野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

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上高地に憧れて

 友人との二泊三日の松本旅行の最大の目的である、日本屈指の景勝地・上高地探訪は、旅程二日目に計画された。上高地といえば少し思い出すことがある。今年の夏期休暇最終日に級友たちが大勢集まる会が開かれたのだが、それに私も出席した際、自然と休暇中の過ごし方に話題が移り(もう五年も同級であるというのに、こういう余所々々しい話題でしか話せなくなる時が、未だにある)、そしてとある友人から、ガールフレンドと上高地や安曇野に旅行に行った話を聞いて、妙に腹立たしく思ったのも事実だったが、一方で、これらのまだ見ぬ土地への憧れが芽生えてもいたのである。今回、私を旅行に誘った級友もその会に居合わせていたのだが、おそらく彼も件の友人の思い出話を聞いて、それで当地探訪旅行のアイデアをひらめいたのだろう。実際、私が彼にこの話を持ちかけられたのは、会が終了して店を出た時だった。
 上高地はマイカー規制が常時行われている。そのため、私たち観光者は、近くの駐車場に車を停め、そこから出るバスに乗って上高地に行かなくてはいけない。駐車場がある場所には、沢渡と新島々の二つがあり、沢渡は松本から車で一時間、上高地までバスで三十分であるのに対し、新島々は松本からアルピコ交通の電車に乗り三十分、上高地までバスで一時間弱となっている。上高地に着くまでの時間に大差はなく、本来、どちらを選んでも不便はないので、途中で地方の電車に乗る新島々行きが個人的には嬉しかったが、車の方が安上がりで、時間のコントロールが容易ということで、探訪前夜に沢渡行きが決まってしまった。
 混雑を考え、早起きをして松本から沢渡へ、アルピコ交通上高地線に沿うた田舎道を自動車で走る。沢渡は標高が高いところにあって、まだ九月というのに、朝方だと気温は一桁なのである。この時、私はどういうわけか半ズボンを履いていたため、この時は結構寒かった。沢渡に着いたときに時刻はまだ午前の八時頃であったが、いくつかある駐車場にはすでに多くの自動車が停められ、どこも「満車」の文字を掲げている。だが、少し道を奥に進んだところのパーキングにはまだまだ空きがあり、結果、運よくバスターミナルに近いところに駐車することができた。おそらく旅行者のほとんどは沢渡入口部の駐車場に、急いで停めてしまう傾向があるみたいである。なお、私たちがターミナルからバスに乗り込む頃には、道は多くの観光客の車で混雑し、もう駐車どころではない有様だったので、本当にタイミングがよかったと、少し肝を冷やした。沢渡バスターミナルに行き、上高地へ向かうシャトルバス(有料)に乗る。他の乗客を見ると、本気で登山する装備を持つ人や、そこまではいかずともいかにもハイキングしそうな服装の人がほとんどで、半ズボンという場違いな格好の身の程知らずは私しかいないみたいで、恥ずかしく思った。
 上高地へ向かうバスの路は、どこかに探検をしに行くみたいでワクワクする。規制前の区間でも、山林を流れている小川を車窓から認めることができ、すでに水が澄みきっていることが分かる。宿が一軒しかなく慎ましい風情を醸す平湯温泉を通り過ぎて、ついにマイカーが規制されている区域に入る。入口には物々しい巨大な鉄門があり、その時は開かれていたが、観光バスや許可を得た車両以外は入れないように管理人が門の近くに常駐している様子だった。あの風光明媚な観光地からは想像もできない警備の厳重さである。しかし、この物々しい管理がされてあるおかげで、これから特別な領域に入るという実感が湧き、少し緊張感も出て、シャトルバスはどこかのテーマパークのアトラクションのようにも思える。いよいよ上高地に入るのだ。
 私たちは上高地バスターミナルの少し手前、大正池バス亭で降車した。この日に散策するルートを考えると、ここで降りるのが一筆書きができて都合がいい。バスを降りると、外の気温は沢渡よりもはるかに低く、子供たちですら長袖だというのに、半ズボンを履いている私は完全に大間抜けである。歩いていても凍えるほど寒く、できれば立ち止まりたくない感じだった。バス停から歩いてすぐの大正池は、大正四年に焼岳が噴火して一夜のうちに出現した広大な池である。今見ても十分広々としている印象だが、実はこの大正池は土砂が流れ込んで年々小さくなっているらしく、現在は噴火当時の十分の一の大きさだというから、驚くばかりだ。背後にはその焼岳がそびえている。天気がよくこの時、焼岳には雲一つかかっておらず、勇壮な姿を余すことなく眺めることができる。大正池が上高地の代表的な風景になっているのは、水面に立つ枯れ木と、エメラルドグリーンの水の幻想的なコントラストによるものだろう。周囲には多くの観光客がいて煩いが、それであるにも関わらず静寂を保つ池を眺めていると、その景色に吸い込まれるようになる。
