野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

左沢線莫迦列車

  どん臭い少女
 山形の鶴岡にいたとき、陸羽東線沿線に泊まりがけの旅行に出かけた。瀬見温泉に投宿し、鳴子温泉から新庄間の観光列車に乗ったあとに、大した用事は残っていなかった。新庄からすぐに鶴岡に戻ってもよかったが、時間に余裕があったので、奥羽本線で山形に向かい、今まで乗ったことのない左沢線に乗り換えることにした。この左沢線の周辺に用事はないが、ただその路線を乗り潰したいということで一つ用事ができた。
 最初に乗る列車の発車まで時間があったので、新庄駅前の通りに昼食を求めに出た。新庄駅を使うことはあっても、外の街に繰り出すことは今までなかった。思ったよりも小奇麗に整えられているが、興味を引くものは何一つない。今は食堂さえあればいいのだが、数軒あって安心を覚える。今度はどの店に入るのかが懸案となるが、いちばん古くて薄汚い食堂に入ることにした。
 店内の様子は表からは分からなかったが、のれんを潜って戸を開いてみると、予想以上に多くの客でごった返していて意表を突かれた。私は小さなテーブルにひとりで落ち着きたかったが、こんな状況であったため、店の中央の巨大な食卓の一席に案内された。壁に貼られたメニュウには様々な品があったが、珍しい気分で牛丼を注文した。それからちょっとして水がきた。
 待っている間にすることがないので、店員さんの様子を見て過ごそうと思った。厨房の中は見えないので仕方がないとして、給仕をしているのは二人の少女。年頃としては高校生くらいである。休日だから高校生がアルバイトをしていても不思議ではない。ひとりは働いてだいぶ経つような落ち着きがあったが、もうひとりの方がこの店にきて間もないといった頼りない顔つきをしている。仕事も覚えていない段階なのだろうか、注文を取るにしろ料理を運ぶにしろ、何から何まで先輩の指示がないと動けない。だが、先輩の指示があっても、どう見てもまともに動けてはいない。どこに注文を聞きに行けばいいのか、あるいは誰が注文した料理なのか分からず、途方に暮れるように店内をうろうろしている。見ていると段々と心配になってくる。私の方が上手く回せるような気もしてくる。
 これによって給仕は実質ひとりしかいないも同然なので、お昼時の店内は混雑というよりはもはや混沌としてきた。新しく入った客に水も運ばれず、勘定を待つ人の列もでき始めた。私は『早くあそこの席にお冷を持って行かないと。』『その料理は向こうの席だよ。』などと、胸の中で指示をしていたが、胸の中で言っても伝わるはずがない。またしてもお盆を持ってうろうろしていた後輩ちゃんは、先輩とぶつかってお汁を盛大にこぼしてしまう。漫画に描いたようなどん臭さである。お汁がこぼれたお盆の上に牛丼が乗っているのが見えたので、私は自分の注文品だと分かったが、これからあちらがどうするか気になったので、わざと気づいていないようなふりをした。先輩が私の席の間近で、わざわざこちらに手を向けて「これはこちらのお客さん。」と後輩ちゃんに指示を出したが、こんなに間近にいるのだし、そんな遠回りな方法を取らないで直接渡してくれてもいいと思ったが、私も後輩ちゃんの教育のことを思えば、それくらいの協力はしてもいい気でいた。しかし肝腎の後輩ちゃんは、その指示が耳に入っても、私のことを見ることもしなかったのでその内容は頭に入らなかったらしく、すぐそばに座る私の横を通り過ぎ、向こうの方に行ってしまった。面白いので、もう少し観察を続ける。そもそも、そんな向こうの方に行かせるのに、先輩が「こちらのお客さん」という指示を出すわけがない。例によってお盆を手に持ち、きょろきょろ見回し途方に暮れている。これから事がどう運ぶか気になってはいたが、流石に私も腹が減っていたので、後輩ちゃんが再びこちらに歩いてきたところを見計らい、『牛丼、こっちですよ。』と呼び込んだ。お汁がこぼれた後の処理や、後輩ちゃんの店内徘徊を経ているので牛丼はすっかり冷めていたが、味としては悪くない。お盆や丼の持ち底にはお汁こぼれた痕跡が残っていた。
 巨大な食卓の、私の斜向かいに座って麺類を「熱い、熱い。」といいながら食べていた、チェックシャツでメガネの理工系男が、勘定の列ができているのを見かねて「急いでいるので、ここに代金置いていきます!」と言って、本当にテーブルにお金を置いて出て行った。もうひとり、別の男もその方法で店を後にしていた。新幹線の時間が迫っていたのだろう。会計は先輩しかできない仕事なので、回転が悪く、勘定を待つ人の列ができてしまう。私は急いでなかったので、列が解消されて、先輩ちゃんが手の空いていそうなときに会計に立った。

