野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

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試される大地へ 一、札幌

土日の二日間を利用して、“試される大地北海道への弾丸旅行に出掛けた。
今回はいつもの野良犬一匹のさびしい旅ではなく、田舎の祖父母・姉との家族旅行の形式であった。
今年度の年始に里帰りをした際、突然にこの企画が持ち上がったのだが、当時、翌日が試験だったとはつゆ知らなかった私は、持ちかけられたときに即答の速さで同行の返事をしたのだ。
まさか自身初の北海道上陸がこのような形で実現するなどとは思ってもいなかった。
今回は旅費や交通費等は一切出さなくていい甘えっ放しの旅で珍しく金銭的には悠々としていたが、それにしてもこういうときの家族の経済力には全く敵わねえ。

実は新潟無機終焉都市から北海道まではフェリーなんかも出ているのだが、日程的にそんなチンタラしたことはできないし、そもそも飛行機でひとっ飛びをすれば簡単に済むことである。
飛行機を使えば旅費が一気に跳ね上がるために、私は旅の移動手段としてのこの方法は完全に無視を決め込んでいたので、大学に入って以来、飛行機というものに乗り込んだことは一度もなかったのだが、しかしこれも祖父母持ちということで、私は実にすんなりと高校生時代以来の久しかった飛行をすることになった。敵わねえ。
ところで、交通費のかね合いということ以前に、実は私は、飛行機なんてものは旅の手段としては最も劣悪なものであり、あれは単なる仕事のためのものに成り下っていると思っている。
ビュンとひと飛びなんてまるで風情がない。
まあこれについては人それぞれ意見があると思うが、私は旅をするのならやはり鈍行の列車にいちばんの興を覚える性質なのである。
さて・・・、“旅人”の私は上のように考えるが、一方で私は、男の子らしく普通に乗り物全般も好きだったりもする。
隠れて“乗り物好き”の面も持っていた私は、上であれこれ言いながらも結局飛行機に乗るのは結構好きなのである。
だって楽しいじゃんね、飛行機。

出発地点の新潟空港までは、新潟駅から直通のバスが出る。
私は駅でこの路線バスを見かける度に、オレには全く縁のないものと決め付け勝手に拗ねていたが、まさか自分がこのバスに乗るとは微塵たりとも考えてもいなかったので、なんてことない出来事だが少し感慨の浅からぬものがあった。
幸いにも、家族が手配してくれたチケットが搭乗手続きをせずにすぐさま検査場に行けばいい便利な種類だったので、離陸までの煩わしさが私の身にふりかかることはなかった。
検査場で愛用のエルエルビーンの編み込みブーツまで脱がされた時には流石に閉口したが。

乗り込むプレーンは廉価のチケット代、あるいはそもそもの需要に見合った小型のもので可愛らしい。
案の定機内は狭く、無駄に図体のデカい私には辛いものがあったが、最大の楽しみのC.Aさんがおかめ顔の美人だったので忘れた。
これまた運良く窓際の座席であったので、天候が吹雪いてきたことを抜きにすればなんだか面白い空路が予感させられる。
そして迫る離陸のとき。機体が動き始めたときのワクワク感は異常である。
滑走路に達すると、一旦停止してから「さあ行くぞ!」とばかりにジェットを噴射する飛行機。すっごい速いよ!
そして窓から見えた地面が段々と遠ざかっていき、あの鉄の塊が本当に空を飛んでいることを私に知らせた。
なんかありがとうライト兄弟。
新潟上空は雲が豊かで視界は不良、機体全体が雲に包まれているみたいだったが、航路を進むにつれ次第に空も明るくなり、津軽海峡を越えるあたりでは見事な青空が見えた。
なお、機内BGMとして平沢進の「上空初期値」をリピート再生していたのだが、実際に空にいて私はやっとこの曲のイメージをつかむことができたかもしれない。





 見よ白き視野を昇り
 見よ「ようこそ」と聞こえた
 見よ錯視の霧は晴れ
 見よ「ようこそ」と聞こえた
 見よ隠し絵は解かれて
 見よ「ようこそ」と聞こえた
         
        ー平沢進「上空初期値」より抜粋


それにしても窓から見える風景があまりにミニチュアのようで(あるいはミニチュアを超えるリアリティーが感じられず)なんだか映像を見せられているような気分になった。
作り物の偽物みたいだったが、もちろん事実はこれとは異なり眼下に映るものはすべてが本物なんだと思ってみると、ちょっと不思議だった。
そこから見渡す地平があまりにも遠かったが、これでも日本という一小国のたった一地方しか見えていないのだと知り、眩暈を伴う昂揚が湧いて出て来た。
ここで機内アナウンスが。