 池をボートで遊泳している人たちの姿を見かけた。どうやら貸しボートがあるみたいである。私たちは面白がって、すぐにボートを借りることに。私も遊覧には興味があり、全面的に賛成であったが、半ズボンでこの気温の中でボートでゆったりは、色々とマズい。いよいよ凍え死んでしまうのではないか。小舟に乗り込むが、思ったよりも揺れて少し腰が引ける。まずは友人が漕ぐことに。こうやってボートに乗る機会は普段全くないが、朝の洗練な空気と青空に包まれて水面を進むのはとても気持ちがいい。自分が働かなくてもいい場合は特にそうである。しかし、程なくして漕ぎ手は私にスイッチ。座る場所を移す瞬間は、中々にスリリングだった。実を言うと、私はこの時までボートを漕ぐ経験は一度もない。うまく漕げるかどうも自信がなかった。それだのに、今度は枯れ木の立つ池の奥の方まで行ってみることになる。枯れ木やそれ以外の障害物が多く、しかもこの辺りは池の底が浅くなっていて座礁のリスクもある。それだからなおさら不安であったが、ドギマギしながら漕いでいくうちに、だいぶスムーズに操作できるようになってきた。なるほど確かに枯れ木の近くは底が浅い。座礁しないようにしたいが、ボートの進行方向は漕ぎ手の背中側。進む先がどうなっているのかが見えないため、同乗している友人たちの指示が決め手となるが、その指示がすでにマズそうな状況になってからされるために、こっちは気が気でない。結果、一度ボートを底に乗り上げてしまった。オールで底を押して脱出する。他にも倒木への衝突の危険にも見舞われたが、その都度、力技で何とか乗り切った。こういうマズそうな状況に何度も見舞われていると、自然とオール捌きに慣れてくる。ケガの功名というやつだ。おそらく、将来、女性をボートに乗せる機会があったら、私は軽やかにボートを漕いで、その洗練さていながらも頼もしい姿に、女性をときめかせることができるだろう。本当の問題はそんな機会が訪れるかどうかだ。漕ぎ手の役目をもう一人の友人に引き継ぎ、無事に(?)私の仕事は終了。あとは、優雅に大正池遊覧を堪能するだけだ。多くの旅行者で賑わう池の岸を離れ、哀愁漂う枯れ木や幻想的に透き通る水面を見る。普段の生業を忘れて、一枚の絵画の中に迷い込んだような錯覚を覚えた。
 大正池から、上高地のシンボル・河童橋方向へ、自然研究路を歩く。その道中にも上高地の自然が生んだ、素晴らしい景観が待っている。中千丈沢の押し出しとは、大雨が降る度に中丈沢の上流から土砂が流れ込んで、押し出された石屑が堆積してできた場所である。形。大きさ様々な小岩が転がっていて、なんとも荒涼としている。沢に近づいてみると、水流があまりに透明であり、少し感動してしまう。枯れ木や焼岳など、先の大正池に似た風景だが、天気や時間帯、そして水流の違いから、全く違う印象を受ける。こちらの方が少しばかり明るい。この辺りから気温が上がり始め、半ズボンがちょうどいい感じになってきてよかった。
 そこから再び歩くと、田代池という小さな池に出会う。こちらは土砂で梓川の流れがせき止められてできた池らしい。水が透き通っているため、浅い池底の赤褐色がくっきりと見える。規模は大きくないが、周りの森林的景観も相まって、ここも創作の世界が実現しているように感じた。河童橋へ、田代湿原を歩き始めるが、途中で研究路は梓川コースと林間コースに分岐する。なんともインタラクティブな自然路である。私たちはいかにも上高地らしい景色を求めて、川沿いのコースを進む。爽やかな晴天の下、焼岳を眺めながら、梓川の緩やかな流れを楽しむ。これはまさしく良質な、精神の保養となる。途中で、少し川原に降りてみる。おだやかに蛇行して走る梓川の純粋さと、周りを囲む山々の目映い緑色が美しく、これこそ上高地と言うべき絶景がそこにはある。川にちょっと手を入れてみると、とても冷たくて心地よい。川沿いの道は見晴らしがよく、木のテーブルなんかも設置されているので、こういうところでお弁当を広げたりすると、さぞ楽しいだろう。
 上高地帝国ホテルに近い田代橋も過ぎ、さてもうすぐ河童橋だぞというところだったが、先ほどから私たちは空腹を覚えていたので、一旦、上高地バスターミナルに向かう。この辺りには食堂もあるし、また売店もあるから、おにぎりや軽食を買って自然の中のテーブルで食べるのもよかっただろう。しかし、今回は観光センター二階の食堂で昼食を摂る。メンチカツも付いてくるボリューミーな山賊焼き定食を食べる。早朝から歩きっぱなしで、お腹が減っていたので、もうどのメニューもおいしくて、ペロリと平らげてしまった。やはり空腹は最高のスパイスということか。
