野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

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早歩きの弘前 / 秋田内陸縦貫鉄道の旅

 母と私は、観光列車を弘前で降りた。次の列車の発車まで、二時間ほどある。その間、当地の名所を数か所見物してみたいところだが、二時間というのは、長いように思えて、実はものすごく短い。私は二年前の夏に弘前を旅行しているので、今回は母の意向を尊重しようと思い、行きたいところはないかと尋ねてみるも、別にないというので参った。とりあえず、名所の集まる市役所周辺に行けば間違いはないだろうと思い、観光に便利な循環バスに乗りこんだ。バス車内から見る弘前の街並みは、何かがあるということではないが、さっぱりとしていて好感がもてる。
 弘前市役所の周りは、弘前公園や旧弘前市立図書館などの名所が近接している観光の中心部である。弘前城は工事中で見ることができないということを知っていたので、ひとまず時代物の建物行きに絞られたが、バス停を降りて程なく見えた旧弘前市立図書館も、工事の鉄骨によりその優美な魅力が大きく損なわれ、それはそれは物悲しく建っていた。初っ端に興を削がれた私たちは、気持ちを切り替えて藤田記念庭園を目指すことにした。旅の出発前に、大方の目星をつけていたところだったが、私も訪れたことはなかったし、母も特に異論はなかったのだ。行く途中に、旧第八師団長官舎(旧弘前市長公舎)があるが、これも思いっきり改装工事の真っ最中で、内部の見学は不可能であった。なんとなく、嫌な予感がした。
 藤田記念庭園は、弘前出身の日本商工会議所初代会頭・藤田謙一が、一九二一(大正一〇)年に別邸を構える際に、わざわざ東京から庭師を呼び寄せて造った庭園である。東北地方でも有数の巨大庭園だが、私たちが訪れた日は、ぎりぎり冬期閉鎖期間の中で、入ることができない。それは前から分かっていたことであり、そもそも私たちの目当ては、庭園ではなく洋館の方であった。弘前が誇る明治・大正の洋風建築群の一つである藤田記念庭園・洋館は、国指定登録有形文化財に選ばれている。外観は、全体的には灰色の石壁で重厚な印象だが、その中でレンガの赤褐色や八角ドームの赤色がいいアクセントになっている。屋根の形などの部分はどうにも描写し難いが、大きな特徴はやはり八角形の塔ということになろうか。さて、それでは邸内を見学しようと玄関をくぐってみると、あの嫌な予感は、このことを予言していたのであろうか、なぜか館内のホールにいろいろの楽器や機材が運ばれ、設置されているではないか。これはどうしたことだろうと観察してみると、どうやらこの日の夜、この洋館を会場にして意図のよく分からないイベントが開催されるようで、関係者は昼間からその準備に大忙しということであるらしい。実はこの邸宅は、ホールや各部屋を会議室などの用途で利用できるのだ(有料)。それにしてもどうしてこの日に限って・・・・。これにて、私たちが気兼ねなく見学できるのは、一階の資料室に限られた。イベントの準備をしているホールもちらちらと覗いていたが、それが気に障ったのだろう、軽薄な身なりの主催者たちは、しばらくしてホールの扉を閉めるという行動をとった。最初からそうすればよかったじゃん。また、この洋館には喫茶室もあり、私は少し一服したく思っていたが、母が「え、行くの?」みたいな態度だったので、諦めた。
 少しだけ時間があった。近場で、弘前市立図書館に行くことも考えたが、やはり工事中なのが大きな気がかりであった。色々と悩んだ末、距離は少しあるが、津軽藩ねぷた村という施設に行くことにした。弘前について調べているとき、母が気にしている素振りだったので、時間は心配であるが、せっかくなので賭けにでてみる。
