野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告

只見線莫迦列車 二 寺泊駅

 他県の知り合いや田舎の親戚などで、私が新潟に住んでいることを知っていると、話題として新潟のどこそこに行ったということをしばしば投げられるのだが、その「どこそこ」として案外とよく名前が挙がるのが、寺泊である。長岡市の海沿いにできた地域で、港の近くには鮮魚市場が集まった通りがある。確かに見どころの少ない新潟の中ではそこそこ観光に面白いところであるのは間違いない。私も数年前に級友と訪れたが、市場で買った鯖焼きを食べ、海鮮丼を食べ、果ては水族館に行ったりと、それなりに楽しく遊べた。
 さて、その寺泊の玄関口がこの寺泊駅となるのだが、先に述べたような市場だの水族館だの、多くの人が思う「寺泊」は駅から車で十分というように、結構離れている。だからこの駅で降りても、観光とは縁もなさそうな、ただ牧歌的な町がそこにあるだけである。これはちょうど、秋田県男鹿線の男鹿駅と観光地「男鹿」の関係と似ている。いずれにせよ、ここで一時間ほど待たなくてはいけない。
 寺泊駅について調べてみると、ここには長岡鉄道大河津駅の旧跡が遺されていることを知った。私は廃線のマニアではないが、せっかくなのでかつて駅があった痕跡を探して時間を過ごすことにした。
 駅舎を出て、昔のプラットホームを探してみるが、左右の砂利道をそれぞれ見に行っても、それらしきものはどこにもない。そう遠くないところにあると踏んでいたが、どうにも見つけられない。目に入るのは、秋桜が咲いているのや、柵越しに停車している列車や現行の線路ばかりである。
 もともと廃線にこだわりはないといえ、このまま投げだしてしまっては自分がここに来た甲斐がなくなるようで、どうにも面白くない。たとえば駅舎内に関連の展示や簡単な案内があればよかったのだが、そういうものは何一つない。そうでなくても、待合に長椅子数列と申し訳程度の観光案内しか置かれていないというのは、一般的な駅の基準からして、あまりにも寂しい。
 駅スタンプを押すついでに、もういっそのこと駅員に尋ねてみることにした。
「そういえば、ここに昔の駅のホームがあると聞いたのですが」
「あります」
「それはどこに」
「うん、いま電車が停まってるからなあ。見えるかな」
と駅員は歩廊の方向を窺っている。
 私は今まで駅の外を探していたが、この様子だと、旧跡は歩廊から見えるところにあったらしい。これでは、いくら外を探しても見つからないわけである。
 駅員は室を出て、ひとり歩廊を進んでいく。何も言われなかったが、これは付いていくべきだろうと思い、そのようにする。程なく、我々は歩廊の端の端に至った。駅員が、線路を隔てた向こうのホームの方を指して、
「ほら、あそこの石垣のところで、斜めになってるのがあるでしょ」
「ん。どれです」
「ほら、あの黒い石垣が一個二個ときて、次に斜めになってるでしょ」
「え」
「向こうのホームの、石垣がね。ほら、斜めになってますね」
「いや、ちょっと」
「それがね、前は向こうのホームに行くのに、線路を渡っていたものですから、その時の名残りなんです」
「あ。そんな感じだったんですね」
「斜めになってるところがね。ちょうど改札を出て、すぐ真ん前から線路の上を歩いて向こうに渡ってました。もともとよく使うホームは向こうのだったものですから。今もそうだけど」
「成程」
「で、その向こうに鉄柵があるでしょ」
「ありますね」
「そこにあるのが今の越後交通、昔で言うところの長岡鉄道。そのホームの跡ですね。いわゆる、チンチン電車で」
と、場が昔のチンチン電車の話題になったところで、私にはまだ斜めのところということからして判然としていない。何度も説明させて煩わすのは申し訳ないから、この場面は適当に知ったかぶっておくことにしていたが、どこをして斜めのところなのか一向に分からない。だが、駅員の説明も落ち着いてきた頃に、何気なく向こうのホームを見てみると、ついにそれらしきものを認め、パズルの最後の一片をはめこんだような思いをした。私は向こうのホームの上のあたりばかりを見ていたが、駅員が石垣と表現していたものはホームの土台、その側面に付着しているものだった。たしかに、それが連なって連なって、途中で地面に向かって斜めに下っているところがある。おそらく、これが斜めのところなのだろう。
 駅員から色々と話を聞かせてもらった。しかし、まだ待ち時間は残されているので、あとは素直に待合で過ごす。これからの調整をしてみたり、屋内にまぎれこんだとんぼを観察したりしていたが、時おり他の利用者も来るので、無関心を装って気にかけてもみていた。
「あれ、今日学校なの」
「いや、学校じゃないけど、○○○(一度では聞き取れないほどに聞き慣れない横文字)ってイベントがあって」
「へえ。学校なんてなさそうなのに新潟に行くなんて言うから」
と、駅員との顔馴染みらしい若い女性もいた。それだけでなく、片田舎の静かな駅に似つかわしくないほどのおめかしをして、行き先は新潟という若い女性がやけにいた。私はさっき、その新潟から来たばかりであるが、この日はそういう催事でも開かれるのだろうか。そうであっても私にはまるで関係がない。
 手持無沙汰に駅内の時刻表を見てみる。次に私が乗る列車、八時五十四分発柏崎行は、土台に石垣が貼られた向こうのホームに停まる。待合にいても仕方がない。歩廊で待っている方が旅の気分に浸れるだろう。駅員に声をかけ、改札の内に入る。かつては線路に下りて向こうの岸に渡っていたという駅員の話であったが、今は高架ができていて、天を渡るような仕組みになっている。小さな窓が等間隔に貼られている高架の通路は、やけに薄暗く、閉塞的である。
 この頃になると空はからっと晴れて、日差しも強く差し込むようになってきた。朝の慌ただしい時間を経て、いよいよお天道様も本腰を入れて活動を始めたといったところか。だが、晴れてくれればそれに越したことはないとはいえ、かといってここまで日差しが強くなってしまうと、それはそれで嫌な感じがする。
 鉄柵の向こうに目をやれば、かつての長岡鉄道大河津駅のホームの残骸が遺されているのが見える。草木が鬱蒼と生い茂っており、中には大地から歩廊を突き破って伸びているような木々もある。一時は人の足として活用されていたものだが、今の緑々した姿は完全に人の手を離れた自然物である。
 待合室で佇んでいる。出入り口の壁にかまきりがいて、久しぶりな感じがした。要所要所で小さなくもや虫などが動いている室の内壁には、伝統的な相合傘の落書きが数点され、当然、その下には男女のつがいの名前が書かれてある。駅前の風景を見る限り、これといった娯楽のなさそうな片田舎の町である。ここに住む学生は、こういった方法で日々を過ごすのだろう。
 間もなく電車がくる。愛用の軍用のリュックサックを背負って歩廊に出る。リュックには、とある事情で持参した酒の瓶やら何やらが入っているために、いつもより少し重い。










