野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

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姨捨毒蟲行

 いや、参ってしまった。私は高田世界館の見物をしたかったのだが、この日は作品の上映日でそれは難しそうなのだ。高田で過ごす最後の土曜日だし、明日は明日で予定があるし、チャンスはもうここしかなかったのだが、どうやら今回は世界館の見学は果たせそうにないみたいだ。
 さて、これからどうするか。一度宿舎に戻って、図書館に勉強でもしに行くか?それがいちばんの安全策のように思えるが、せっかく高田にいるというのに、それで貴重な休日を潰してしまうのは、なんだかもったいない。ここにいるうちにやりたいことが、まだ残っていたような。・・・・あ。
 ―そうだ、長野行こう。
 この思いつきが降りてくると同時に、私の足はすでに駅の方向へと歩みを進めていた。そして、あれよあれよという間に、私は長野方面へ走る鉄道に揺られていたのだった。路線図を見てもらえば分かるが、高田―長野間の鉄路はいたってシンプルにできている。距離もそれほどではないので、高田からでいうと、実は新潟無機終焉都市よりも長野の方がはるかに訪れやすいのである。
 とはいえ、高田から長野まで直通するような便はなく、たいていは途中の主要駅で乗り換えることになる。先の北陸新幹線の開業に合わせて私鉄化したえちごトキメキ鉄道・妙高はねうまラインを、まずは新井駅で降りる。乗り換えの駅なのだから、少しは大きいのかもと思っていたが、駅の前には平凡な事業所が建っているのみで、少しも目に華やぐものなく、なんだか不安を駆り立てられるような光景がそこにはあった。次の列車まではだいぶ時間がある。その間どうやって、こんなところで過ごせというのだ。待合に座って思索に耽っているという法もあったが、ただそれに甘んじるのも癪で、ひとまず辺りを散策してみることにした。駅周辺の地図は、見ても全く参考にならないどころか、目を惹くものが一つも見つからず、なおさら不安が強くなるばかりである。
 アーケードのようなものが見えたので、喫茶店などがあればいいなと祈ってそちらに歩いてみると、なんと幸いにして、この日は朝市が開かれていたのだった。先日に有名な高田の朝市を訪れたばかりであったが、高田に限らず、その近辺の地域にも、このような朝市文化が息づいているようである。
 高田のそれと比べて規模は小さいが、それなりに人は集まっている。だが、あちらの観光的な側面があるのに対し、こちらの市は完全に地域住民の生活用の色が濃い。そんな中を歩いていると、自分の姿格好が周囲から浮いているように思えてきて、だいぶ気不味い。そして、店を出している、あるいは市に集まっているのは、案の定高齢の人々が主で、子供の姿もあるが全体としては枯れた雰囲気であり、道端に座って休んでいるお婆さんたちを見ていると、まるで人生のどんづまりを目にしているかのようである。
 高田の朝市は小さなどら焼きが名物で、求める人が行列を成していたが、ここの市でも、同じようなどら焼き屋が出店をしている。店は二つあって、一つは行列、もう一つは閑古鳥という対照的な結果を収めていた。一見したところ、作り方も出来上がりも似たようなものであるが、この集客の違いはどこから来るのであろう。私もどら焼きを買おうと思ったが、なんとなく、列ができている店の方に行こうと思った。実際はどうか分からないが、行列ができている=評判であるという単純な心理が働いてしまったのだろうと思う。それはひょっとしたら、列を成している他の客にも言えることなのかもしれない。このどら焼きは、一般的な、「ドラえもん」的などら焼きではなく、どちらかというと“大判焼き”のような大きさと形状をしている。地元の客はそれを二桁の単位で買い求めていく。私は二個だけ買った。朝市に出張販売していたどこかの喫茶店のホット・コーヒーも購入し、駅の待合で嗜んだ。
 新井で乗り込む列車でもまだ長野には至らず、次には妙高高原で降りなくちゃいけない。新井を出たあたりから、急に霧が立ちこめてきた。スイッチバックの二本木駅を過ぎれば、濃霧はいよいよ白く、我々の列車を包み込む。車窓からは辺りの景色を視認することができず、線路わきの田んぼや木が一、二本、すれ違うのが分かるのみである。先頭車両から見る線路も先が見えず、汽笛がひっきりなしに鳴っている。いま、自分がどこにいるのか分からなくなる、まるで夢の中を走っているような、幻想的な気分であった。
 妙高高原駅に降りても、依然として真っ白い霧が辺りを覆っている。高原リゾートの玄関口に来たような実感は湧かない。濃霧のこともあるし、駅前には土産屋と食堂が少しあるだけで、予想以上にも閑散としていて、新井駅とは比べ物にならないほどの不安が襲ってくる。昼食を摂りに蕎麦屋に入った。駅前は閑散としていたものの、暇を持て余した老年ハイカーたちがいることで、店自体はそれほど寂れてはいないようだった。山菜そばを食べる。
 妙高高原から、いよいよ長野までの列車に乗れる。しなの鉄道も、新幹線のせいで私鉄となった会社である。列車の車体が渋くてかっこいい。発車から程なくして県境を越えると、途端に霧が晴れ、それどころか空も気持ち良く晴れていて、緑や花々が日の光に映えているではないか。新潟と長野で、天候がこんなにも変わるものだろうか。
 私は、高田―長野間の鉄路に興味があったのであって、長野に行ってどうするのかというと、そういった具体的な目的はまるでなかった。善光寺御開帳期間中であったが、それは先日に訪れたばかりである。当初、新しくなった駅をひとしきり探検したらすぐにUターンしようと思っていたのだが、こうも清々しい晴天を見せつけられると、もうちょっと、何かをして行きたくなる。思いっきり遠出はできないので、程よいところで、姨捨にまで足を運んでみることにした。当地は一度訪ねたことがあるのだが、季節的に、有名な棚田には水が張られるどころか、田起こしすらされていなく、実に荒涼としたところへの訪問になってしまったのだ。今回は、そろそろ水の張られてもいいような時分である。
 長野駅で、篠ノ井線の臨時快速「善光寺御開帳号」に乗り換えて姨捨へ。ここは日本有数のスイッチバック駅であり、ホームから望む善光寺平の眺望は、日本三大車窓にも数えられているほどの絶景である。観光にも力を入れているのだろうか、なんだか前回訪れたよりも整備がされていて、だいぶ小奇麗となっている気がする。駅の近くにあった、錆びたトタンの駐輪場も解体されており、独特の野趣が失われていて、残念に思う。
 早速棚田へと向かう。一見したところ、まだ水が張られている様子はなさそうであった。線路を横切っていくが、棚田への分岐の逆の方にある、棚田公園の展望台が少し気になった。展望台というからには、きっとあの景観をさらによく眺めることができるに違いない。ちょっとそちらにも寄ってみることにした。だが、何だろう。少し山道を進んだところで、何かが宙に浮いているのが見えた。何だ、これ・・・・。
 それは、毛虫だった。しかも、ふさふさと少しだけ毛羽立った毛虫ではなく、カタくて長い剛毛が何本も生えている、毒々しい輸入モノの毛虫である。たいていの生物は平気な私だが、毛虫だけは本当にダメなのである。だというのに、それが、何の得があってそうしているのかは分からないが、傍らの木々からぶら下がっているではないか。しかも、よく見ると、何匹も、何匹も、傍らの木々からぶら下がっているのである。



