野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

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太陽の塔―『なんだこれは!?』

 以前、高校時代の友人が私の文章を称して、「森見登美彦みたい。」という形容をした。アマチュアの私が、プロの作家先生の文章を連想するようなものが書けるわけがない。その際は完全の否定をして軽くいなしたが、これをきっかけにして、私は森見登美彦先生の作品を読むようになった。アニメ化もされた代表作「四畳半神話体系」から読み始めたが、その次に読んだ、日本ファンタジーノベル賞も受賞したデビュー作「太陽の塔」の方に、なぜかより一層心魅かれるものがあった。
 この小説で、どこかシンボリックな役割を担っているのが、作品のタイトルにもなった、大阪・万博公園にある太陽の塔である。「つねに異様で、つねに恐ろしく、つねに偉大で、つねに何かがおかしい」太陽の塔。本作のヒロイン・水尾さんをすっかり虜とし、彼女に「これは宇宙遺産に指定されるべきです。」とまで言わせた太陽の塔。この作品を読み進めるに連れて、人類の手をはるかに超えた宇宙的存在として描かれている太陽の塔に、ただならぬ興味が湧き、今すぐにでも観に行きたい衝動に駆られていくのが分かった。

 クラスメイトとの鉄道旅行で大阪を訪れた際、太陽の塔を観に行くことに決めた。大阪で一泊をした翌日の朝一番に万博公園を訪れる。当初は朝の時点でクラスメイトと別れて個人行動となる予定であったが、彼の計画が変わり、公園には二人で向かうことになった。
 阪急千里線山田駅から大阪モノレールに乗り換えて万博記念公園駅を目指す。公園へと向かう歩道の上で、目を少し彼方へと向けると、中国自動車道を見下ろすように明らかに場違いな“それ”が唐突に聳えていた。
 『なんだこれは!?』
 遠くからでも(遠いからこそ?)、塔の巨大さがよく分かる。私は万博記念公園を訪れるのは初めてであり、「公園」というからにはいつでも自由に入れて楽しめるのだと早合点していたが、実際には入場者ゲートが設けられており、入園券を購入しなきゃ入れないようなものだった。そして、私たちが到着した頃は、まだ鉄柵が下りていて入れない。この時点で、入園時刻までまだ四十分ほどある。柵越しでも塔を見ることができたが、私は園内に入ってくまなく塔を観察しなきゃ気が済まないので開園を待つことにしたが、クラスメイトは帰りの電車まで大阪市内の鉄路を楽しむということで、ここで別行動の運びとなった。結局、当初の計画通りに事が進んだわけである。
 ゲート前のベンチに座り、ひとりでその時刻を待っていたが、何やら老人たちがたくさん集まってやいのかいのしていた。経験上、旅先で最も風情を損ねるものは煩い高齢者の集団であることが分かっていたので、せっかくの太陽の塔との対面を周りでヤイヤイされて邪魔されてはたまったもんじゃないと、蛍光ジャンパーなどを着込んだ(人は何歳頃から自分の服装に気を遣わなくなるのだろう)彼らの様子を恨めしく見ていた。ひょんなことから、その集団のうちの小グループと言葉を交わす機会が生まれたが、聞くところによると、老人会の集まりでハイキングをするのだという。ハイキングなら太陽の塔ではなく、庭園の方に流れるだろうと、少し安心することができた。にしても、やけにたくさんいらっしゃるのですねと尋ねてみると、ご婦人が答えて曰く、今日は四百人集まるのだという。四百人!すご!日本の高齢化の一端を感ずるような交流であった。
 それから程なくして、開園の時刻となった。ゲートを抜けると、枯れた芝生の広場の向こうに、静かに、厳かに、そして奇妙に、あの太陽の塔が立っていた。
 広場の広さや奥行き、視界よく広がる空のスケール、そしてその中に立っている巨大なる太陽の塔。これらの遠近感がどうもつかめず、謎の違和感めいたものが兆す。今までこの塔の写真は何度も見ているが、この謎の感覚は、実際に塔と同じ空間にいなければ感じることのできないものである。太陽を象徴しているのに、どこか面白くなさそうな灰色のふくれっ面、空高く伸びた頂上部に黄金に輝くパラボラ・フェイス、ふくれっ面と同じ高さから伸びる牛角のような上肢。何度も見ているというのに、どこもかしこも奇妙に見えて仕方がない。
