野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

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ほくほく線・ゆめぞら / 越乃Shu*Kura―花火と、酒と、ジャズと、海

 大体汽車が好きで用事があるから汽車に乗ると云うのではなく、汽車に乗る為に用事を拵えたり、時にはなんにも用事はなくてもただ汽車に乗る為に出掛けたりした。
                                                        ―内田百閒「先年の急行列車」より抜粋






 本来、旅の移動手段の一つに過ぎない鉄道は、時に旅の目的そのものとなりうる。それはただ単に、“列車に乗る”ということだけが楽しみであるのかもしれないし、あるいはどこかの路線や駅舎を気がかりにしている場合もあるだろう。
 最近に分かりやすい例が、季節を限定して走る観光列車の類だろう。これらの特別列車は外観や内装で一般の車両とは大きく違っており、車内では心尽くしのサンビスを賜ることができる。まさに、この列車に乗ること自体が旅行の目的となりうるのだ。
 私は事あるごとに、各種の観光列車に乗ることを企て、定期的に駅でパンフレットをもらって、列車の走行計画と、自身の予定とを照らし合わせたりしている。
 それは、とある用事で新潟無機終焉都市を離れ、上越市高田に滞在しているときでも同じであった。違う土地に暮らすことで、無機終焉都市にいる時とは全く違った旅程を組める機会が生まれたのだから、これは最大限に活用するのが一等である。そして私が編み出したのは、主に越乃Shu*Kuraの乗車を念頭に置いた日帰りの小旅行である。
 越乃Shu*Kuraとは、地酒王国・新潟を縦横に駆ける「酒」をコンセプトとした列車であり、私は新潟にいるうちに一回は乗りたいと思っていたのだ。ここでいう「越乃Shu*Kura」とは広義の意で、実際は上越妙高―十日町間の狭義の「越乃Shu*Kura」、上越妙高―越後湯沢間のゆざわShu*Kura、上越妙高―新潟間の柳都Shu*Kuraの三路線があり、各週末ごとに、どの路線で運行されるのかが変わるのである(ほとんどが越乃Shu*Kuraであるが)。
 今回私は、帰りの時間やその他の列車との都合から、ゆざわShu*Kuraの復路、つまり越後湯沢から上越妙高までの切符を購入した。列車が越後湯沢を発つのが午後二時半過ぎ。それまでには当駅に到着している必要があるが、この往路の越後湯沢行に、私はちょっとした工夫を加えることを決めていた。
 北越急行、通称「ほくほく線」が土休日に限って運行している、「ゆめぞら」への乗車がそれである。ゆめぞらは日本初のシアター・トレインである。トンネルに入ったときに、車内天井をスクリーンとして、コンピュータ・グラフィックスの映像が映されるのだという。この、ゆめぞらの越後湯沢行が、朝早くに直江津から出る。ゆざわShu*Kuraへの乗車を企画した理由には、ゆめぞらに乗りたいという心情も大いにあったのである。この旅程でいくと、越後湯沢での自由時間もたっぷり取ることができるので、なおさら都合がいい。

 朝イチで高田から直江津に向かい、ホームに停まっているゆめぞらに乗り換える。ゆめぞらは、シアター・トレインという珍しい形式の列車であるが、ただの快速列車としての扱いであるため、指定席券などは存在せず、したがって普通の乗車券のみで乗ることができる。このあたりは良心的であるように思われる。
 まだ早い時間であるためか、あるいはいつもそうなのか、車内が乗客でごった返すということはなかった。乗客の種類としても、私のような旅行者というよりは、なにかの必要性に従って乗り込んでいる地域住民あるいはビジネスマンといった様相の人のほうが、多く見える。
 初めて見るほくほく線の車窓も楽しみであった。各地のローカル線と同じく、こちらも森や農村の中を縫って駆けていく。そして、沿線には長短様々なトンネルが数か所造られている。短いところではやらないが、長いトンネルに入ったと思うと、突然に音楽が鳴り、天井をスクリーンに、臨場感のある映像作品が上映される。
 この作品には五種類のテーマがあり、それを月ごとに変えて上映しているのだが、今回は「花火」であった。メジャーなクラシック音楽に合わせて、天井に花火が打ち上げられていく。思ったよりも、映像には迫力がある。そして、次々と花火が打ち上げられていくので、天井が彩り豊かに色付けられ、とても綺麗だ。予想以上に完成度が高く思え、なぜかフェニックスが翼を広げているクライマックスに至っては、普通に感動してしまった。しかも、この映像は、トンネルごとに違うものになっている―つまり「花火」というテーマの中にも数種類の映像がある―ので、最後まで飽きることはない。ちなみに、編成の二車両のうち、より迫力のあるものを観たいときは前方の車両に乗ればいい。後ろの車両にも行ってみたが、たしかに映像の大きさ等では前車両に劣る。でも音楽は違っていて、軽快なルンバが流されるのだが、私としてはこちらの方が好みであったかもしれない。



