野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

さよならありがとう / チアリングレター





 私は、大抵のことは何でもそつなくこなせる自信があるのだが、それでも、これまでずっと大いに苦手と感じていたものが、一つあった。それは、子供の扱いである。そもそも私は、あまり子供をかわいいと思うような人間ではなく、キャーキャー騒ぐ彼らをもはや『煩い』と疎ましく感じることの方が多かった覚えがある。それに、私の容貌からして、いかつくて強面でアゴにはヒゲも生えているし、いかにも子供が寄りついてこないようにできているのである。生まれつきがこのようなのだから、今の今まで子供たちと触れ合う機会は皆無と言って等しく、果たして子供の扱いの分からぬ大人になってしまった。そんな私が、現在の病棟実習で、一般と違った意味合いで不安を抱いていたのが、小児科での二週間である。やるべきタスクも多かったが、そんなことよりも担当の小児患者さんとどう時間を過ごせばいいのかという問題の方が私にとっては大きな懸案であった。
 だが、そんな私の心配は、各チームの回診についていったりして病棟の患者さんに会いにいく度に、だんだんと氷解していった。というのも、どういうわけか、子供たちがかわいく見えるのだ。全く素直にそう見えたのである。これは、一つの“戦場”である病院の中だからこそ彼らの無邪気さが際立ったのだろうか、それとも自分が身を置くギスギスした大学の人間関係との対比としてそう思えたのだろうか、とにかく子供たちはかわいくてかわいくて仕方がなかった。これは今までの自分だったら考えられないような境地であり、昔の私を知る者だったら信じられないような状況だが、ふと考えてみると、私も今年で二十三。成人を迎えてだいぶ経つし、すでに子供を見守る側に立っていたとしてもおかしくない頃だ。この『子供をかわいい』と思う気持ちは、ひょっとすると自分の精神的な成熟の発現であろうか。
 担当患者さんは、小学校中学年の女児。はじめ、もっと幼い年代の児を予想していた私は、紹介された時に、結構ムズカしいお年頃だなと思った。しかも女子。ヒョエー、どう接したらいいものかな、こりゃ。指導医の先生と一緒に最初の挨拶に行って、実際に対面して思ったこと、『(これまた随分とかわいい娘だな・・・・。)』子供のかわいさとは、大抵はまだまだ愛玩動物的なところがあるが、この患者さんに感じたのは、一般的な“かわいさ”である。つまり、普通に美少女(いや、まだ「美幼女」か?)であった。

