野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

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金沢鈍行旅日記・二日目(二)

 兼六園を真弓坂口から出るとすぐに目に入る、芝生の広場と屋外のオブジェに囲まれた円形の奇妙な建物が、金沢21世紀美術館である。金沢21世紀美術館は見るだけでなく、実際に入ってみたりして体験することのできる、新しいタイプの感覚的美術館である。金沢でも人気の高いスポットだ。《雲を測る男》や《緑の橋》など、建物と一体化した作品も多く、空間全体でアートを楽しめるようなつくりになっている。とりわけ来館者の人気を集めている作品が、“レアンドロのプール”こと、《スイミング・プール》である。上から見るとただのプールだが、実は下の部分は空洞になっていてそこに入ることができる。下から見上げると、プールの底にいるような感覚が味わえるし、プールの上下の観客同士で交流することができる、不思議で幻想的な作品である。おそらくガラスを二枚重ねて、その間に水を流しているのだろう。水槽に佇み、水面越しに空を眺めると、本当に非日常的な体験になる。私が訪れた時、偶然に《スイミング・プール》を創り出したアルゼンチンのアーティスト、レアンドロ・エルリッヒの企画展が行われていた。展示品というか、展示室自体が一つの作品となっていて、プールと同様に、その中に入っていろいろなことを感じられるという、この美術館にふさわしい個展のように思われた。真っ先に入る《見えない庭》は鏡を使っているのは分かったが、しばらく観察してもどのような仕組みになっているのか理解できず、最後まで不思議な気持ちのままでいた。また、《リハーサル》では、東京ディズニーランドの「ホーンテッド・マンション」のように、自分が半透明になって楽器を演奏できるという、幻想の世界にしばらく浸っていることができる。不思議で楽しい展覧会であった。
 美術館内の売店には、金沢21世紀美術館オリジナルグッズや、草間彌生、奈良美智などの人気アーティストのグッズ、お洒落な雑貨などが販売されていて、楽しい。他にも芸術関連に限らず、様々なジャンルの本も販売していて何冊か手にとってみたが、ある文庫の著者の名前を見た時、少しハッとした。鈴木大拙。金沢が生んだ仏教哲学者の大家だが、なぜ私がこの名前を見てハッとしたかというと、昨日に長町武家屋敷の休憩館で出会った観光ガイドのお母さんが、先生を記念する施設・鈴木大拙館を私に強くオススメしてきたからだ。そして美術館でなんとなく手に取った本に先生の名前がある。偶然にしてはあまりにタイミングがよすぎる。長町のお母さんの話はあまり真に受けてはいなかったが、こういうことがあると、否応なしに興味が湧いてくる。
 しかし、私は鈴木大拙先生については全くの不勉強。著作など一つも読んでいないのだ。こんな有様で記念館にいって楽しめるのだろうか。基本的に記念館というのは、それについて勉強をしている人だけが楽しめる施設だ。ここにきて私は優柔不断に陥り、行くべきかどうか、美術館から記念館までの道を何度か行ったり来たりしていた。だが往復している内に、今日が“きっかけ”になるのではないか、と思い始めた。今まで何も知らずにいたが、今日のこの時を契機として、また新しい考え方を得ることができるかもしれない、と。どんな専門家も必ず最初のうちは素人だった。まず始まらないことには、自身の引き出しを増やすことはできない。迷った時には、たいていこういうことを念じれば進路が決まる。
 兼六園や金沢21世紀美術館などの人気観光地が集まる広坂から歩いて、その喧騒が聞こえなくなる頃、ある脇道に入ったところに、鈴木大拙館は静かにひっそりと佇んでいる。よくある記念館のように、ただ展示品を飾ってあるのではなく、展示空間で「知る」、学習空間で「学ぶ」、思索空間で「考える」ことができ、来訪者が自由な意思、自然な心で大拙先生と出会えるような場を理想としている。展示品はそれほど多くないことから、どちらかというと私たちが「考える」ことに十分な時間を割けるようになっているのかもしれない。思索空間は“水鏡の庭”に浮かんでおり、座って池を眺めなることができるため、自然とその場に長居してしまうが、人を「考える」空間に留める設計になっているのは、施設が「考える」ことにとりわけ重きを置いているからであろう。またこの施設は珍しく、資料を挟めるファイルを来館者に手渡す。これは単に便利であるし、館内を回って先生の言葉を一つ一つ集めていくような感じで、見た目に何かを学び取った観が兆す。館では、大拙先生と、金沢の第四高等中学の同級生で日本で初めての哲学者と言われる西田幾多郎先生にまつわる展示があった。思想界で大きなアイコンとなっている両先生であるが、その二人が学生の頃から親交を深め、最後まで尊敬しあったり励ましあったりした、というのは爽やかで羨ましく思う。私は大拙先生の本は少しも読んでいないから、こういう展示を見てなるほどと腑に落ちることはないのだが、こうして出会った人が仏教哲学の権威というのは不思議な気持ちがする。私は宗教人ではないが、田舎の妙好人に囲まれて育てられた人間である。仏教は私が生きる上で鍵となりそうなものである予感が、最近している。現時点のみでなく、もっと長いライフスパンで勉強してみたいと考えているが、この訪問はきっかけというか、一つの後押しになってくれそうである。