  左沢線
 新庄駅から奥羽本線で山形に向かう。ここの路線は度々通っているので、窓外に目新しいものはない。この路線では毎回のように野生のキジの姿を見つけるのだが、この度も田んぼに雌の一羽が認められた。沿線の東根にはちょっとしたゆかりがある。ここには、よくハンドボールの大会の会場となる体育館があり、私は小学生のときから高校の時代まで、度々この町を訪れているのだ。いつも東根温泉に泊まるのだが、空き時間に戦友たちと窯焼きのピザを買いに行った思い出などがある。男湯から女湯がいともたやすく覗けるホテルがあったが、あれは今も健在なのかがものすごく気になっている。
 途中の遅れで、乗り換えの時間が短くなったので、山形駅の歩廊に降り、そのまま左沢線ホームに走り、ライトブルーのフルーツライナーに乗り込んだ。座席は対面式になっていて車窓が見づらいので、先頭車両に行こうと思ったが、全面の窓が小さくてこちらに立っても何も見えない。仕方がなく、後部車両の連結部付近に立ち、脇の小窓から景色が流れるのを見ていた。
 左沢線は山形と左沢を結んでいて、終点の左沢で線路が途切れる盲腸線である。他の路線と接続しているならともかく、こういう盲腸路線は乗りづらい。往路と復路が全く同じというのも何となく面白くない。だが、乗りづらくても面白くなくても、乗ったことのない路線には乗りたくなる。
 列車は山形を滑り始め、住宅地を横切ると次第に窓外の建物の数が減っていき、景色はいずれ一面の田んぼとなる。先ほどはキジを見たが、この左沢線では草むらに潜むテンを見つけた。もしかしたらタヌキだったかもしれないが、あのスレンダーな体躯はテンである。列車が走るすぐそばに野生の動物がいる光景は、なんだか不思議だが一興でもある。
 全区間を通じて目を見張るような景観はなく、平凡な町と平凡な田畑があるばかりである。強いていうなら、終点左沢に著く直前に電車が山を上って、その小高い地点から集落を見下ろすようなのはよかった。時おり山や林に窓を遮られる合間にちらと見えた川とそれに架かる鉄橋が気になったが、いいところで山林に隠されてじっくり見ることができない。一種のサブリミナル効果だろうか、一瞬だけ見えたものの方が記憶に残ることがよくある。
 終点左沢駅に到著したが、前にもいったとおり用事はない。駅の裏にある公園から望む景色は見事だと聞いていたが、その公園は工事中で立ち入りできないということも聞いていたので、やっぱりこの土地での目的はない。一旦駅を出て、駅舎の外観を見、記念スタンプを押し、すぐ山形に引き返す列車に乗り込んだ。復路も連結部に頑張ろうかと思ったが、往路は立ちっぱなしで疲れたし、景色も変わらないのでおとなしく正規の座席に掛けた。