 そして、ついに上高地のシンボルたる河童橋との対面を果たす。見晴らしがよく穂高連峰を認めることができるが、多くの観光客で混んでいて、騒々しくて落ち着かない。なぜ橋の名前が“河童”なのかは、どうやら芥川龍之介の「河童」に関係があるみたいだが、私はこの作品は未読であるので、何のことやらよく分からない。この河童橋の周辺が、上高地の中心地となっているようで、ホテルや食堂、売店、軽食など、先ほどのバスターミナルよりも賑わっている。流石にさっきランチをしたばかりだから、こういう店には用事はなかった。これから再び歩いた帰りにまた戻ってくる予定だったので、この時は寄り道をせずに橋を渡り、今度は明神橋方面へと歩みを進めることにした。
 河童橋から梓川の右岸を歩いて明神橋へ。この山間の道は、これまで歩いた川沿いと違って、坂道や階段の多く、アップダウンが比較的激しくなっている。この道程でも、川沿いの道とは一味違う、様々な草木の生い茂る多層的な森や、どこか物々しく不気味な岳沢湿原の風景などに出合えるのだが、明神池へ先を急ぐ気持ちと、じわじわと出てくる足腰へのダメージで、明らかに最初の余裕がなくなり、口数も少なくなってくる。気になるのは、途中途中の案内看板にある「明神橋まで○○m」の記載である。
 明神橋に至る直前に、明神池がある。この池は穂高神社の神域にあたるために、拝観料として三百円が必要になる。明神池には一之池と二之池があり、どちらも明神岳からの土砂が湧き水をせき止めてできたものであるらしい。一之池は山の中にあるだだっ広い池で、池には何も浮かんでいないので眺めがいい。池に大きく突き出ている桟橋があるが、この幅が狭く気をつけないと池にポチャンといってしまいそうだった。二之池も決して小さくはないのだが、池に木が立っていたり、岩の小島が多く浮いているために、少し窮屈な印象である。しかし、どこか荒涼としていて薄暗い雰囲気があって、いい。
 そしてついに明神橋に到着した。先ほどの河童橋よりも大きくて迫力のある木製の吊り橋である。吊り橋だから、歩いていると揺れて楽しい。橋周囲の川原で小休憩を取っている観光客の姿を見かけ、中には昼寝なんかをしている人もいて、こういう場所でする昼寝はさぞ贅沢で気持ちいいだろうなと思った。橋を渡って対岸へ。ここからは梓川の左岸を歩いて河童橋に戻るのだが、この帰路はひたすら山道になっている。川沿いとは言っても、こちらは崖の上にあるような道なので、川はたまに足元に見えるといった程度。実を言うと、これといって特徴的な景観はない。それでいて道の高低差がなく、歩きやすいのもあって、私たちは黙々と河童橋への一本道を進んでいた。これは反省すべき態度であるが、この日、新潟無機終焉都市から遅れて合流する友人との待ち合わせのことも念頭にあったので、そうのんびりとはしていられなかったのだ。河童橋―明神橋の往復だが、復路がなだらかな道で本当によかったと、心から思った。
 河童橋に戻り、休憩がてら思い思いの軽食をおともにして(私はキャラメルソフトクリイムを食べた)、上高地で過ごす最後のゆったりした時間を楽しむ。野生のカモが梓川に身を任せて、ただ流されているのが面白かった。ホテルのレストランのメニュー看板が外に出されていたので、興味本位で少し見てみたが、『あれ?思ったよりも高くないな。これならちょっぴり贅沢をするようなもの・・・・。』と思っていたら、それはいわゆるセットのみの価格で、メイン料理のお値段は、私のような貧乏学生には縁のないような数字であった。第一、コーヒー一杯が私たちの昼食一回ぶんに匹敵するような値段なのだ。こういう時、メニューはしっかり見ておくようにした方がいい。勘違いをしたままでうっかりお店に入ってしまうと、もう取り返しのつかないことになるから。
 私たちはここに早朝からいたが、それからおやつ時まで当初の予想以上に長い時間を過ごしていた。それだけたくさんの見どころと魅力が、上高地にはあったということだ。帰りのバスターミナルに行くと、そこには駐車場までのバスを待つ旅行者の超超長蛇の列があって思わず閉口、そして少し戦慄した。行きはよいよい帰りはこわいということか、長時間待っていることを覚悟したが、バスの回転が思ったよりも早く、三十分ほどで乗車することができた。流石は屈指の観光地・上高地。旅行者への対処のシステムが完成されている。沢渡の駐車場から帰りの車の渋滞も心配だったが、これも全くの杞憂で、拍子抜けするくらいにスムーズに道路を走ることができた。その後、塩尻のとある道の駅で友人と合流し、そこからほど近い、一友人のオススメだという食堂で、夕食を済ませた。牛ロース焼肉定食を食べる。風変わりな鉄板で自分で肉を焼いて食べる形式だが、肉が良質、かつ特製の付けダレもおいしく、自然の中をひたすら歩いた一日の疲れが一気に回復するようだった。店も昔ながらの素朴な風情で好感がもてる。おいしく豊かな食事は、旅の大きな醍醐味だと改めて実感した。


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筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

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