野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

湯野浜温泉入湯記

 山形の鶴岡で過ごす最後の週末、加茂水族館まで出かけた際に、人気の温泉地である湯野浜温泉に立ち寄った。宿泊ができればそれに越したことはないが、先に瀬見温泉を訪れたばかりでそこまで懐具合が充分ではなかった。そもそも湯野浜はリゾート温泉地であり、ひとりでは泊まることの叶わないような高級なホテルばかりが並んでいるので、今回は日帰りにして、少し街の様子を見て、立ち寄り湯に浸かって戻るくらいの、きわめて慎ましい意気込みで行った。
 水族館からバスに乗って湯野浜に向かう。加茂港を左手に見やり、日本海沿いを北に向かってひたすら走って行くと、彼方に聳える鳥海山を借景に、海岸沿いに並ぶ大きなホテル群が見えてくる。あれが湯野浜の温泉街である。
 開湯千年の湯野浜温泉は、日本海の海岸線に沿って細長く伸びる温泉地である。海沿いに建つホテル群のふもとには県内最大規模とも言われる湯野浜海水浴場が広がっている。広い砂浜や遠浅の海は海水浴にぴったりで、マリンスポーツも楽しめることから、山形県内屈指の海岸リゾートとして、シーズンはたくさんの観光客が集まるらしい。
 まず、バスをどこで降りるかが迷いどころであった。海岸沿いの道路で降りても別によかったのだが、海水浴客がいるところに降りていくのもなんとなく気兼ねして、決めかねたままでいた。結局、バスは海沿いから街の中に入る。すると景色が一気に、あの高級ホテルの並ぶ華やかな通りとは対照的な、どこか鄙びて垢抜けない海辺の集落のそれに様変わりした。まさに、明と暗。湯野浜の街には、このような二面性がある。ちなみに私は、所謂リゾートというものがどうも性に合わないので、この街の内部のような寂れた風景の方がはるかに好みと来ている。
 少し街を歩きたくて、終点に着く前にバスを降りた。このあたりの地図は持っていないが、おそらくバスが向かった方向に湯野浜温泉の中心部があるだろうから、そちらに向かって歩いていけばいいはずと分かった。いざとなったらタブレットで確認すればいいだけである。
 例の高級ホテル群の、海を向いている方面を表とするなら、いま私が歩いている通りはそれらの裏をまっすぐ走っているということになる。ひっそりとしていて人気(ひとけ)がない。旅館以外に、古い飲食店や商店がぽつりぽつりとあるだけで、ここを見る限りでは、少しもリゾート地らしいところがない。
 ふと横を見てみると、浜の方にまで伸びる坂があったので、せっかくだからと、一寸下りてみることにした。大通りを横切って、砂浜を波打ち際まで踏み往く。湯野浜の海水浴場は海に沿って長く伸びているが、幸いにも私が下りたところは、ちょうど人っこひとりいない合間の区画であった。海岸線をもう少し歩けば、一方には海水浴の家族やグループたち、もう一方にはこんな熱い日に真ご苦労なことで、若人たちがビーチバレーに励んでいる。ところで、私はいま新潟無機終焉都市に住んでいて、私の部屋は日本海まで歩いて五分くらいという地域に所在している。海岸には今すぐにでも行ける環境にいるのだが、靴やサンダルの中に砂が入るのが嫌なので、あまり砂浜に下りる気は湧かないのである。そのために、この日は久しぶりに海の砂を踏んだ気がした。やはりサンダルに砂が入るのが嫌で、裸足で行こうと思ったが、強烈な太陽光線をたっぷり半日浴びている砂浜はものすごく熱く、結局サンダルに砂を招きながら歩いた。誰もいない海岸を、ひとりで歩く。なんだかとても空しい心持になり、程なくして、ホテルとホテルの間の路地階段から、再び内部の通りに復帰した。
 おそらくここが温泉街の中心だと思われる広場に至った。先のバスの終点もあるし、その他諸々のバスのターミナルもここにある。市街地に戻るバスもここから出るのであろう。しかし、やはりこの広場にも人の姿は見当たらず、足湯がただただ寂しげに湯を張っているのみであった。よくある「ようこそ」の看板もあるが、少しも「ようこそ」されている感じはない。観光協会の小さな事務所に寄って、この近所の地図を貰う。いつの間にか私の後ろにいた、旅行者であるようには少しも見えない薄汚い風采の男性が、協会の人に今晩の宿を問い合わせていた。このあたりの旅館やホテルはおひとり様にはやさしくないし、私の偉大な小耳に挟んだところ頼みの綱である民宿も今夜はいっぱいであるらしい。結局この薄汚い男性が、その後どうしたのかは分からない。
 戻りのバスの時間までだいぶ余裕があるので、どこかで立ち寄り湯にでも浸かっていきたいところであった。湯野浜温泉については事前に調べていたが、同温泉は日帰り客にはやさしくなく、数ある中で、立ち寄り湯を受け入れているのは旅館TとホテルMの二件くらいであった。湯野浜といえば、日本海を望む大浴場で評判のホテルが数軒あるが、今回の目星である二件はどちらも海からは少し離れて、山側に建っている。そのため眺望を楽しむことは叶わないのだが、もう温泉に入れるならどうでもよく思える。
 両者は同じ方向にあるので、奥のホテルM から手前の旅館Tというように、はしご入浴することもできそうだったが、手前の旅館Tの方で立ち寄り入浴の時間がもうすぐ終わりそうだったので、はしごの計画はやめにして、この旅館で入湯とお休憩をすることにした。
 旅館Tはこの辺りではいちばん新しい建物なんじゃないかしらん。外装は思っていたよりも近代的に洗練されている。早速フロントで日帰り入浴の希望を告げる。料金は高めである。その料金にタオル等は含まれていないので、これも売店で買う必要がある。外観と同じく、内装も清廉で落ち着きがある。大浴場に向かいながら、ロビーのラウンジの営業時間を確認すると、バスの時刻まではやっているみたいだったので、湯上りにはここでお休憩することに決めた。
 先述の通り、この旅館は山側に建てられているので日本海のオーシャン・ビューを望むことはできないが、自家源泉を引いた内湯と露天合わせて五つの湯舟があるので、温泉として普通に楽しめる。昼間から温泉に浸かる幸いは、言葉を超えた何かであると思う。お湯の温度としては高めなので、温泉は好きだが熱い湯は苦手な私はすぐに火照ってしまう。そういう時は露天の隅に設置されてあるお休憩スペースに横になる。海から吹くのだろうか、適度な風に当たるのが心地よく、身体にこもった熱もゆっくりと逃げていくのである。
 湯上りはひたすらお休憩である。中庭の水辺にウッドデッキがあったので、そこに座ってラウンジで頼んだアイスコーヒーを飲む。湯上りの身体に当たる風は、やはり快い。持参した本を読む気にもなれず、後はひたすらボーっと、池のほとりをぴょんぴょん跳ねて歩く小鳥を観察したり、上空を飛ぶとんびのピーヒョロロという鳴き声を聞いて過ごした。
 例の広場のバス・ターミナルに戻り歩く。この旅館に至るまでは上り坂だったので、必然帰りは下りとなるが、見下ろしている集落の向こうに、きらきら光る日本海が見える。ふと周りを見てみると、瓦屋根の家屋の間を縫うように小さな坂や階段が至るところで入り組んでいるのを見つけた。海沿いの集落は複雑で多層的で面白い。
 なんという偶然か、戻りの周遊バスの運転手さんは、今朝、加茂水族館に連れてきてもらった時と同じ人であった。流石に先方も驚いているようである。挨拶もほどほどに、今日一日のことを報告する。曰く、旅館Tに行くのは通であるとのことだ。その後もしばらく四方山を続けていたが、他のお客さんが乗り込んでからは黙り込んでいた。本当にこの日は一日お世話になったので、その分余計に感謝を伝えて駅に降りた。鶴岡には親しみやすくて接しやすい人が多い。この日はじめて会ったとは思えない気安さを感じるのだ。途中のスーパーマーケットでビイルを買って、ホテルに戻る。久しぶりに心から楽しめる一日であった。


