野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

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金沢鈍行旅日記・一日目(一)

 夏休みも終盤の日々。重要な用事も入っていないし、青春18きっぷもちょうど二日分余っていたので、新潟無機終焉都市から石川の小京都・金沢まで、鈍行を使った一泊二日旅行に出かけた。無機終焉都市を生活の拠点にして以来、何かと金沢は話題に上り、昨年に仕事で訪れていた父親の話も聞いていたりして、かねてから金沢には特別な興味があった。実を言うと、私は一度金沢に行ったことはあるのだが、それは我が黒歴史たる大学の部活動(私は大学一年生の時だけ部活動をやっていた)の行事の一環によるものであって、その際、観光の類は一切することができなかったし、ひとりで街を歩くなんてことも当然できなかった(その頃の私はまだひとり旅の魅力は知らなかったのだけれど)。それから四年の間温め続けていた計画が、ここにきてすんなりと形になったのは、少しあっけなく思った。
 新潟駅から金沢駅までは、信越本線、北陸本線と乗り継いでいく。思えば、故郷の秋田県発の旅は何度かしているが、ここ無機終焉都市から鈍行旅行に出かけるのは、案外これが初めてかもしれなかった。新潟駅から鈍行で秋田に帰省することは何回かあったが、純粋な旅行としてはおそらく初。となると、この旅行では生まれて初めて見る線路の上をひたすら走ることになるのだが、これほどワクワクすることはない。
 金沢にお昼頃に着きたいので、朝六時台に新潟駅発の列車に乗らなきゃいけない。早起きは得意だが、これは流石に早い。出発時はまだ空も薄暗いままだが、線路を走るうちにやがて日が昇り、だんだんと一日が始まっていく様子を眺めていることができる。旅の始まりにふさわしい体験だ。見事な車窓景も好きだが、私は何の変哲もないその地域の住民の暮らしを、電車から眺めているのが割と好きな人種で、家の隣の小さな畑や洗濯物が干されているのをいいなと思う。犬と散歩をしている人を見ると切なく思ってしまうのだが、どういうわけかみんな柴犬を連れている。どういうわけか。
 長岡、柏崎と、何気に初めての駅を巡っていくが、柏崎から直江津の区間、特に鯨波から柿崎のあたりまでは日本海に近接して走っているので、その間の車窓の風景が楽しみだった。その期待どおり、外から電車を写真で抑えたらなんとも絵になるようなところを往く。青海川駅は「日本で一番海に近い駅」として有名で、降りはしなかったが、ホームから眼下に望む日本海に、列車の中からでもうわぁと感動してしまった。いつか実際に降りてみたく思う。また直江津―糸魚川間にある筒石駅は、ホームがトンネル内にある“トンネル駅”であり、ここも降りはしなかったが、有名な駅をちらりとでも見られてよかった。難所・親不知を過ぎ、やがてはるかに能登半島を認めるうちに、富山駅に着いた。乗り換えまでいくらか時間があるし、ここももちろん初めての地なので、少し散策をしていくことに。
 来年の北陸新幹線開業に向けてか、富山駅では大規模な工事が行われており、ホームから改札までの距離が長くなっていて疲れる。富山市といえば、路面電車が走っているが、富山駅から路面の駅まで微妙に距離があり、外は日差しが強く暑かったので、見に行くのは諦めることにした。乗車記念スタンプを押し、昼食にW7系弁当を買ったら、あとはホームに戻って、初めて見る特急サンダーバードなどを撮影していたが、この時ふと思いついたのが、「ひょっとしてこの旅の間にトワイライトエクスプレス見れるんじゃね?」というアイデア。トワイライトエクスプレスは大阪と札幌を結ぶ豪華寝台列車で、金沢や富山、そして私が先ほど通ってきたような日本海沿いの線路を走るのだ。来年春に廃線することが決まっている。ホームにある時刻表を見てみると、どうやら富山駅での対面は叶わないようだったが、しかし、時間の融通の利く金沢ではどうか。これはこれは、旅中に思わぬ楽しみが増えたものだ。
 富山から石動(なんて読むか分かる?)を抜け、倶利伽羅峠を越えて、ついに旅の目的地・金沢に到着した。新潟―金沢の鈍行旅は、夏の日本海の爽快な景色を堪能できるParadise Lineだった。旅行地までの移動の様子を綴るだけでこれほどの文章量を割くのも分かるだろぅ?ホントはもっと色々書きたかったが書けばいいというものではない。