ワー毛虫だ!(1:43~)

 急峻に襲いかかる寒気に、全身に鳥肌が立つのが分かった。N.vagusの過活動で血の気が引けていく。ここにいちゃいけない。瞬時に悟った私は、もう棚田なんかどうでもよくて、元きた道を駅に戻る。そばの木に気をつけながら行くが、よくよく観察してみると、毛虫さんたちは地面も普通に這いずっている。垂れ下がる彼らと、這いずる彼ら、全方位に神経を張り詰めながら、慎重に、それでいてできるだけ早急に逃げる。生きた心地が、まるでしなかった。電車に乗って長野に戻るまでの間も、しばらく辺りに神経過敏となったままであった。肩や背中、あるいはバッグに彼らがついていないか、もう怖くて怖くて仕方がなかった。
 長野駅に降りた。前回の訪問時は、新幹線開業に合わせて改装の最中であったが、その工事はもう完成しており、なんといえばいいか、とても垢抜けた感じになっている。新幹線と善光寺御開帳の効果に、休日要素も加わり、駅構内は、実に多くの旅行者が集まって賑々しい。善光寺の特設ブースがあり、善光寺のいまの様子を映したモニターがあったが、凄まじい参拝者数で、もはや参道が見えない。善光寺に行くのは、やめよう。となると、ここで他にすることもないが、新しい駅ビルの土産屋を少しだけ覗くことにした。ここも凄まじい賑わいで、活気がある。別段ほしいものはなかったが、何もしないで帰るのもアレなので、小布施の栗ようかんと栗どら焼きを購入。これらは高田へと戻る電車の中で食べた。晴天の下、多くの人で賑わっている長野を抜けて新潟に入れば、なんと未だに白い霧が立ったままであった。妙高高原で再び乗り換えであるが、人の姿もなく、霧に包まれた寒々しいこの光景は、先ほどまで目にしていたものと全く違い、そういう景観的な差異も象徴的にはたらいて、二県の現勢の、あまりにも大きな格差というものを感じずにはいられなかった。


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筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

筆者結語

日常系赤面ブログ「野良犬の生活」を応援していただきありがとうございました

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