にほんブログ村 大学生日記ブログ 医大生へ






この部屋からトータルへ 私たちとつながってください

  1. 2015/09/26(土) 10:40:35|
  2. 旅行記
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<早戸温泉(近況報告4) | ホーム | 只見線莫迦列車 一 不安しかない>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://shibakeneet.blog.fc2.com/tb.php/576-91f91344
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

筆者結語

日常系赤面ブログ「野良犬の生活」を応援していただきありがとうございました

「野良犬の生活」の物語

 はじめましての皆さんへ

長い間ありがとうございました

レポート検索

最新レポート一覧

アーカイブ

2016 04 【1】
2016 03 【4】
2016 02 【4】
2016 01 【5】
2015 12 【12】
2015 11 【10】
2015 10 【14】
2015 09 【8】
2015 08 【15】
2015 07 【14】
2015 06 【11】
2015 05 【17】
2015 04 【12】
2015 03 【12】
2015 02 【9】
2015 01 【9】
2014 12 【8】
2014 11 【13】
2014 10 【22】
2014 09 【18】
2014 08 【2】
2014 07 【14】
2014 06 【13】
2014 05 【13】
2014 04 【22】
2014 03 【17】
2014 02 【28】
2014 01 【29】
2013 12 【28】
2013 11 【28】
2013 10 【29】
2013 09 【22】
2013 08 【20】
2013 07 【30】
2013 06 【18】
2013 05 【15】
2013 04 【19】
2013 03 【3】
2013 02 【6】

カテゴリ

コメント

トラックバック

メッセージ

質問・要望どんとこいです!

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。