C.Aさん「新千歳空港の天気は晴れ、気温は-8℃です。」

ちょっとまて。気温まて。

さて、私を乗せた飛行機は、新潟を昇り出羽の雲を往き田舎の両親を飛び越し津軽平野さえ遠く見下し北の海峡をまたぎ函館を眺めて遥かに羊蹄山を望みながら一面の木林の中のエアポートに降り立った。

新千歳空港内で、すでに秋田空港からの便が到着していた祖父母たちと合流。
私は広い空港内を探し回っていたので、北海道仕様の重ね着の旅装だということもあって、もう暑くて暑くて仕方がなく少し疲れちゃった。
空港に併設されている電車の駅から、札幌駅までエアポートライナーという急行列車に乗る。
なお、ここまで一度も外に出ていないのだが、合流の際の火照りがまだ続き、電車の中でも暑い思いをした。
およそ50分ほどの車窓からは、自身初の北海道の景色が・・・、とはいってもキタキツネが姿を見せてくれるなどということもなく、特にこの地方らしい光景をお目にかかることはできなかった。
そういえば、一時、建物も車も視野に入ってこない見渡す限りの大雪原があったが、これを見た私は今敏監督の「千年女優」に出てくる鍵の男の故郷の描写があんな感じだったと思い浮かんだ。

なんやかんやで札幌駅に到着である。地下のホームに降りるために、ここまできてもまだ大地の寒気を頬に感じていない。
当駅で、ここ札幌市に住む親戚(どういうつながりかはよく分からないが。)と合流した。
言い忘れていたが、この旅はこの親戚のおじさんを頼ってのものであり、この人が二日間に渡って色々なところを案内してくれるのだそうだ。
私の性格、特に旅人としての性格をよくご存知の人ならば、この時点で嫌な予感がすることだろうが、ここでは省略して旅行記を先に進める。

祖父母は親戚宅、私と姉は市内のホテルに宿泊(宿代はやはり祖父母持ち。敵わねえ。)するので、一旦ホテルに荷物を預けて、私達一行が早速向かったのは、大通公園で開かれているさっぽろ雪まつりのメイン会場である。
おそらく当旅行最大の目的がこのさっぽろ雪まつりだっただろう私は違ったけど。
でもこの祭りは子供の頃からテレビの液晶で様子を見ることしかできなかったので、私も当然楽しみにしていた。

すすきのにあるホテルから大通公園までは歩いたが、札幌市は開拓されてできた比較的新しい街であることもあり、街のつくりが京都市のように格子状になっていて分かりやすく地図も頭に入りやすい。

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今では珍しい路面電車も通っていて、街を東西に走っている。

それにしても、

(^q^)く北海道寒すぎだろおえうえーーーるえうおおおwwwwwwwwwwwwwwww

寒さ対策で超厚着してきたけど、寒い。
指先や前頭葉が凍るかと思った。
出発前夜に参照した気象情報ではこの日の最低気温は-11℃、最高気温でも-4℃と、雪国に生まれ育った私にも体験したことのない領域に踏み込んでいる。
やはり色々と“試される大地”なんだと体を縮こませながら歩く道中でしみじみと実感した。

やがて雪まつりのメイン会場に到着である。
人気のあるイベント、かつ土日効果もあってかすでに大勢の人が詰めかけていて、なんだかヤになる。
大通公園はテレビ塔のふもとの1丁目から12丁目まで東西に長く伸びているが、混雑緩和のために東→西及び西→東に行く際にはそれぞれ一方通行となるように規制されてあって煩い。
だが、人がゴミのようにいる中を歩かなくてはいけないことを除けば、迫力の雪像を目の当たりにして圧巻だった。
昼間から飲む地酒の熱燗もまた格別というもの。


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大雪像の造型は当然だが、雪像の後壁も中々の見物である。見よこの圧迫感!

CIMG1793.jpg

私も大好きなポンキッキーズの像もあって、結構こういうのは嬉しい。

CIMG1805.jpg

ポンキッキーズと言ったら、会場の規制用のフェンスはなんとガチャピンのデザイン。最近、こういうのも凝ってるけど、これは初めて見つけた。

CIMG1804.jpg

各雪像の前方はステージのようになっていて、様々なイベントが開かれている。
ゆっくり静かに見たい派の私としては目障り耳障り以外の何物でもないが、まつりなのだからこういう催物はあって然るべきだろう。
他のイベントとしては、特設のジャンプ台でスキーのモーグルセッショントヨタビッグエアーのスキー版と言えば分かってくれるだろうか?。)等が披露されたりして、これは私も少し見たが、バックフリップや3D技が次々繰り出されて面白かった。
また夜間イベントのメインであろう、雪像に映すプロジェクションマッピング・ショーは、時間の関係でちらりとも見ることができなかったのでこれは大いに残念である。



