野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

姨捨独歩記(おばすてひとりあるき)、あるいはどうして私はあのときブーツを履いていたのだろう

 かの俳聖松尾芭蕉も訪れ、今では日本三大明月の一つに数えられているという姨捨に足を運ぶ機会があった。
 旅のはじまりはJR篠ノ井線姨捨駅。姨捨駅は標高五百五十一メートルの山の中腹に佇む無人駅であり、全国でも珍しいスイッチバックを有する駅としても知られている。「スイッチバックで殺せ」である。またこの駅のホームから見下ろす善光寺平の眺望はまさに絶景であり、日本三大車窓にも数えられていたり、足を延ばして訪れてみたい駅全国第二位も獲得していたりと、日本屈指の名駅としても名高い。
 長野駅から篠ノ井線松本方面へおよそ二十五分。前駅の稲荷山を出たところで列車は山の急勾配を懸命に登っていく。やがて例の絶景が車窓から見える。スイッチバック方式で停まった列車からホームに降り立つと、目に入るのは善光寺平の大パノラマだけになる。思わず息を飲み、しばらく眺めているがまったく飽きない。ふと視線を手前にもっていくと、駅を少し下りたところに、有名な棚田があるのが分かった。
 姨捨駅もそうだが、姨捨の棚田を見物するのが私の大きな目的の一つであった。そもそも姨捨の名月は「田毎の月」と呼ばれ、千枚田あるいは四十八枚田ともいわれる棚田に映る月のことを指している(私は午前に訪れたので月は見れなかったが)。駅を出てすぐの踏切を渡ると、棚田や長楽寺まで続く小道に至る。この辺り一帯の集落は急勾配につくられているので、自然と道も角度が急になる。斜面を斜めに登り下りするように道は作られているがそれでも急である。このとき私はエンジニアブーツという、山の登り下りに最も向かないであろう履物をしていたので、何かと気をつかって大層歩きづらい。靴ずれもできてきた。変な歩き方をしてしまったためか、翌日は両足首がぎしぎしと痛んだ。ひとりで歩きながら、どうしてこんな山間部に集落ができたのかが不思議になった。たしかに人が暮らしている痕跡はあるが、他の人の姿はおろか気配すら感じない。気味が悪かった。
 道を下ってほどなくすると長楽寺に着く。長楽寺は信濃三十三観音霊場の第十四番札所で、見た感じ割と新しめの寺だったが、やはり人の気配はない。境内に多くの句碑や歌碑がある光景も、ある意味では不気味に思えた。また姨石という巨大な岩石があり、そこに登って見下ろす景色はまた爽快だった。いわゆる姨捨山とは冠着山を正式名称とする山、という話があったが、一方昔話でおなじみの姨捨伝説によると姨捨山は長楽寺の姨石であったとも言われるらしい。結局何がなんだかよく分からないが、自分が登った姨石が伝説の姨捨山だったほうが嬉しい。
 ついに棚田地域へ入る(長楽寺にいる時点ですでに棚田地域に入っている気もするが)。山間の舗装されていない農道もブーツ履きには酷であった。えいこらえいこらと歩いていけば、周り一面に棚田が続く不思議な光景に出合える。まだシーズンではないのか、田んぼは田起こしもされていなかった。もう少し後の水入れの時期だと、棚田の水面が鏡になって空を映し、さぞ美しい景色になるだろう。上も下も、右も左も、ずっと棚田が続く。その中にひとりで立っていると、その奇妙な景色も相まって、どこか奇妙な気分になる。思わず「なんだコレ。」と呟いてしまう。姨捨の棚田を称して「日本の原風景」と言う人がいるが、こんな奇妙な光景を「日本の原風景」と言うのは少し違うような気がした。どうして人々はこんな過酷な自然の中に暮らすようになったのか、考えれば考えるほど奇妙だった。私の中で姨捨は、“ミステリアスな日本”を感じさせる場所として記憶されることになった。

CIMG3125.jpg

CIMG3116.jpg


CIMG3138.jpg

CIMG3146.jpg

CIMG3144.jpg

CIMG3185.jpg

CIMG3157.jpg

CIMG3191.jpg










にほんブログ村 大学生日記ブログ 医大生へ






この部屋からトータルへ 私たちとつながってください

  1. 2014/04/08(火) 19:31:56|
  2. 旅行記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<「遠くとも一度は詣れ」 | ホーム | 300番目のレポート―嗚呼、恥ずかしい>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://shibakeneet.blog.fc2.com/tb.php/330-d623759d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

筆者結語

日常系赤面ブログ「野良犬の生活」を応援していただきありがとうございました

「野良犬の生活」の物語

 はじめましての皆さんへ

長い間ありがとうございました

レポート検索

最新レポート一覧

アーカイブ

2016 04 【1】
2016 03 【4】
2016 02 【4】
2016 01 【5】
2015 12 【12】
2015 11 【10】
2015 10 【14】
2015 09 【8】
2015 08 【15】
2015 07 【14】
2015 06 【11】
2015 05 【17】
2015 04 【12】
2015 03 【12】
2015 02 【9】
2015 01 【9】
2014 12 【8】
2014 11 【13】
2014 10 【22】
2014 09 【18】
2014 08 【2】
2014 07 【14】
2014 06 【13】
2014 05 【13】
2014 04 【22】
2014 03 【17】
2014 02 【28】
2014 01 【29】
2013 12 【28】
2013 11 【28】
2013 10 【29】
2013 09 【22】
2013 08 【20】
2013 07 【30】
2013 06 【18】
2013 05 【15】
2013 04 【19】
2013 03 【3】
2013 02 【6】

カテゴリ

コメント

トラックバック

メッセージ

質問・要望どんとこいです!

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。