野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

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只見線莫迦列車 三 柏崎駅

 私を乗せた列車が線路を滑りだした。車内の座席は対面式の長椅子となっている。私は窓外の景色が流れていくのをただぼんやりと眺めているのが好きなので、長椅子形式は景色が見づらくてあまり好きではない。
 越後線は、線路図だと新潟県の日本海側を沿って伸びているように思えるが、実際は山間をひたすら走っている。沿線に目を惹くものはない。途中に出雲崎という駅がある。出雲崎は私がかねてから関心のあった町で、この旅行でも最初は出雲崎に立ち寄るような計画を立てるつもりが、私が思い浮かべる「出雲崎」は、駅から歩いて四十分という場所に立地しているので、只見線での余裕を優先して諦めた。
 結局、海は少しでも姿を現すことなく、九時四十七分、列車は終点柏崎駅に到著した。次は信越本線に乗って宮内に行くのだが、その列車は柏崎を十一時三十九分に発つ。ここに充分すぎるほどの待ち時間を得た。
 駅舎を出てみれば、外は思ったよりも雨足が強くなっている。柏崎に大した用事はなく、強いていうなら早めの昼食を摂るくらいだったので、御膳にちょうどいい時間になるまで、待合で過ごしてもよかったが、ひとまず御不浄によって用を足して出てみると、雨は止んでいたので、ちょっと通りに出てみる。
 駅前は、よくある屋根付きの商店街になっていて、天候を気にせず気軽に歩ける。柏崎駅前のいいところは、くだらぬチェーン店がなく、食堂にしろ喫茶店にしろ、個人でやっているような店がとても多いという点である。少し格式の高そうな、歴史ありげな菓子屋があり、「明治饅頭」というものを推している。見過ごしてそのまま歩いてみると、別の店でも「明治饅頭」を推していて、どうやらこのあたりの名物であるらしかった。いい頃合いで引き返して、最初に見かけた格式高そうな菓子屋に入った。ちょうど小腹が空いていたこともある。
 同時に入った観光者風の男性が、何やら急いでいるようにせかせかと明治饅頭の箱を買っていった。やはり名物に間違いなさそうだが、私には余裕があるので急いで求めたりはしない。たとえ時間がないとしても、あからさまに急いでいる雰囲気を出すことはしないのだが、それはともかくとして、明治饅頭以外にも和菓子から洋菓子まで色々と揃っていたので、しばらく店内を見て回る。明治饅頭一つと、季節品のさつまいも饅頭一つ、そして当地のマスコットキャラクターを模したクッキーを購入。店内にテーブルがあったが、飲食をするためのものという感じはしなかったので、ためしにあそこで食べていってもいいですかと聞いたら、別に御自由にどうぞ、と笑われた。明治饅頭はいわゆる薄皮饅頭というものだろうか。たっぷりの白餡が薄皮に包まれているが、思ったよりも固くて噛み応えがある。さつまいもの方もまた然りである。最後に食べたクッキーが軽い甘さがあって一等食べやすかった。
 一端、駅に戻る。とある事情で翌朝の食事を手に入れておきたかったので、売店で求めた。それからは待合に落ち着いていようと思ったが、どうやらそろそろ柏崎に越乃Shu*Kuraが到着するらしいので、歩廊に入場して出迎えた。この特別列車はここから宮内の方向に走るので、いま思えばこれに乗るということもできたわけである。
 そろそろ昼食を摂ってもいい頃と思って外に出てみると、間の悪いことに再び雨が降り出してしまっている。先ほどのこともあるから、また自分が御不浄に寄って出てみれば止んでいるかもと思ってやってみるが、そんな神通力が私にあるわけがなかった。折りたたみ傘を出して歩いていくが、風があるために傘を差すだけではどうしても防げぬ暴露があり、雨は横から降っているのではないかとも思われた。
 食事は駅近くのホテルの食堂で摂るつもりでいた。この食堂には数年前に級友と立ち寄り、当地名物の鯛茶漬けを食べた縁がある。この度も鯛茶漬けが食べたかった。
「こんにちは」
「あ、すいません、店は十一時からなんですよ」
―ただいまの時刻、午前十時五十九分。
「そうですか。じゃあ少しだけ待たせて下さい」
「はい、ではホテルのロビーへどうぞ」
などと言われたのでその通りにしたが、私が店を出て一分も経たないうちに、食堂は開店となった。あの一分足らずの間に、何か、お客には見せられないような儀式でも行われていたのだろうか。
 隅っこの席に座り、お品書きをちらと見てみるが、私は最初から鯛茶漬けを食べる気でいたから、その行為は形だけのものである。同じ鯛茶漬けでも、安いものと高いものがあるが、私は高い方を頼んだ。列車の時間まで四十分ほどあるが、なんとなく発車に間に合わないような気がして、待っている間もそわそわとしていたが、幸いなことに料理はすぐに運ばれてきた。だが、一度そわそわしてしまうと、しばらくその心境が続いてしまうので、最後までそわそわせかせかと落ち着かずに食事をしてしまったことはもったいない。
 鯛茶漬けは鯛を焼いてほぐしたものの他に、焼き鮭、いくら、岩海苔、しんじょうのようなものなどが乗っていて、ごちゃごちゃして見た目は汚いが、いかにもおいしそうだ。それに温かなお茶を注ぎ、わさびを溶かしていただくのである。しかし私は必ずしも空腹を覚えているわけではなかった。時間もまだ早いし、先程には饅頭二つとクッキー一枚を平らげている。中でもさつまいもの饅頭、あれは効いた。そういうわけで、砂を噛むようなといえば行き過ぎだが、せっかくの鯛茶漬けを少し無理をして食べることになった。他のお客はどこも集団で、ヤイヤイと言葉を交わしている。その中で、店の端でひとりで無理無理と食事を進める自分がみじめに思われた。
 店を出ると雨は小降りになっていた。傘を差すほどではないさらさらとした雨で、まるで霧が上から落ちてきているようにも見えた。
 十一時三十九分、信越本線長岡行の列車が動き出した。途中、何の変哲もない農村の合間を駆けていくが、灰色の曇り空の下に薄い霞もかかっていて、妙に神妙としていて、どこぞの辺境の土地かと見まがう。長岡が近づくにつれて窓からは平凡な住宅地ばかりが認められるようになる。
 長岡の一つ手前、宮内で下車をする。無駄に大きく、それでいて中身は何にも詰まっていない、燕三条のような駅である。宮内は上越線の乗り換え駅である。私もこの用途で降り立ったのであるが、空き時間に周辺の案内を見てみると、いろいろな商家の住宅なども残っていたり、鏝絵が有名だったりして、思ったよりもこの町自体からして面白そうだった。
 次の列車を歩廊の長椅子に座って待っている。急に雨が激しくなったと思ったら、数秒後にはすっかりと日差しが覗いてくる。あまりにも不安定な天候に、不安よりも薄気味の悪さを覚えた。十三時八分、上越線越後湯沢行の列車に乗り込む。上越線などと、いかにも田舎じみた路線名であるが、車内には学生や会社員風の人たちの姿も多く、案外と混みあっている。私は小出を目指す。ここからついに只見線の鉄路に乗り換えることになる。










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  1. 2015/09/26(土) 20:20:05|
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筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

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