さて、札幌市ではずっと雪まつり見物していたわけではなく、少し会場を抜け出して足を運んでみたのは、北海道庁旧本庁舎、通称「赤れんが庁舎」である。

CIMG1792.jpg


実は私の希望だったりする。やはり時代物の洋館好きが発症してしまったのだ。
それにこの建物は平沢進の曲のPVにちらっと映るのだ。ちょっとした聖地巡礼である。

それがこちら。「TOWN-0 PHASE-5」(2:42あたりに登場)






通称の通り、赤れんがの外観が美しい。
特徴的なドーム。

CIMG1788.jpg

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裏に回って後ろ姿を見ても、瀟洒で洗練されている。
こっちの見姿を評価する人もいそうである。

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側方から見たドーム。五茫星の意匠が目につく。

CIMG1719.jpg

建物内部には展示室が設けられている。
白状してしまうと、私は北海道の歴史は全くの不勉強で、ここに所蔵されてある資料の価値はよく分かっていないが、
各部屋の洋風のデザインの当時と変わらぬ佇まいは、その芳醇な風味を堪能することができたと思っている。

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さて、そろそろこの日の災難について触れてもよい頃合いだろう。
先述したように、今回の旅行は祖父母・姉に同行し、市内では親戚に案内の受けるという形式をとったが、
たぶん旅人の読者がいたら私の気持ちを分かってくれることと思うのだが、私は旅行においては自由に動き回りたい側に属していて、基本、案内などは不要なのだ。
そもそも私は旅に出る前に、目的地の案内書を熟読し、大体の地理関係や交通網を大方把握してからいざ出発とするのが通例であり、あまり人から教わることはない。(案内書に書いてあるようなことは、という意味。)
旅というのを抜きにしても、自分の行動を変に制約されるのが嫌いなのだ。先にこう言った方が分かりやすかったかもしれない。
それだから、この日もガイドを甘んじて受け、ひとりでに踊る旅心をひたすら宥めて抑えて言いたいことも言えずにずっと過ごして辛い思いをしていた。
旅費を出してもらってる立場なので、わがままを言うのは本来よくない行動なのだが、それも含めてこちらはこちらで気を遣うことが多く、次第に頭が痛くなってきた。
旅の疲れもあっただろうが、おそらくストレス等からくる神経的なものだと思う。
私はストレスへの耐性は人一倍持っている(そうでないとやっていけない。)つもりだが、時たま、許容限度量を超え堰を切ったように頭がズキズキと締め付けられるように激しく痛むことがある。
たぶんこの日のもそれで、自分で思っていたよりも、鬱憤がストレス過重となっていたみたいである。
そのまま夜まで続き、おじさんが行きつけの居酒屋に用意してくれた北海道の海の幸尽くしの御馳走も全く手がつけられず、見てるだけで吐き気がしてくるという始末だったので、豪勢な刺身盛りや毛ガニにやきんきの鍋が目の前にあるのに、ずっと眼をつむり辛抱していた。
普段は平気の酔っ払いの馬鹿騒ぎの声や手拍子が脳髄にガンガンと響き、これは普段から嫌っているタバコの煙が容赦なく血管を締め付けるようで、まるで生きている心地がしなかった。
祖父母やおじさんにもいらぬ気遣いをさせてしまい、本当に縄があったら頸をくくりたい気持ちだった。
それでもなんとか店を出て、ホテルに戻って来るとだいぶ楽になった。
外の冷たい空気を吸っていた方が気持ちがよかったので、部屋に戻る前に、姉とすすきので開催されている氷の彫像の祭典を見物することにした。
調子の良いことを言っているが、ホテルに至ったら本当に驚くように痛みが引いてきたのであるから信じてほしい。

きっと眠らない街・すすきの。
この一角だけで新潟無機終焉都市では太刀打ちできないことを知る。

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氷の白州
北海道なんだからそこは余市でしょ~う!とは思う。

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それにしても、すすきのの活気はよかった。
寒いなかでも夜までわいわいする人間がいるというのは景気がいいことだ。


ホテルの部屋に戻ったあとは特に何もせずに、明日に備えてゆっくりするに努めた。
一時は親戚の家に泊まる案が浮上していたのだが、ホテルでひとりになる時間がなかったら、きっと私は発狂していただろう。
たった半日そこらで、自分の“ひとり”への執着度を見、これが思ったよりも深みにはまっていることを意識させられた。あまりよい傾向でないのは自分でも分かっている。
夜が明けたら小樽に行く予定だった。小樽は私がいちばん楽しみにしていたところだ。
この日のような散々な事態は繰り返したくないので、明日は体調が悪くならないといいなと願いながら就寝した。










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筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

筆者結語

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