 さて、これからのやり取りについては、あまり犯罪的な絵面ではなく、かわいい女の子と朴訥とした大男の「うさぎドロップ」的なイメージを抱きながら読んでいただきたい。

 それから毎日、朝昼晩と遊びに行くことにした。何をすればいいかを考えるよりも、とにかく何度も会いに行くことが大事だと思ったのだ。幸い、患者さんは明るくて、こっちが何か話しかける前にいろいろと話してくれるので、場うてがして気不味いようなことはそれほどなかった。学校のことゲームのことファッションのこと、いろんなことを話したが、不思議なことに、学校のクラスメイトよりも話しやすいことにいつか気がついた。精神の成熟が云々などと前述したが、やはり私の精神の根幹は未だ子供のままでいるのかもしれなかった。一緒にゲームをしたり、本や雑誌を読んだりもしたが、最後まで私は『オレ様は遊んで“やって”いるのだぞ、エヘン』などというエラそうな気持ちは持てなかった。だっていくら思い返しても、私は患者さんと一緒になって心から遊んでいたのだから。この時、私は個人的に残念な、というかやりきれない出来事に遭い、気分が鬱々としていたのだが、患者さんと遊んでいると気も紛れ、かなり心が軽くなった。このシリーズに限らず、いつも私を救ってくれたのは患者さんたちだった。
 これまでいろんな学生が実習に臨んでも、私ほど患者さんとの時間を重ねた学生はいないだろう。私はもう、患者さんを溺愛の様相であった。私の似顔絵を描いていてくれたり(頼んだわけじゃなく描いていた)、回診などで他の人たちより遅れて病室に入った時、私を見つけた途端嬉しそうな表情をして「あ!きたー!」と言ってくれたりしたら、そりゃあ、かわいく思っても仕方ないでしょう。娘を有つ父親の気持ちとはあるいはこのようなものかしら。厳格そうな顔して、案外、甘えられるとなんでも言うことを聞いてしまいそうな傾きを、自らの内に発見した。ある日、母親にメールで近況報告した際(こういう習慣が我が家にはある)に言われた「その年だったら、一生(あなたのこと)覚えてるよ」という言葉がなんだか重たかった。
 小児科での実習が終わっても時間があったら会いに来るよという約束をしたため、次のシリーズの合間にもちょくちょく遊びに出かけた。病棟が同じなので、特に面倒はない。ここまでくると、最初のような余所余所しさはなく、完全にタメ口で、私に対して小癪にも反抗してくる生意気を見せたが、それは私のことを少しは信頼してくれている証だろうか。私に代わって彼女の担当になったクラスメイト曰く、「シバケンの話しかしない。」のだそうだ。ちょっと優越感。そして無事に、彼女の退院が決まった。私はほっと安心した気持ちだったが、一方で寂しく思うところも少しは、否、大いにあった。退院の日は、私は本来の実習があったために、患者さんに会うことはできそうになかった。前日にお別れと感謝を伝えに行った。
 病院は患者さんにとって、本来の生活の舞台にはならないで、あくまでも非日常の場所であってほしい。だから、本来のステージで、家族と友達と、そして自分自身との生活を精一杯楽しんでほしいと思った。私のことを忘れないでほしいというのは本心だし、そうだったら本当に嬉しいが、別に覚えてくれていなくても構わない。二人で過ごした時間を覚えているのは、私だけでいい。私の知らないところで、彼女が立派に成長してくれていれば、私はそれでいいのだ。彼女に教えてもらったことを胸に留めて私はこれからも頑張る。そして、たまにあの時のことを思い返して、『キミはどんな大人になっていくのかな。』とひとり物思いに耽ってみるのも、また一つの楽しみである。

 私に素敵な思い出をくれて、ありがとう。さようなら。















にほんブログ村 大学生日記ブログ 医大生へ






この部屋からトータルへ 私たちとつながってください

  1. 2014/10/29(水) 20:22:09|
  2. 日記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<2014.10.26新日本プロレス「Road to POWER STRUGGRE~魚沼市制施行10周年記念事業 がんばろう!UONUMA 2014~」観戦レポート(休日はプロレスへ2) | ホーム | 東京ヒマつぶし日記―「洋館」と「妖怪」って似てるよね>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://shibakeneet.blog.fc2.com/tb.php/440-74d17976
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

筆者結語

日常系赤面ブログ「野良犬の生活」を応援していただきありがとうございました

「野良犬の生活」の物語

 はじめましての皆さんへ

長い間ありがとうございました

レポート検索

最新レポート一覧

アーカイブ

2016 04 【1】
2016 03 【4】
2016 02 【4】
2016 01 【5】
2015 12 【12】
2015 11 【10】
2015 10 【14】
2015 09 【8】
2015 08 【15】
2015 07 【14】
2015 06 【11】
2015 05 【17】
2015 04 【12】
2015 03 【12】
2015 02 【9】
2015 01 【9】
2014 12 【8】
2014 11 【13】
2014 10 【22】
2014 09 【18】
2014 08 【2】
2014 07 【14】
2014 06 【13】
2014 05 【13】
2014 04 【22】
2014 03 【17】
2014 02 【28】
2014 01 【29】
2013 12 【28】
2013 11 【28】
2013 10 【29】
2013 09 【22】
2013 08 【20】
2013 07 【30】
2013 06 【18】
2013 05 【15】
2013 04 【19】
2013 03 【3】
2013 02 【6】

カテゴリ

コメント

トラックバック

メッセージ

質問・要望どんとこいです!

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。