 広場の周囲を塔まで伸びる小道を歩いて、塔に近づいてみる。塔との距離が縮まるに連れて、次第に分かり始めることがある。『あ、これホントにデカいんだな。』と。広場前の遠近感では測りかねたが、この太陽の塔は本当に、本当に巨大なのである。案内看板によると、高さは六十五メートル。四十七メートルの自由の女神や、東京ディズニーランドのシンデレラ城(五十一メートル)よりも遥かに高いのだ。
 塔の根元に辿りつき見上げてみると、改めてその巨大さに圧倒されてしまう。成程、これはもうどうしようもない。人は太陽の塔に対してもはや何もすることができない。このオブジェから発せられる不可解なパワー(なんと魅力的だろう!)は、宇宙から下りてくるエネルギーによって賄われているような錯覚に陥っても仕方のないことである。ふとゲートの方を見ると、根元から門に向かって左手、つまりゲートをくぐって右側の小道を、例の老人会の面々が歩いてきているのに対し、ゲートに向かって右手、すなわち公園内に入ってすぐ左の道を、幼稚園の遠足らしい軍団が嬌声を挙げながら歩いている。このあまりにも対照的すぎる光景に、『年老いるとは、右に進むことなのかもしれない・・・・。』としみじみ思ったが、自分でもあきれるほどに意味不明である。
 太陽の塔の背面には「黒い太陽の顔」が描かれている。正面の「太陽の顔」などならまだ分かる(というか、もうこれについて考えるのをやめている)が、「黒い太陽の顔」とは何か。「黒い太陽」とは何だ!?「太陽の顔」が不細工ながら愛嬌のある仕上がりになっているのに対し、「黒い太陽の顔」は完全に生を拒絶しているような風情で、狂気すら感じる。
 それから塔の周りを何周したのか、もう分からない。正面の顔や、巨大な腕、「黒い太陽」を下から何度も何度も眺めるが、こうなると塔の元を離れることができなくなる。意味不明であるが、この太陽の塔には、人を引き付ける不思議な魅力や得体の知れないパワーがある。しかし、これからの予定もあったため、名残り惜しい気持ちを振り切って、再びゲート方向へと戻ることにする。戻る道すがら、何回か塔の方を振り返ってみるが、太陽の塔は決して変わらず、例の気難しそうな顔のままでそこに立っていた。なんというか、これほどまでに絶対的な“シンボル”に出会ったのは、初めてかもしれない。
 私もすっかり太陽の塔の虜になってしまい、園内の売店で太陽の塔グッズを買ってしまうくらいに熱をあげてしまっていた。ゲートを出る直前も何度も振り向いて、そこに塔が立っていることを確かめて、何か、決心をするような覚悟で公園を後にした。

 「太陽の塔」には、こう書いてある。
「一度見てみるべきだとは言わない。何度でも訪れたまえ。そして、ふつふつと体内に湧き出してくる異次元宇宙の気配に震えたまえ。世人はすべからく偉大なる太陽の塔の前に膝を屈し「なんじゃこりゃあ!」と何度でも何度でも心おきなく叫ぶべし。異界への入り口はそこにある。」
その記述の通り、太陽の塔との遭遇は、一度だけでは満足することができない。実際、新潟無機終焉都市に戻って少しも経たないうちに、私は再び太陽の塔の元を訪れたいと思っているのだから。

 大阪モノレールに乗り込み、“千年の都”京都に向かう。モノレールの車窓から万博公園の方を見てみると、そこには太陽の塔が、先ほどと少しも変わらぬ姿で聳えていた。この塔は、これから何年も変わらずにここに立っているに違いない。


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筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

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