野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

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クラスメイトが来た!(横手観光案内)

 クラスメイトが春休みの病院見学ツアーの合間に、私の故郷・秋田県に寄る機会があるとのことで、いつものように実家に里帰りをしていた私も、少しの時間だが、彼と合流して遊ぶという予定を立てた。この話は春期休暇に入る前から出ていたのだが、秋田について多くを知らず、旅らしい旅もしない彼のこと、実際に秋田で何をするのかは私に大部分を委ねられていた。
 数日の旅程を組んでいるならまだしも、半日足らずという時間的制約があって秋田で楽しめるところを考えるのは、とても難しい。秋田県は自然、食、酒、温泉、祭り、歴史、伝承など、“かつてこの国にあった暮らし”に即した魅力に溢れていて、一日そこらでは十分に堪能することはできない奥深さがあると、私は思っているからだ。しかし、特に旅が好きというわけでもなく、秋田に今も残る“情けない日本の姿”には興味のなさそうな彼を相手にこれを説くのは、全くの見当外れであろう。
 秋田市は今ドキの店があるだけで実は何もない街だから、私は行く気はない。角館→田沢湖の安易な観光ルートを提案してみたが、今度は彼に行く気がない。議論は停滞し、私の田舎町を訪ねて、私の生い立ちを辿るという案まで飛び出してしまう始末であった(それならそれである程度の用意をする自信はあったが)。結局、方針の決まらぬまま春休みを迎えることになったが、約束の日の直前に、彼から「(秋田県立)近代美術館に行きたい。」という希望を賜ったので、今回はそれをメインに据え、あとは適当に回るプランを組み立てることにした。
 彼は宮古から自動車で、私は湯沢から奥羽本線でと、それぞれの方法で移動し、近代美術館最寄りの横手駅で合流をする。当初は正午過ぎに落ち合い、まずは当地が誇るB級グルメ・横手やきそばでランチを摂る計画でいたのだけれど、前日に彼が体調を崩したので、色々と余裕を持たせて、最終的に午後二時過ぎに合流の約束になった。到着は私の方が後になってしまったので、彼の車に乗り込みながら『秋田にようこそ。』と言うあべこべを演じることになった。
 ところで、ここ横手は毎年二月中旬に催される伝統行事「横手のかまくら」であまりにも有名である。クラスメイトは本物のかまくらを見たことがないだろうし、せっかく横手という極めてレアな土地に来たのにかまくらを見ないで帰ってしまってはあまりにもカワイソウである。そういうことを慮り、美術館に向かう前に、市役所本庁舎のすぐそばにある「かまくら館」という施設に立ち寄らせた。ここには常にマイナス十℃ほどに保たれた部屋があり、そこで一年中かまくらを見ることができるのだ。かまくら室の出入口は二重になっていて、内扉と外扉が同時に開くことのないようになっている。この扉はボタン式で開くようになっているのだが、一々「ガガガ」という轟音が鳴って驚く。重厚な金属扉が開くと、中に本物のかまくらが見えるというのは、なかなか奇妙な体験であった。私は秋田の県南地域に生まれ育ったものの、かまくらをこれほど間近に見る機会はなかったので、お客の隣で素直に感動してしまった。しかし、室温マイナス十℃というのは、雪国・秋田に暮らしていても滅多に経験できない寒さであり、長々と見物するのはかなりの酷である。本来、かまくらの中では火鉢が焚かれており、その内部は思ったよりも暖かいという説であったが、この施設のかまくら内ではそのようなことはされていないので、普通に寒い。そういえばこの日、クラスメイトは体調があまり芳しくなかった。落ち着いて考えると、このマイナス十℃の世界は、身体の不調を来している人間にとっては地獄のような環境ではないだろうか。事実、意気が落ちているような彼の表情に、私は『しまった!』と反省する気持ちだった。