 金沢駅に降りる。今まで新幹線が走っていなかったのが不思議なほどに大きく、モダンで洗練されていて、かつ清潔な駅である。東口を出ると、そこの広場はもてなしドームと言われガラスとアルミ合金で覆われていて、開放的になっている。また、そこには金沢のシンボルとなりつつある驚きのオブジェ・鼓門がそびえる。“小京都”などと呼ばれているが、駅前の景色は伝統のエッセンスを織りまぜながら、どこまでもモダンでどこか近未来的でもある。広場のベンチに座り、鼓門を見ながら例のW7系弁当を食べたが、そこでふと自分の現住所でいちばん大きい駅を思い出してしまう。新幹線が通っているのに、連絡が分かりづらく、駅前にはくつろげる広場もなく、トイレも不潔で使う気になれない。一応こちらの方が政令指定都市なのだが、このセンスの差は一体何なのだろう。何かにつけて比べるのはナンセンスであるが、流石にこの差については嘆かずにはいられない。
 実は金沢において、とある場所に予約の予定を入れていて、その時間的にすぐにそこへ向かった方がよさそうだったので、昼食を食べて休憩もほどほどに、目的地へ歩き始めた。私のひとり旅といったらレンタサイクルだが、金沢が提供しているサービスは、その仕組みがよく分からなかったので、今回は利用しないことにしていた。市の中心部は観光に便利なバスも走っているが、歩いた方が街の様子や地理関係がよく見えてくるので、まずは歩行に努めるのだ。
 駅前の大通りを行き、近江町市場にぶつかるところで右へ。百万石通りを香林坊方向に歩いていくのだが、その途中に尾山神社がある。これは本来の目的地ではなかったが、予定の時刻まで余裕が出てきたので、今のうちに立ち寄ってみることにした。金沢には様々な名所が揃っているが、この尾山神社はなんとも微妙な位置にいる。加賀藩祖・前田利家公と正室・お松の方(「利家とまつ」である)を祀っている神社なのだが、ここで注目すべきは神門である。厳かな社殿に不釣り合いな和洋折衷の楼門であり、三層アーチはレンガが積まれ、上層部は色鮮やかなステンドグラスで飾られ、異国情緒を漂わせつつ、どこか薄気味悪い建造物に仕上がっている。前田家といえば、東京の旧前田侯爵邸や鎌倉の鎌倉文学館(旧前田利為鎌倉別邸)を思い出してしまうが、やはりこの一族は洋風趣味なところがあったのだろうか。境内には利家公の銅像とお松の方の石碑もあり、私が歴史好きであれば加賀百万石の栄華に思いを馳せただろうが、生憎その方面への理解はなく、単純に旅の無事をお願いした。
 金沢最大の繁華街・香林坊(ここのショッピングビルも垢抜けている)を通り過ぎ、そのまま犀川にかかる犀川大橋を渡った。ここで明かしてしまうが、私が予約していた場所というのは、寺町寺院群の一つで通称“忍者寺”と呼ばれる妙立寺である。私が金沢旅行でいちばん楽しみにしていたのは、兼六園でも武家屋敷通りでもなく、この“忍者寺”だった。旅行案内書には「要予約」と書いていて、私もそれに倣って電話にて予約をしていたのだが、実際には当日申し込みもできるみたいだった。しかしそうなると、自分の都合のいい時間に見学することができなくなるので、予め寺に電話をしておくのがいいと思う。
 さて、そして私は第一に忍者寺に歩みを進めていたのだが、ここにきてもまだ約束の時刻までゆとりがあるので、寺町近くにある、“金沢三茶屋街”に数えられる、にし茶屋街を見物してみることに。金沢で茶屋街ときたら、ひがしの方が有名であるが、実はにしにも残っているのだ。現在も数多くの料亭が軒を並べており、なんとも風情のある街並みになっている。気温も高かったので、少しお茶していきたかったが、そこまでの時間は残されていなかった。なんとなく残念なのは、茶屋街は普通に車が走るということだ。茶屋街には今も営業しているお店があるのだから仕方のないことだが、街並みを見ながら歩いていると結構危ない。また、茶屋街の端のところにいい感じに時代モノの建物があったが、案内にも記載されておらず、結局あれは何だったのか分からず今でも気になっている。