 高田に戻るべく、今度は越後湯沢にて念願の越乃(ゆざわ)Shu*Kuraに乗り込んだ。外観としては、藍下黒という青みを帯びた黒の伝統色に白色を合わせたものになっていて、言ってしまえば割と地味めだが、その分凛々しさがあり、新潟の風光明媚な景色にも調和するだろう。
 越乃Shu*kuraは全席指定。今回私は、購入時にわがままを言って、海側の座席を用意してもらったが、周りに家族のグループ客がいて何かと気不味かったので、ほとんどの時間をイベントスペースで過ごした。イベントは絶えず開かれるので、そういう面でも、座席にじっとしている必要はなかったし、不意に戻ってみた時に、私の座席を含む二つがけが回転され、そのグループのボックス席ができていたのを見たら、もう座る気にはなれなかった(それでも終盤には席に戻って、そのグループの人たちに言って、席を元通りにしてもらったが)。
 乗客の姿をちらりと一瞥してみると、列車自体には興味はないけど、とにかく酒を飲みにきたグループが多いように察せられた。とはいえ、見るからに鉄道が好きそうな、近くで鼻呼吸をしたくないような層もたしかにいる。小耳に挟む限り、かなりのリピーターと思われる人もいるようである。こういう人は、「前来た時は・・・・。」などと、聞いてもいないのに自身の常連エピソードをとかく話したがるので、私はあまり好きではない。車掌さんやアテンダントさんの署名を集めている人もいて、これに至ってはただただ気持ちが悪いだけである。
 さて、先述したが、この列車のコンセプトは「酒」であり、とにかく新潟が誇る地酒を心いくまで堪能できるようになっている。旅中に提供されるサンビスのほぼすべてが酒関連と来ている。サービスカウンターには常時五種の銘柄が揃っていて、おちょこ一杯ずつで利き酒を楽しむことができる。地酒のボトルは当然として、オリジナルのおちょこのような酒飲みグッズなんかも売っているし、地元の食材にこだわったおつまみも並んでいて、全く酒飲みはたまらない列車となっているのが分かる。スゴクカタイアイスも売っているので安心していい。
 極めつけは、イベントスペースで開かれる、蔵元イベントであろう。これは新潟県各地の蔵元選りすぐりの銘柄の試飲ができるという、いかにも酒好きが悦びそうなイベントである。嬉しいことに、ひとり一杯などという制限もないので、好きなお酒を好きなだけ試飲することができるのだ。気に入ったものはすぐそばのカウンターで購入して、どうぞ、という趣向になっている。なお、このイベントは乗車中に二回開かれるが、多くの人で賑わった一回目と比べ、流石に二回目となると試飲希望の人の姿もまばらとなっていた。二回目に集まるのは、相当の酒好きばかりということになる。私も、ずっとイベントスペースにいたことから、二回目の試飲会にも立ち合い、気に入った銘柄その他を何杯もいただいてしまった。ここまで来ると、他の客も酔いが回ってくるようで、誰かれ構わず話を交わすようになるのが面白い。
 このように、越乃Shu*Kuraにはアルコオルを摂るのに打ってつけな環境が形作られているのである。沿線の田園風景や、信越本線の日本海沿いの絶景を眺めながら地酒を飲むという、なんともいなせな体験ができる。これは、酒飲みには大きな幸いである。
 列車内での催しには、ミュージシャンによるジャズ生演奏という、もう一つの目玉がある。「La Vie En Rose」「Some Day My Prince Will Come」「When You Wish Upon A Star」などのスタンダード・ナンバーが次々と演奏されるので、ジャズに明るくない私でも充分に楽しめる。列車に乗って酒を飲み、車窓を眺めながらあまつさえ良質な音楽も聴けるなんて、これ以上の至福というものがあるだろうか。ここに至っては、自分が今まで持っていた観光列車の概念も揺らいでいく。ちなみにこの日は、ギターのおっさん、ベースのおっさん、ピアノのお兄さんというメンバーであった。ギター、ベースのおっさんは、いかにもジャズメンというシックな出で立ちである。唯一若いのがピアノのお兄さんだが、二人のおっさんと普通にタメ口を聞いているのが、なんというか、タダ者じゃないような感じを受けた。彼らはアテンダントさんたちとも馴染みのようで、演奏会が終わり後片付けも済むと、カウンター周辺にたむろして四方山に転じていた。
 列車は途中で青海川駅に停まる。この駅は、日本でいちばん日本海に近い駅として知られ、歩廊に降りると目の前にすぐ日本海が視界いっぱいに広がる。日本海の素晴らしい眺望を楽しんでもらうため、青海川には二十分ほどの停車をするのだ。
列車から降りて、どこまでも広がる日本海を眺める。列車から漏れるジャズの音色の合間に、寄せては返す波の音が混じって聴こえる。そろそろ水平線に下り始め、間もなく紅に染まるであろう西日の光線がさざ波立つ水面に陰影を刻み、形があるようなないような図形を、海のずっと向こうまで描いている。旅の情緒だとか、あるいはアルコオルの効果もあったかもしれない。その光景は私の目に、とてもとても、眩しく映った。


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筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

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