  余裕と焦燥のジレンマ
 山形に著いた時点で夕食にちょうどよかったので、次の列車の発車までに何か食べておきたかった。何度か利用している駅ビルの食堂に行ったが、店の前に出ているメニュウを見ても気分に合うものがないので見送った。結局、駅構内中央コンコースの、とある牧場が経営しているトンカツ屋に入った。
 牧場が営むトンカツ屋だというのに、店には落ち着いていて高級なムードが漂っている。色色なメニュウがあったが、定番といえるロースカツ定食を頼んだ。麦酒も頼んで、食前に飲んだ。一日動き回ったあとに飲む麦酒はいい。
 隣のテーブルは予約席ということになっていたが、しばらくして男女の組がやってきて、予め注文していたと思われる鍋物を食べていた。鍋料理がおいしそうだったのでそれも気になっていたが、むしろこういう一般的な男女のカップルがどんな会話をするのかが興味があった。悪趣味にも盗み聞きをしてみると、なんとも当たり障りのない話をしている。平凡なやり取りには違いないが、いまの私にはこういう会話すらできる自信がない。
 美人の店員さんが「ゴマを磨ってお召し上がりください。」といって、定食がくる前に白ゴマの入ったすり鉢とすりこぎを持ってきた。トンカツをゴマと一緒に食べる習慣はないが、美人の店員さんがいうので試してみることにしたが、目の前に料理も何もないのに、ただゴリゴリとゴマを磨っているのが、なんだか自分が奇天烈なことをしているように思えて、なんとも気恥かしかった。
 それまで列車の発車まで余裕があるように思っていたが、ふと時計を見てみると、実は余裕がないように思えてきた。なんとなく気が焦って、料理が運ばれてくるのを待っている間に、何分までに食べ終えて何分にはホームに行く等の計画を立てていたが、そういう時に限って、料理が運ばれてくるのが遅く感じるのである。だが、実際は全く何ともない時間で定食はつつがなく運ばれてきた。ここまでくると、間に合わないことはないと分かったが、それでも気を緩めることができず、少しせかせかした食事をしてしまった。実際、あまりのんびりとしていたら本当に列車に間に合わなくなるので、少しは急ぐ気持ちでいた方がいいのである。だが私は急いで食べると、食べ物が食道に詰まることがよくあるので、それを防ぐうえで適当な節度も有たねばならず、そうしたジレンマの中で夕食を摂った。牧場自慢の豚肉で作るトンカツはおいしかった。食前に磨っておいたゴマはソースの中に投入して食べた。
 この日のうちに鶴岡に戻るために、まずは奥羽本線を新庄に引き返す。山形県の男子中高生はどこかで何かを間違えているようなイモい私服と髪形をしている。かたや女の子は整った顔立ちで、白くて滑らかな肌や長くて綺麗な髪をしているので、男共とは全く釣り合わないように思えた。だがそれは「秋田美人」を擁する我が郷里でも同じような気もするので、そういうことをあまり大きな声でいうのはやめる。










にほんブログ村 大学生日記ブログ 医大生へ






この部屋からトータルへ 私たちとつながってください

  1. 2015/08/28(金) 13:44:30|
  2. 旅行記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<8月32日へ | ホーム | 俺のマッチング>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://shibakeneet.blog.fc2.com/tb.php/561-05104268
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

筆者結語

日常系赤面ブログ「野良犬の生活」を応援していただきありがとうございました

「野良犬の生活」の物語

 はじめましての皆さんへ

長い間ありがとうございました

レポート検索

最新レポート一覧

アーカイブ

2016 04 【1】
2016 03 【4】
2016 02 【4】
2016 01 【5】
2015 12 【12】
2015 11 【10】
2015 10 【14】
2015 09 【8】
2015 08 【15】
2015 07 【14】
2015 06 【11】
2015 05 【17】
2015 04 【12】
2015 03 【12】
2015 02 【9】
2015 01 【9】
2014 12 【8】
2014 11 【13】
2014 10 【22】
2014 09 【18】
2014 08 【2】
2014 07 【14】
2014 06 【13】
2014 05 【13】
2014 04 【22】
2014 03 【17】
2014 02 【28】
2014 01 【29】
2013 12 【28】
2013 11 【28】
2013 10 【29】
2013 09 【22】
2013 08 【20】
2013 07 【30】
2013 06 【18】
2013 05 【15】
2013 04 【19】
2013 03 【3】
2013 02 【6】

カテゴリ

コメント

トラックバック

メッセージ

質問・要望どんとこいです!

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。