野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

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谷川俊太郎に会いに行く

 詩という文学を日常的に嗜まない人でも、谷川俊太郎という詩人の名前は知っていることだろう。その豊かな感性は詩のみならず、絵本、童話、エッセイ、作詞、翻訳(ピーナッツやイギリスの童謡マザーグースの翻訳でよく知られる)など様々な創作に表れ、海外での評価も高い・・・、なんてことは今さら私がいうまでもない。実は私は詩には一切親しまない人種なのだが、谷川先生のエッセイが好きで、「ひとり暮らし」といういかにも私向きのタイトルのエッセイ集を枕元に置いて折にふれては読み慕っているのだ。そんな先生が新潟で催されるイベントにお出でになるということを耳にした私は、友人を誘って出かけることにした。先生の作品を溺愛しているわけではないのだが、先生は私の「賢者」のイメージに近い人物であり、実際にお会いして、何かこれから生きていくうえのヒントになる言葉を見つけられたらと思ったのだ。
 新潟市新津美術館で開かれている、川島小鳥写真展「未来ちゃん」のイベントの一つとして、川島小鳥さんと谷川俊太郎先生のトークショー&サイン会が開催された。このイベントへの参加希望者は事前に美術館に申し込む必要があり、私もそれに従った。美術館側の話によると、百人という当初の定員の何倍もの応募があり、急遽会場を変更して定員数を増やしても十分ではなかったために抽選を行ったのだそうだ。その結果、私と友人は幸運にもイベントへの参加を引き当てた。ちなみに私は、写真家の川島小鳥さんおよび当展のテーマ作品「未来ちゃん」については全くの不勉強であったが、事前に調べてみると、川島さんは私の好きなバンド銀杏BOYZのCDジャケット写真を撮影していることを知り、一気に親近感が湧いた。
 美術館ではトークショーに先立ち、急遽、谷川俊太郎先生による詩の朗読会が開かれた。開演を今か今かと待ちながらふと周囲を見回してみたら、谷川先生がその辺を普通に歩いていたので、私は出鼻をくじかれた気分になった。文庫本の筆者紹介欄で見た顔を実際に目にする。先生は想像上の人物でも、本の中だけに住む人物でもなく、この世界に実際に生きていたのだった。時間の都合上、朗読会は数十分で終わったが、当初一篇の予定だったところを、六篇もの詩を読んでくれた。先生自ら朗読する、デビュー作「二十億光年の孤独」は嬉しかった。
 その後のトークショーは、谷川俊太郎先生も川島小鳥さんもどちらかというと無口な方ということで、時おり不思議な間が現れる、ふわふわした会話に終始した。特に川島さん(オーバーオールを着こんで今すぐにでも教育テレビに出てきそう)は思った以上に口ベタで、谷川先生を相手にして緊張していることもあるだろうが、地に足付かない、ぽわわんとしたトークをするのが面白かった。トークは、普段は無口だがこういう場に出てきたらがんばって喋るという先生が要所要所でいなしながら今回もがんばって喋り、川島さんがぽわわんと質問を続ける場面がほとんどだった。内容は思ったよりも雑談が多かったが、先生の“宇宙的な個人と社会的な個人”の話は、思わずなるほどと唸ってしまった。“宇宙的な個人”が強い人は詩人になるだろうし、“社会的な個人”が強い人は政治家になったりお金持ちを目指したりするのだそうだ。私が将来就く職業は果たして宇宙的だろうか、社会的だろうか。会の最後には質問コーナーが設けられたが、こういうときに限って聞きたいことが浮かんでこない。そして、質問が締め切られる段になって初めて「あ!」となるのである。本でも映画でも音楽でもなんでもいいが、お二人の創作に影響を与えるものについて聞きたかったのだ。
 トークショー終了後にはお二人のサイン会が開かれた。谷川俊太郎先生はご高齢(というわりには元気そうだったけど)ということで、先着百名のみということだったが、私たちはその整理券(事前に配布された)をもらっているので、運よく先生からサインをいただけることになった。まずは川島さんにサインを書いてもらいに。口ベタなのに人の目をまっすぐ見て話す人だった。
犬(私)「実は銀杏BOYZのファンでして・・・いつもCDジャケット楽しく見させてもらってます・・・(オズオズ)。」
鳥「そうですか~。嬉しいなあ。・・・アルバムはどうでした?」
犬「(『光のなかに立っていてね』のことだと考え)もう・・・泣いちゃいました(実話。『新訳 銀河鉄道の夜』で目からシベリア鉄道)。なんかノイズがよく入るんですけど、それも峯田さんらしいかなーって。カードの女の子の写真もかわいかったです。」
鳥「わあ~ありがとうございます~。・・・新潟の方ですか?」
犬「あー・・・学生で今は新潟に住んでいますが生まれは秋田です。」
鳥「え、秋田?ボク昔秋田に住んでましたよ。」
犬「え、マジすか。いつ頃ですか?」
鳥「小さい頃に。」
犬「そうなんですか。へえ~。」
次の人がいるので、会話はこれで終わった。なんかすごく話しやすい人だったぞ。
 そして谷川俊太郎先生にもサインを書いてもらいに行った。巨匠の域に達しているに違いないが、いい意味で威厳のようなものがなく、自然体で気さくな話しやすい人。
犬「『ひとり暮らし』というエッセイ集が好きで、枕元に置いて楽しく読ませてもらってます・・・(オズオズ)。」
俊「そう(笑)。・・・え、きみもひとり暮らしなの?」
犬「はい。今、学生でひとり暮らししてます。」
俊「そうか。でも最近『孤独死』って言葉もあるからねえ~。」
犬「ええ。なんか『孤独』って言葉、嫌ですよねえ。」
俊「(笑)。そうだね。」
会話はここで終わり、私は先生と握手をしてもらって別れた。時間があったらもっといろんな話をしていろんなことを聞きたかったのだが、仕方がない。
 最初の朗読会のときからずっと感じていたのだが、 谷川俊太郎先生のように、もはや一つの概念にすらなっている人物が、自分の目の前で歩き、話し、呼吸をしているという光景が、私には不思議で不思議でしょうがなかった。好きなアーティストのライブでもよくこういう体験をするが、「この人やっぱり生きてたんだな」という当りまえの事実が、時おりどうしようもなく不思議になる。そんな私の思いはさておき、やはり谷川先生もこの世界に生きていたのだった。今、目の前にいる谷川俊太郎は、幻影でもニセモノでも3Dホログラムでもなく、本当に、ここに生きているのだった。だって私の手を握り返してくれた先生の手は、とてもあったかかったんだ。

CIMG3647.jpg
↑写真家・川島小鳥さん(左)と詩人・谷川俊太郎先生(右)。二人のトークからふわふわと不思議な空気が漂う。










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  1. 2014/05/06(火) 20:29:43|
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筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

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