 金沢を走る二つの川のうち、犀川は比較的流れが速く“男川”などと呼ばれている。その犀川に平行している寺町通りには、その名の通り現在も個性豊か寺院群が残っている。その中でも特に有名なのは、“忍者寺”こと妙立寺である。ぱっと見、何も変哲のない寺―これは少し嘘で裏口のところはひっそりとしていて緊張感がある―だが、実はここは加賀藩の武士が居起する寺町の中で、監視所の役割を持っていた場所なのである。どうしてこのようなものが作られたのか、その歴史的経緯は省くが、簡単に説明をすると、この時徳川幕府は完全の全国統一を果たすために、ささいな理由で多くの大名(おそらく外様だろう)を取り潰していたらしく、外様であった加賀藩の三代藩主・前田利常公が、幕府の取り潰しに防ぐために建立をしたのだという。
 私は正面ではなく裏口から入ったが、意外にも本堂前には多くの観光客が集まっており、休憩所なんかもある。てっきりもっとひっそりとした、知る人ぞ知る的なところかと思っていたが、しっかりと観光地化されていて少し萎えるような心持ちであった。しかし、騒がしい人は“あまり”いなく、全体的にひっそりとしていて、どこかお化け屋敷に入る前のような雰囲気である。実際、入る前は結構ドキドキします。案内のされ方はかなりシステミックで、「○○時に予約した人」として呼び込み拝観料を集め、一度本堂で見物者全員にテープによる説明を聞かせ、今度は三つほどのグループに分けて(この時、名前を呼ばれる)、グループ別で順番にガイドさんと一緒に寺内を巡るというものになっていて、もう一度言うがかなりシステミックになっている。
 ここが“忍者寺”と呼ばれる所以だが、幕府の攻撃を防ぐ、あるいは幕府の目を欺く目的で、かつここは加賀藩の祈願所であり藩主もよくお参りに出向くことから、お殿様を守るあるいは逃げさせる目的で、内部には数々の複雑な仕掛けやからくりが仕掛けられており、忍者屋敷のようであることから、そのように称されるようになったのだ。当時幕府により三階建て以上の建築は禁止されていたが、この妙立寺は外見は二階建てで、実際は内部は四階建てで七層。この時点でかなりえげつないトラップが仕掛けられている予感がするだろう。中二階、さらに中々二階などの複雑な構造に、二十三の部屋、二十九の階段があり、堂内は迷路のようになっている。本堂正面入り口に賽銭箱が埋め込まれているが、これは箱を取り除くことで、落とし穴になり、攻め込んできた敵がいきなり落っこちるようになっているのである。えげつない。寺には他にも落とし穴があり、その下で待ち受けて敵が落ちてきたらすかさず攻撃ができるようになっているのである。えげつない。他にも明かり取り階段(敵の足の影を見て攻撃できる)や隠し階段、街を一望できる物見台なんかも備わり、複雑な構造でいて建物自体も屈強に造られており、台風や雪圧にも耐えうるほど防御力も高いという。えげつない。しかし、流石は加賀百万石の文化というか、上層部には藩主の部屋があり、そこでお茶なども楽しめるようになっている。ちなみに、お茶用の水を汲み上げる井戸は水面上に横穴があり、金沢城にまで続いており、非常時にはそこから逃げることもできたという。えげつない。
 そんな複雑な寺内は、少人数のグループで案内されるため無理や窮屈さがなく、ガイドさんの説明も分かりやすくて、この“忍者寺”を十分に楽しめることができた。えげつない仕掛けの数々に何度戦慄したことか。すっかり観光地化されていたので、信仰は死んでいないのかガイドさんに尋ねてみると、ここでは今でも仏事が行われており、寺本来の働きも持っているのだという。寺や仏教の神秘性と、武家、武士の屈強さ、そして加賀文化の風流さ。それらが絶妙な均衡を保っていながら建っている“忍者寺”妙立寺は、全国にも類を見ない唯一の建築であった。


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  1. 2014/09/30(火) 20:25:01|
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筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

筆者結語

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