 タイミングよく循環バスがやって来てくれ、それに乗車してすぐに文化センター前で降りる。そこから歩いて十分ほどのところに、津軽藩ねぷた村がある。実に中途半端な立地である。土産屋や軽食の店舗も集まっている総合観光施設といった様子だが、時間がないので、そういったものには目もくれずに、ねぷたの館に入場する。受付の人の「この先、結構見るところがあります。」という言葉が、実に不吉であった。館内に入るとすぐに、太鼓の鋭い音が聞こえてきて驚いた。いきなりメインのねぷたの展示とお囃子体験のコーナーがあったのだ。表に三国志や水滸伝の勇ましい絵が、裏に艶やかな美人画が描かれた弘前ねぷたは、生で見ると見上げるばかりの巨大さで、その迫力に息を飲む。この展示室にはお囃子の実演者が常駐していて、一回一回弘前ねぷたの説明とお囃子の実演、そして来館者のお囃子実演のコーナーをルーチンでやっているみたいだった。だが、このルーチンを律儀に通していては、絶対に電車の時間に間に合わない。ねぷたを少しでも見れて観劇の私はすぐにでも次の順路に進みたかったが、なぜか母が動かない。時間がないということを演者さんに表明してみると、あちらがコテコテの津軽弁で「そんなら、お囃子も聴いていがねが?(お前ら何しに来たの?)」というので、私もこれ以上の抵抗は無駄と観念して、ひとまずお囃子は披露してもらうことになった。篠笛一本とと大きな太鼓一つだけの演奏だが、とても猛々しく迫力もあり、傍らの巨大なねぷた屋台を見ながら聴いてみると、成程、悪い気はしない。そして「太鼓叩いてみませんか?」というルーチン最後の工程に差し掛かったが、私も田舎町の伝統行事のお囃子方として暗躍している身、是非とも太鼓を叩いてみたくてウズウズしていたのだ。簡単なパターンを繰り返して叩くだけだが、終了後は、演者さんに物凄く褒められた。ちなみに、演者さんの津軽弁だが、これはふるさとを持たぬ都会人には喜ばれるサンビスであろうが、秋田県の田舎に生まれ育ち、訛りや方言を嫌というほど聞いてきた私にとっては、別に嬉しくもなんともない。むしろどこかカチンときてしまうのは、流石に心が狭すぎだろうか。第一、津軽弁というのは、もっと難解で複雑な、もはや異国の言葉なのである。あんな風に簡単に聞きとれて、誰でもすぐに真似できるような初歩的な訛りなどは笑止千万である。ちなみに、私は秋田に生まれ育ったとはいえ、秋田弁を話すことができない。最近はヒアリングすら怪しい。
 この、ねぷたの館は、このねぷた展示室を過ぎてからも、津軽の伝統工芸品を職人の皆さんがその場で作っているのを見れたり、津軽三味線の演奏も聴いたりすることのできる、思ったよりも面白そうな施設であった。できればゆっくりと見ていきたいところだが、ねぷたのコーナーで、かなりの時間を割いてしまったので、列車の発車時刻に間に合わせるためには、その後のコーナーは完全に素通りを決め込まなきゃいけなかった。たくさんの職人さんや三味線奏者の目の前を、少しも立ち止まることなく歩いていくのは心が傷んだ。電車まで本当に時間がない。強歩で再びバス停に舞い戻ったが、こういう状況に限って、バスはタイミングよくは現れてくれない。仕方がないので、弘前公園の周りに停まっているタクシーに乗って弘前駅に戻った。本当はここで夕食を調達するつもりであったが、コンコースで販売しているのはほとんどが売り切れ。売店を覗く時間もなく、そのまま列車に乗り込んだ。どこかしこで行われている工事、実に間が悪く開催されるイベント、急ぎ足の見物・・・・。今日の弘前は、どこかザンネンであった。

