野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

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金沢鈍行旅日記・一日目(二)

 “忍者寺”のえげつない仕掛けの数々に驚き戦慄し、興奮醒めやらない私は、それでも次なる歩を進めた。再び犀川大橋を渡って、片町、香林坊へ。金沢が誇る繁華街を行く私の目的は、いまや当地を代表する光景になった観のある、長町の武家屋敷通りであった。昨年、金沢の旅の思い出を語る父親が絶賛していた場所である。長町は百万石通りから少し横道に入る必要がある。どこから入ればいいのか分かりづらいが、旅行書に書いてあったように、大きなホテルの横から入って歩いていると、無事にそれらしき通りに至ることができた。金沢は各名所までの道のりが分かりづらくなっている(案内看板はあったが、だいぶ控えめ)が、デカデカとした宣伝を設置するよりはだいぶ爽やかで、きれいな街並みの風情が残されているのがいい。
 長町は加賀藩の中級武士たちが住居を構えていた地区である。ここ一帯には現在でもクリイム色の土塀に囲まれた武家屋敷とそれらを結ぶ石畳の小道が、当時の面影を色濃く示してくれる。幸い他の観光客が多くいないのが私にとっては好都合であった。屋敷が並ぶ、迷路のように入り組んだ通りを、ひとり静かに歩けば、思わず時代錯誤の感も兆してくる。これらの屋敷のほとんどが今も住居として機能しているということに驚いた。“忍者寺”の時から歩きっぱなしで少し疲れたので、その辺りの「喫茶」の文字を掲げた店に寄る。九谷焼の販売店の片隅に喫茶スペースがあるという感じ。なんだか落ち着かず、多少ドギマギしながら案内を受ける。それでも、当時から保存されているという庭に面した喫茶スペースに腰を落ち着けると、次第に人心も復帰してきた。アイスクリームを食べながら、愛しのことりっぷを開く。時刻はまだまだおやつ時といったところだったが、いろいろの目星の場所や、明日の計画も考えて、今後の予定を立てていく。しばらくじっくりと考えていたが、結局予定は立たなかった。今回の旅は本当に時間の制約というものがなかったから、逆に計画が立てづらい。私にしては珍しく、出たとこ勝負の旅になりつつあった。
 とりあえず小道を奥へと進み、金沢最古の用水である大野庄用水沿いの長町のメインストリートに出ることにした。メインストリートは観光バスも走るし、それ以外の乗用車もよく通るが、道幅が狭くて、危ない。この通りに目当てのスポットは特になかったが、歩いてみて少しでも興味のあるものがあったら寄り道してみよう位の呑気な気持ちでいた。用水にかかる橋で突っ立っていたら、近くにいた外国人旅行者カポーに“Excuse me.”と話しかけられ、写真を撮ってと頼まれてしまった。旅先で他の観光客に撮影を依頼されることは度々あったが、まさか外国人に頼まれるなんて。まあ、やり取りとしては『いいですよ。』と『はい、チーズ!』と『写真見てみて。』くらい話せばよかったので、英語にアヤしい私でもなんとかこの窮地を凌ぐことができた。さて、通りを歩くと程なくして長町武家屋敷休憩館なる施設を見つけ、さっき喫茶でほっこりしたばかりであったが、どうやらガイドが常駐してるらしいことから、観光に有用な話が聞けるかもしれないと思い、少し立ち寄ってみた。
 休憩館の中は、観光に役立ちそうなチラシがたくさん置かれ、イベント情報や観光ポスターも何枚か張られている。最近ハマっている観光スタンプを手帖に押していたら、常駐している観光ガイドのお母さん(ガイドは他に二人。英語を話せる人もいて驚いた)が私にいろいろと話しかけてきて、私が聞かないこと尋ねないこともあれこれ説明し始める。私は適当に相槌を打ちながら聞いていたが、段々と面白くなり、バスの時間など、正直どうでもいいと思っていたことをあれやこれや質問してみると、お母さんは流石に観光ガイドということか、一々答えてくれるが、後で公式の案内で確認してみると、お母さんの回答は全くの見当外れであることが分かった。お母さんェ・・・・。