CIMG0073.jpg

CIMG0063.jpg

CIMG0068_20150720103753ff6.jpg

CIMG0066_2015072010375279d.jpg

CIMG0078.jpg

CIMG0079_20150720103809fcc.jpg

CIMG0086.jpg

CIMG0081.jpg

CIMG0084.jpg

CIMG0088.jpg











にほんブログ村 大学生日記ブログ 医大生へ






この部屋からトータルへ 私たちとつながってください

  1. 2015/07/24(金) 18:40:31|
  2. 旅行記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<今、私がブログを書いている理由(500番目のレポート) | ホーム | 平沢進ライブ開催決定!―インタラかノンタラか・・・・?>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://shibakeneet.blog.fc2.com/tb.php/545-b2bd4ad9
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

筆者結語

日常系赤面ブログ「野良犬の生活」を応援していただきありがとうございました

「野良犬の生活」の物語

 はじめましての皆さんへ

長い間ありがとうございました

レポート検索

最新レポート一覧

アーカイブ

2016 04 【1】
2016 03 【4】
2016 02 【4】
2016 01 【5】
2015 12 【12】
2015 11 【10】
2015 10 【14】
2015 09 【8】
2015 08 【15】
2015 07 【14】
2015 06 【11】
2015 05 【17】
2015 04 【12】
2015 03 【12】
2015 02 【9】
2015 01 【9】
2014 12 【8】
2014 11 【13】
2014 10 【22】
2014 09 【18】
2014 08 【2】
2014 07 【14】
2014 06 【13】
2014 05 【13】
2014 04 【22】
2014 03 【17】
2014 02 【28】
2014 01 【29】
2013 12 【28】
2013 11 【28】
2013 10 【29】
2013 09 【22】
2013 08 【20】
2013 07 【30】
2013 06 【18】
2013 05 【15】
2013 04 【19】
2013 03 【3】
2013 02 【6】

カテゴリ

コメント

トラックバック

メッセージ

質問・要望どんとこいです!

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。