野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

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鳴子温泉入湯記―幼い思い出を歩く

 まだ幼い頃、少なくとも年に一回は親の運転する車に乗って、仙台に遊びに行くことがあった。そのため、道中で車窓から見える景色には馴染みがあるのだが、なかでもとりわけ子供心に印象に残っているのが、鳴子温泉の風景である。
 山道を抜けて大きなダムを横切ると、道は町に入って次第に視界が開けてくる。すると幅の広い川が現れてきて、その向こう岸に、旅館やその他大小様々の建物が段をつくるように、どこか窮屈そうに建っているのが見える。その建物の合間からは、白く大きな蒸気がもくもくと立ち込めている。これが、私が長年見慣れてきた鳴子温泉の姿であった。
 車窓から眺めるだけで、実際に鳴子温泉の通りを歩いたことはなかった。だが、ホテルや旅館がひしめき合い、どこからともなく温泉の湯気が上がっている鳴子の景色は、子供だった私の目には神秘的に映り、かつ相当に幼い頃から見ているためか、温泉といったらまずはこの景色を思い浮かべてしまうほどに、今日まで、私の心に深く根付いている。



 とある用事で山形の鶴岡に滞在していた際、とある土日を用いて、陸羽東線の沿線を旅することがあった。瀬見温泉の訪問を第一の目的としていたが、この機会に、鳴子温泉にも立ち寄ることができるような旅程を組んだ。鳴子の温泉街を遠くから見つめて二十年超、ついにその内部を訪問することができる。
 間もなく正午となる時分に、鳴子温泉駅に降り立った。ちょうど、土日に走る観光列車が停まっていて、歩廊には多くの旅行者や鳴子の住人、さらには当地のマスコット・キャラクター「なる子ちゃん」なども集まって賑わっている。観光列車というのは、それが走ること自体が一つの祭りとなるのである。この列車には、翌日に乗る計画であった。
 観光案内所で地図をもらい、駅前の広場に出る。いきなり上り坂や階段が目に入るが、それらを上ることで温泉街の主要な通りに入ることができる。遠くから見た鳴子の、建物が段々になっているのは、こういう地形からきているらしい。鳴子は坂の温泉街である。
 街を歩く。印象に残っているように、通りや旅館の足元など、そこらじゅうで温泉が湯気を立てている。いま、自分は、自分の思い出にある街の中を歩いていることを、たしかに感じられた。
 途中の文具店で「なる子ちゃんタオル」を求め、この街のシンボルともいえる共同浴場・滝の湯へ足を伸ばす。入浴料を払って男湯ののれんをくぐると、いきなり浴場が目に飛び込んできて意表を突かれた。ただ視界に入っていなかったというだけで、小さな脱衣場は左に顔を向けたところにあるが、浴場と脱衣所は戸などで遮蔽されておらず、空間を同じくしているので、脱衣所も等しく温泉の熱気で満ちている。
 風呂場は総ヒバ造り。材木に湯垢のようなものがついているのは、共同湯の歴史を物語っているのだろう。手前に大、奥に小の湯舟があり、白濁調の温泉をなみなみと張っている。そこに、浴場の外から窓をぶち破って入り、そのまま頭上を走るヒバ製の水路、いや、“湯路”から落ちるように、源泉が継ぎ足されていく。
 ひとしきり身体の汗を流して、手前の湯船に足を入れるが、こちらはかなり熱めで、この温度に慣れるのには時間がかかる。時間をかけて全身を浸かっても我慢ができず、すぐに温泉から上がってしまう。湯舟のへりに胡坐をかいてしばらく休んでも、その熱は簡単には逃げることはない。
 それと比べると、奥の小さな湯舟は温めに感じる(実際には「温い」とは言えないような温度なのだが)。温泉は好きだが、あまり熱いお湯は得意ではない私は、主にこちらに浸かっていることの方が多くなった。やっと無理なく、ゆっくりと湯に浸かることができたように感じる。“湯路”から源泉が落ちてくるが、それがちょうど打たせ湯のような格好になっているので、少し手を当ててみると、かなり熱くて、身体に打たせるのは少し酷なように思われた。私にはそのような趣味はない。
 それにしても、やっぱり温泉はいい。近頃はホテル暮らしで毎日シャワーで済ましていたから、なおさらそう感じられる。鳴子のシンボル、地域の住民も集う昔ながらの共同浴場。この街に、そして旅行者に愛される温泉に浸かってみると、日々の“凝り”や旅中の緊張がゆっくりと解けていくようだった。
 滝の湯というのは、すぐそばに建つ温泉神社の御神湯であるという。温泉神社には、湯上りに参詣してみる。滝の湯の後ろから続く参道を歩いていくが、湯上りの火照った身体で急な階段を上ってみると、再び汗が滲んできて、入浴した意味がないような、無性に損をしたような気持ちを覚えた。それでいて、神社は取り立てて目を見張るところがない。
 お昼の御膳にそばを摂り、次の列車の時間までは通りの喫茶店に落ち着いた。幼い頃から、久しく意識下にあった鳴子温泉は、おそらく私の家族にも多少は特別な場所ではないだろうか。この度は立ち寄っただけであるが、次は泊まりで、家族を連れて訪ねたいと思った。


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筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

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