まかに「この3日間で循環器のクエバン終わらせよっかな」くらいに思っていればいい。
 計画が遅れたところで、慌てる必要もない。遅れたら遅れたで、また違った計画を立てればいいだけだ。計画は状況によって変わるものだから、それに狂いが出た際は、とりあえず現在の状況を再確認、そして再構成してみるといいだろう。状況が見えて、何をすればいいかが分かると、意外とストレスもかからない。国家試験の勉強はメンタル面も重要だから、勉強に取り組んでいる間は、できる限り感情的にはならない方がいいと思う。


◇前提2:勉強方法

 国家試験に向けて、私が使った教材は
・クエスチョンバンク全冊
・イヤーノート
・レビューブック必修
・病気が見える 婦人科・産科


である。
 大半の人がやっているネット講座、私はやらなかった。そもそも私は紙を読んで勉強したい人間だし、パソコン―普段、ブログを書いたり、アニメを見たり、“This video has been deleted.”の文言に頭を抱えているもの―の前で勉強は、もう絶っっっっ対にできないと思っていたからだ。
 イヤーノートを読んでクエバンを解くということをメインにやっていた。この時、イヤーノートを自分だけの辞書みたいにしたいなーと思い、マーカーを引く以外に、空いているスペースに補足を書き込むようにしていた。
 例えば、「拘束性換気障害」と書いてあったとする。拘束性換気障害と云ったら、「%VC<80」だなということはすでに分かっている。だが、その分かりきっていることも一々書き足した。分かりきっていることを、さらに分かりきっていることにしたかった。


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 もう一つ私の武器になったのが、診療科ごとのメモ帖。絶対に憶えるべき基本的事項の他、「ええーっマジでー!」と思ったことや、いつまで経っても覚えられないこと、クエバンで何度も間違ったことなどを、逐一書き留めたのをまとめたものだ。これはイヤーノートでカバーできないマイナー科の勉強で役に立ったし、見直すのにも便利だった。


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 また、マイナー対策ということでいったら、イヤーノートのアトラスも便利だった。マイナー科は画像が特徴的な疾患が多いから、各疾患のページに基本的なことを書き込んで、簡単な参考書のようにした。


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以上のようなことをして、私が目指していたのは、「みんなが知らないことを知っていること」ではなくて、「みんなが知っていることを確実に知っていること」だった。つまり、基本を大事にした。基本が身についていれば、その後に続くような発展的な知識も吸収しやすくなるだろうし、応用も利くようになるだろうと考えたのだ。




 さて、このような前提条件を引っ提げて、国家試験本番に臨んだ。その中で思ったことがいくつかある。


①輸液、抗菌薬―お仕事に踏み込んできてる?

 これは他の多くの受験者も云っていることだと思うが、第110回では、輸液、抗菌薬をテーマにした問題が、だいぶ踏み込んだ内容になっていた。最早、「細胞外液補充したいから・・・b.輸液!」とか、「細菌性感染症だから・・・d.抗菌薬!」という答え方はできなくなっている。
 輸液、抗菌薬と聞くと、研修医のお仕事じゃないかなーと思わなくもないが、国試合格後に始まる仕事への取っ掛かりを作ってほしかったのかしらん。
 先輩から、「本番前に『内科レジデントの鉄則』とか、読んだ方がいいよ」というアドバイスをもらったにも関わらず、それに従わなかったことを後悔した。
 これからの医学生の皆さんは、もしかしたらそういう簡単な教科書も読んでみた方がいいかもしれない。もちろん、イヤーノートや各予備校の講座がそれに適応したものになる可能性もないわけではないけど。


②模試を受けててよかった~

 私は、本番前最後の第4回テコム模試だけ受けた。その時によく分からなかった事柄について、簡単に見返しておいたのだが、それをしてよかったと思った。模試で出た問題や、模試で気がかりに思ったことは、成程、たしかに本番でも出るのだと感じた。もちろん全500問のうちの数問くらいだが、そういうところで、余裕はどんどん稼いだほうがいいと思う。模試は最低一度は受けるといいだろう。