 クラスメイトの体調をちょくちょく気遣いつつ、ぼちぼち美術館へと向かうことにする。私たちのお目当てである秋田県立近代美術館は、秋田ふるさと村というテーマパーク(笑)のなかの一施設である。駐車場に車を停め、さあ美術館へ・・・・といったとき、ふと彼が、ふるさと村内の他の施設に興味を抱いたようであった。その施設の名は、「ワンダーキャスル」。四角三角などの単純な図形で構成された城型の施設で、色調は薄汚れた白銀に統一されている。知らない人が見たら、ラブホテルと勘違いしてしまいそうなビジュアルである。見た目が胡散臭いのは言うまでもないが、第一、「ワンダーキャッスル」という名前からして実に怪しいではないか。明らかにバブル時代の悲しき遺産である。これを初めて目にして混乱しているクラスメイトに説明を求められたが、実は私もこれについては多くを知らない。保育園時代に家族と一緒に訪れた記憶があるのだが、たしか私は出入口近くにあったボールプールでひたすら時間を過ごしていたために、内部の実際は見ていないのだ。
 キャッスルの入口に至る階段を上ろうとするが、巨大な雪塊が塞いでしまっていた。なんとか人ひとり通れるスペースがあった(あるように見えた)ので、クラスメイトの先行で日常生活では避けたい姿勢で上るが、大きな不安が襲い途中で立ち止まる。すると、頭上から人の声が聞こえたので、もしや別のルートがあるのではないかと、冷静になって階段を下りてみると、そこにはエレベーターがあった。どんだけ混乱してたの。
 保育園時代の記憶ではワンダーキャッスルの中はもっと薄暗く少し怖かった印象があるのだが、いま改めて訪ねてみると、案外と明るく開放的だったので拍子抜けしてしまった。思い出のボールプールもまだ存在しているみたいで、どこか安心したような気分を抱く。しかし、城内に入ってはじめに視線が向かう先は、真正面の「なまはげフリーフォール」である。男鹿半島の伝統行事「なまはげ」をモチーフにした、高さ五メートルの落下式すべり台である。噂には聞いていたが、こうやって生で見るのは初めて。すべり台の横から落下角度を確認してみたが、これはもはやただの壁だと言う他ない。だが、我々はお互いにいい年(クラスメイトは三十代。私は見た目が三十代)でありながら未だに少年の心を捨てずに大事に持っている人種であるため、当然のように後ですべる流れができた。
 ワンダーキャッスルのメインの展示は、城の三階四階にある「トリックアートワールド」である。「トリックアートワールド」・・・・これまた寂寥を秘めている響きである。こういうトリックアート系の施設は、二十世紀に全国各地の中堅観光地に創られ、諸事情で今は廃墟と化しているものの典型である。それを、今もこうしていちばんの武器にして商売をしているというところに、第一の物悲しさがある。そして、プロジェクションマッピングや3D技術の進歩は目を見張るものがあるが、そんな時代に未だにハリボテの二次元絵で人を楽しませようとする竹槍根性に、第二の物悲しさがある。最初は自慢の技「から元気」で楽しげに見物していた私たちだが、次第にこの、文化祭のお化け屋敷的な物悲しさに気づき、囚われ、最後にはどこか耐えるように、一種の惰性で順路を辿るようになってしまっていた。
 具体的にどんなものがあるのかを記録してみるが、ますパンフレットに「No.1人気コーナー!」という紹介がされていた、「斜めの部屋」は平衡感覚が失われて、歩くことも難しく、入ってすぐに気持ち悪くなる。クラスメイトは本当に苦しそうであった。また、「エイムズの部屋」というコーナーがあるが、これは基本的に三人以上のグループじゃなきゃ楽しめない代物である。私たちのように二人で行ってしまうと、微妙な気持ちになってしまうので注意が必要である。また、三階の「ワンダーサーカス」という一画は、ハッキリ言ってめちゃくちゃ怖い。ちょっとしたホラーハウスである。題材となっているサーカスからして、ちょっとしたホラー要素を孕んでいて怖い(これは私観)というのに、それに加えて、壁に描かれた絵が訪問者の恐怖感を倍増させる。ピエロは、サーカスに欠かせないキャラクターであるが、「ピエロ恐怖症」というものがある(原因はどう考えても「IT」(1990)だと思うのだが・・・・)ように、見た目はかなり怖い。ディズニー映画のようにデフォルメして描けばまだよかったのだが、よりによってここのピエロは眼光がガチ。例えば「ダンボ」(1941)に出てくるピエロたちは目がアニメチックな黒目だけでまだかわいらしさがあるが、ここのピエロはきちんと白目があって、やけに写実的なのだ。これが実に背筋が凍る絵なのである。楽屋を覗けるような小コーナーもあるが、やはりリアルな絵と不気味な静寂に襲われ、覗いたことを大いに後悔する。このトリックアートワールド、来訪者にも求めるものが大きいように思えてならない。積極的に写真撮影にヤイヤイとはしゃいでいれば、それなりに楽しめるのであろうが、私たちのように、最初から混乱を持って入ってしまった者は、もはや向こうの意図からして通じなくなり、不可解な気持ちに呪われてしまう。実に恐ろしいスポットである。