 腹が減った。昼ご飯を食べずにここまできてしまったが、気がつけば、正午はとっくに回っている。大体見て回りたいところは訪ねることができたし、ランチを摂ったら、あとは駅のあたりでのんびりとすることにしよう。昼食は近江町市場で食べようかなと思っていた。ここには飲食店がたくさんある。昨夜行った食堂にまた食べるのもアリだったが、いろいろ探して考えている最中で、パッと目に付いたお店に行くこととした。ご存知、カレーのチャンピオンである。金沢カレーの代表的なお店だが、それが市場の地下にある。もちろん初めて食べるが、気軽な食券制で、ちょっと牛丼屋みたいだね。お腹が空いていたし、金沢での最後の食事になるから、少し奮発してカツカレーを食べる。普通にカツカレーは大好物でもあるし。このお店の特徴としては、カレーを先割れスプーンかフォークで食べることであろう。テーブルにカツカレーが置かれ、続けざまにフォークを渡されると、一瞬「?」と戸惑う。なんかのイジメだろうか・・・・?それとも店員さんはボケているのか・・・・?と変に勘ぐってしまうが、何のことはない。これがこのお店のスタイルだったのだ。たしかにカツとかキャベツを食べる時はいいだろうけど、カレーをフォークで食べるのってどうなのよ、と最初は思うが、チャンピオンのカレーはドロドロと濃く、ご飯にしっかりと絡みつくから、意外とフォークでも食べれる。おいしい。基本的に食べることは好きだが、旅先だとその満足度は倍増する。
 旅の始まりの場所、金沢駅に再び戻ってきた。時間的に午後三時三十七分着のトワイライトエクスプレス下り列車が入ってくるので、出迎えにホームに向かう。風格のある深緑の電車。絶対に乗ってみせる。札幌に向かう列車を見送ったあとは、駅構内の金沢百番街で土産屋の見物と、夕食用の弁当を求める。お土産としては、来年春開業予定の北陸新幹線のW7系ボールペンを買った。弁当は、名店のものはどうもしっくりこなかったので、結局ニューデイズでおにぎりを数個買った。おにぎりと言っても、コンビニで売っているようなものでなく、店内のおにぎり屋で握っている本格的なものだ。
 これはあくまでも鈍行旅行であるから、往きと同様、復りももちろんひたすら鈍行の乗り継ぎである。ルートとしては往路を逆行するだけである。倶利伽羅峠を越え、石動(なんて読むか分かる?)を過ぎて富山駅に着く。乗り継ぎまで時間があったので、今日こそは路面電車を見てみようと、駅の外に出た。富山の農協だろうか、駅を歩く人に地域の野菜や果物を手渡すキャンペーンをしていたが、私が何度も辺りを往復しているのに、誰も私には目もくれない(決して忙しそうにしているわけではない)で、完全に無視を決め込んでいた。これから絶対富山県には金は落としてやらないと心に決めた。富山駅の周辺は、私が思っていたよりも発展している。いや、建物があるだけかもしれないけれど。富山市の路面電車は富山駅からちょっと歩いたところを走っている。すぐそばに行ったところで別に電車に乗るわけではないので、遠くからそっと眺めているだけに止めた。駅に戻ると、ワイドビューひだが停まっていた。これに乗れば飛騨高山に行ける。こういう列車があれば、高山は結構新潟から近いのかもしれないな。ホームでおにぎりを食べて、鈍行旅に復帰する。
 富山―直江津あるいは直江津―柏崎間には、日本海沿いに走る絶好のビューライン区間があるが、さすがに日が落ちてしまうと、何も見えない。青海川駅に着いた時には真っ暗であった。嗚呼、あのトワイライトエクスプレスだったらこの辺りで日本海に沈む夕日が見れるのに・・・・。往きの時と同じ様子なのは筒石駅だけで、あとはひたすら闇の中を鈍行で走る。トンネル内を走っているのと変わらない車窓に、少し頭がボーっと、違う世界に誘われるような感じであった。ブラック・ジャックの「人生という名のSL」を思い出した。午後四時頃から電車に揺られ、新潟駅に着いたのは夜の十一時近くであったが、時間帯によって電車の客層が全く違うのが面白かった。なんとなくバスには乗りたくなくて、駅から自宅まで四十分歩いたが、旅のすべての疲れがここでどっと押し寄せてきて、帰路は大層苦しく、帰宅したらすぐに眠りこけてしまった。


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筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

筆者結語

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