③試験期間中も見直す

 もう使い古された云い方だが、これは真実味がある。事実、初日で出題されたテーマは、2日目でも出される。結構出される。それを分かっていたのに、あまり真面目に見直しをせずに、また同じテーマが分からなかった自分の迂闊さ加減を心の底から呪う・・・。
 終わってから云うのはだいぶアレだが、国家試験は3日あると思わずに、1日+1日+1日と思うのがいいかもしれない。それで、「初日は2、3日目の模試」、「2日目は3日目の模試」くらいに認識するとよかったのかもしれない。模試だと思っていたら、少しは見直す気にもなれるだろう。




 他にも色々と思うところはあったが、それはあくまで個人的なことで、これからの医学生の皆さんにはあまり参考にはならないだろうから、このくらいに留めておく。
 さて、最後に、顔も見知らぬ後輩たちに云っておきたいことがある。合否も決まってないのに、こういうことを云うのは少し気が引けるが、一度でも国家試験を受けた者からの助言の一つとして聞いていただきたい。


◇国家試験は楽じゃない

 国家試験は、本番だけでなく、そこまでに至る準備期間もすべて含めて国家試験なのである。そして、国家試験で本当に辛いのは、その準備期間である。その長い準備期間と比べると、3日で終わる本番などは、はるかに軽いものだ。事実、本番の3日間は意外とあっけなく終わる。
 試験を控える重圧、勉強が進まない葛藤。それらの不安や苦しみは、すべて準備期間に襲ってくる。しかも、何度も、何度も。計画とか効率とかでうわべを囲っても、それらを貫いて内面を刺すものはたしかにある。
 でも、誰だってそういう思いをしながら国家試験に向かっているはずだ。楽な道など、どこにもない。
 だから頑張るしかない。精神論はあまり好みではないが、事実、能力や計算だけでは乗り越えられないような部分があるのだ。だから、頑張るしかない。
 頑張ろう。皆さんの根幹にその思いがあったなら、それを絶対に枯れさせないでください。その思いが、すべての原動力です。頑張れ。


  1. 2016/02/10(水) 19:00:00|
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3月28日医大生ブロガーオフ会参加できません!

某日某刻。

一日のノルマをすでに終えて静かに夜を過ごしていた私のもとに、とある同業者からのメッセージが届いた。
内容は以下について。

医大生たきいです。「3月28日医大生ブロガーオフ会開催決定!」


お!オフ会か。オレの医学生ブロガー生活も終わることだし、最後くらい同業者のみなさんに顔出しておきたいところだな。
さてさてさーて。そんで、日程は・・・、


ん!


「3月28日」


ふぅ~、落ち着け~、落ち着けよケンちゃん~。

その日は仕事始めの4日前だし、引っ越しとか、新生活の準備とかでクソ忙しい時期だな。
そんな時に、秋田から東京に、泊りがけで行ってもいいのだろうかいやない反語ォ!
嗚呼・・・(嗚咽)。


\(^o^)/




というわけで、医大生ブログ業界最速で己が立場を表明いたします。


3月28日医大生ブロガーオフ会参加できません!

なーんか、デ・ジャ・ヴ? → (医大生ブロガーオフ会2015in東京参加できません!


最後の最後くらい、顔出したかったけど、都合が合わないんじゃしょうがないよな。
件の同業者によると、そこそこの人数集まりそうなようだから、ことさら残念だ。
こうして私は、最後まで謎のブロガーとして医大生ブログ業界から消え去ることになる。

・・・いや、もうすでに業界からは消えてるか。


まあ、出席される同業者の皆さんは、私の分までどうぞお楽しみください。

  1. 2016/02/10(水) 10:08:53|
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筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

筆者結語

日常系赤面ブログ「野良犬の生活」を応援していただきありがとうございました

「野良犬の生活」の物語

 はじめましての皆さんへ

長い間ありがとうございました

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