 ・・・・とまあ、そういうふうに書いてしまうと、私がワンダーキャッスルをボロボロにこきおろしているように思われてしまうかもしれないが、物悲しさはあっても、心からの楽しさは感じなくても、決して面白くないわけではない。むしろ私は、こういうなんとか頑張っているような時代遅れの施設が結構好きである。閉鎖寸前のしょんぼりとしたレトロ感が、なぜか落ち着くのである。各地の微妙な観光スポットにある薄汚い売店を見ると、ほっとするのである。私のように、清潔で見た目のいいモノばかりが崇められ始めたこの国に、今も息づく“情けなさ”を感じたい向きには、このワンダーキャッスルはオススメである。
 戦慄のトリックアートワールドから逃げ出した二階には、巨大なアスレチックがある。こういうアスレチックに憧れを持つ私は是非ともヤイヤイしたかったが、クラスメイトが混乱状態から回復できず、体調が悪化したみたいな顔をしていたので、諦めた。先述した、なまはげフリーフォールの飛び出し口があったが、滑るためには、どうやらゴザ袋を履いて、ヘルメットを装着して、スタッフの人を呼び出さなきゃいけないという、実に億劫な過程を経なければならないらしく、すっかり気持ちが萎えてしまい、見送る方針をとった。しかし、すぐさま「チューブスライド」という自由に滑れて、一階に下りることができるすべり台を見つけた。というのに、出口にあたりに人が座っているのを見て、照れが出てしまった私たちは、しばらく踏ん切りがつかずにくすぶっていた。すると、高校生~大学生に見える若い女子二人がやってきて、私たちを尻目に、躊躇いなくすべり出してキャッキャしているではないか!それを目にすると、「よし、行くか。」と、彼女がすべり終わったのを確認して、私たちもすぐさますべり始める。結構スピードが出てこわい。そういえば、この女子二人組だけでなく、この日は若い女子グループが多く訪れていて意外に思った。ここは今どきガールにとっては熱いスポットなのであろうか。
 シュールな彫刻が立ち並ぶ広場を抜けて、いよいよ本来の目的である近代美術館に入る。秋田県立近代美術館は、奇怪なデザインの巨大な建築である。この日は企画展として、秋田出身の画家たちが日々描き残した写生スケッチを主に集めた展覧会を開いていた。私は美術方面には明るくないので、今回特集されている画家はひとりも知らなかったのだが、美術館という空間自体が好きなので、別段、退屈することはない。有名な作品だけを見るためだけに美術館に出かけるのはもったいないと思う。こういう作品としては完成していないスケッチからでも、何かを感じとることはできるはずだ。
 秋田ふるさと村内のお土産コーナーでクラスメイトたちへのお土産(長期休暇後にはいつも秋田県のお土産を配っている)を買い、フードコートでしょうゆソフトをインストールして(クラスメイトは何も食べなかった。申し訳ないことをした・・・・)一休みした後、帰りの電車の時間に合わせてクラスメイトに駅まで送ってもらった。彼はこのまま秋田市に向かい、翌日には病院見学の予定ということであった。体調が悪いというのに、なんともタフである。
 今まで何度も通った道や街並みを大学のクラスメイトと見るというのは初めてで、なんとも不思議な体験であった。出身地は、家族と並んで、人の人生や人格形成における“種”のようなもので、今まで重ねてきた後天的要素の中に秘められた最も内面にあるものである。だからこそ、それらを人に見られるのは恥ずかしく思うのだろう。この日も私はいささか恥ずかしい思いをしたのだが、他の地方ならともかく、秋田県の、しかもマイナーな県南地域を訪れてくれる友人がいるというのは、素直に嬉しいことである。


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筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

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