 とはいえ、少しでも楽しいひとときを提供してくれたほんのお礼代わりに、観光ガイドのお母さんが、面白いと教えてくれた長町の施設を回ってみることにした。話を聞いていとばん興味を惹かれた武家屋敷跡野村家を訪ねる。野村家は加賀藩に直臣として従い、家督は十一代にわたる由緒深い家柄であるという。広大な屋敷もそうだが、庭園が見事であるそうで、ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで(たしか)二つ星を獲得している。襖絵や総檜造りなど、屋敷は豪勢な様子。評判の庭園は小規模でありながらも、池を囲んで多層的になっていて見ていると安らぐ。屋敷の奥には庭の見える茶室もあるが、女性がひとり先に入ってしみじみと庭を眺めていたので、どうも入りづらく、結果そのまま入らずじまいに終わった。縁側に座ってしばらく庭を見ていると、見物者だと思うが、上坂すみれ似の和風美人が着物を着て屋敷を歩いていたので、その美しさに思わずギョっとしてしまった。本当に美しいものを見ると、人はギョっとするものだ。しかし、彼女が連れている男はどう見ても、無個性で冴えないモブキャラといった風采で、それを見た私はこの世の不条理を呪った。
 長町でも中央通りに近い、金沢市老舗記念館なる施設にも足を運んでみた。はっきり言ってノーマークのスポットだったが、お母さんが面白いと言っており、建物が老舗の薬局を利用したものと教わったため、一応堕医学生の端くれである私に、多少の興味を起こさせたのだ。私の好奇心はほんの些細なことで張り切りだす。人気の観光地である金沢に置いて、この老舗記念館は微妙な位置にいるのだろう、館内には私以外の旅行者はいなかったし、ローカル番組でいっこく堂が訪れたと知らせるビデオが流されているのは、少し悲しく、かつ愛おしく思えた。まず通される「みせの間」がいわゆる薬屋としての窓口になっていたところに見える。太宰治の「津軽」に出てくる“コミセ”とはこういう形式のことを言っていたのだろう。この時、時代モノの薬のパッケージ(そういうものを集めているマニアがいるらしい)が展示されていて、レトロな雰囲気が醸し出されていて、感じが好い。奥の部屋でも、鞠や花嫁のれんなどの、加賀の伝統工芸品や、市内の歴史ある老舗のゆかりの品が展示されている。お菓子で作られたお神輿が飾られてあり、度肝を抜かれた。
 最後に訪問してみたのは、足軽資料館なる、誰得な施設だ。これもお母さんの差し金である。軒を連ねる武家屋敷や、野村家のような豪邸ではなく、足軽の地位を示すかのように、簡素で質素な造りになっている。とはいえ、貧乏そうでは決してなく、確かに庭を眺めたりお茶を嗜む贅沢はできそうになかったが、機能的で案外こちらの方がちょうどよく、住みやすくなっているのかもしれなかった。
 長町を十分に満喫できた感覚を持てたので、そろそろここを離れて循環バスに乗って移動をすることにした。バス停がとある売店の前にあり、ベンチもあって休憩しながらバスを待つことができそうだったが、タクシーの運転手らしき人間が平気な顔をしてタバコを吹かしていたので、思わず閉口。私は嫌煙家であるが、それは単に不快な思いをするからではなく、タバコの煙ですぐに咳込んだり頭が痛くなったりするので、健康上の理由で嫌っているのだ。私はどんなものよりも自身の健康を大切に思っている。目の前でタバコを吸われるというのは、私にとっては、ナイフやピストルを突き付けられているに等しい。小さなバスはなんと運賃百円で乗れる。観光客よりは住民が利用するようなバスなのが無性に嬉しい。髪型をお団子にした小学生くらいの女子が、珍しい白タイツを履いて乗っている。不思議に思いながら、車窓を眺めていると、同じくお団子ヘアーで白タイツの少女たちが数人外を歩いていた。服装などを見て考えてみるに、彼女らは小さなバレリーナであるらしかった。日本屈指の観光地の中にある、子供たちのいつもの暮らしに、軽やかな感情を覚えた。


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  1. 2014/10/01(水) 20:52:48|
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筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

筆者結語

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