 奥羽本線鷹ノ巣駅に降りた。地域の住民以外に、この駅に降りる者にはよほどの事情があることと思うが、かくいう私たち親子にも、それなりの事情があった。鉄道日帰り旅行はすでに帰路に突入しているが、この際に、ここ、鷹巣から角館までを結んでいる、「秋田内陸縦貫鉄道」こと秋田内陸線を利用する計画を企てていたのだ。
 弘前でこの日の夕食を準備するつもりでいたが、それはあえなく頓挫してしまったため、角館で少し遅い晩ご飯を摂ることにして、それまでの“つなぎ”に、鷹巣での待ち時間の間に、ちょっとした菓子類を調達することにした。しかし、この鷹ノ巣駅の周りは、思わずこちらが心配になってしまうほどに、まさしく何もなくて閑散としている。この辺りのナウなヤングは、一体ドコで遊んでいるのだろうか。ほとほと心配になってしまう。それでも何かしらがあることを期待して駅前の商店街を歩いていくと、あった!あった!超ローカルなコンビニエンスストアが、あった!コンビニ業界大手の青色の店をもじったであろう、その店名に、思わず笑ってしまう。このどこまでもローカルで垢抜けないところが微笑ましくもあり、また、とても物悲しくもある。店内はコンビニというより、スーパーとホームセンターを合わせて二で割ったような町のお店といった様子。少し不自然な音がしたので、気になって店の奥を覗いてみると、そこにはどういうわけか撞球台があって、田舎の素朴なコンビニには全く不釣り合いなモダンな光景であった。
 秋田内陸線は「秋田内陸縦貫鉄道」とも呼ばれ、鷹巣から角館まで、北秋田地域から仙北地域までにかけて、まさしく秋田県の内陸部を縦貫して走っている路線だ。県内でも屈指のローカル線であり、車窓の純朴な風景が観光客の人気を集めているという、秋田の名物の一つでもある。我が、秋田県内の鉄路全制覇の野望を抜きにしても、この路線にはとりわけ興味があって、いつかどんなものか乗ってみたいという心を温めていたが、ここにきてそれが実を結ぶことになった。今更になってアレだが、日帰りで五能線(リゾートしらかみ)と内陸線に乗れるという事実が、未だに信じられなかった。
 乗り込む列車は、ローカル線らしく、一両のみの編成。やはり、シーズンではないと見えて、単なる旅行者は私たち親子だけのようであった。鷹巣を出てしばらくは、建物や大きな道路が窓から認められるが、次第に景色は山あいの部落のそれとなり、最後には完全なる山中の線路をひた走ることになる。農村や山の中を走る路線は他にもたくさんあるが、それらが、農村や山の中に線路を造ってその上を電車が走っているという、当たり前の見かたしかできないのに比べて、秋田内陸線の場合は、もはや線路がどうとかではなく、感覚的に本当に雪の上(本当はこの下には田んぼがある)を駆け抜けているような、山の中を、木々をかき分けかき分け走っているような、もっと自然的な感じが兆してくる。萱草~笑内など、木々や渓流の大自然を走る区間は、窓からの雄大な景色に確かな見応えがあるが、これはどちらかというと、この自然の中を列車が走っている光景にこそ風情があるのだと思う。時おり、運転席の近くに立って、前を走る線路を立って見ている人がいる。私と同じ、鉄道好きだろうかと思ったが、どうやら彼らは沿線の住民であるようだった。運転席の近くで、先行する線路を見て車内を過ごす。まるでそれがいつもやっていることのように、まるでそこが自分のいつもの場所であるかのように。そして、降りるときには、運転手と一言二言、四方山の話をするのだ。このような光景を目の当たりにするにつけ、この路線は正真正銘のローカル線なのだと感じた。マタギの里・上小阿仁の各駅を通り過ぎ、戸沢ストレートを抜けたあたりでもう日が落ちて、窓の外は真っ暗闇に包まれた。もうすぐ内陸縦貫鉄道の旅が終わってしまう。
 秋田内陸線、終点である角館駅についた。辺りはすっかり夜の姿。県内屈指の観光地も、流石に閑としている。角館の駅に降りるのは初めてだったが、観光地であり、新幹線も停まることから、駅舎やその周辺は、慎ましいながらも小奇麗に整頓されている。周りに手頃な食堂はなく、私たちは、駅の売店でおにぎり等を買って、旅の最後の食事とした。そこから後は、田舎町の最寄りである湯沢まで帰るだけである。角館から田沢湖線で大曲へ。大曲駅には一度だけ来た憶えがあるが、以前よりもだだっ広く改修がされている気がする。発車時刻まで少し待った後、湯沢の方向を目指し奥羽本線に乗り込んだ。


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筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

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