野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

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弥彦線莫迦列車 二 弥彦駅

 朝早くから出かけようと思っていたが、それほど早起きができなかったので、結局は八時五十分白山発の越後線に乗った。これは内野行なので、次の列車までだいぶ待ち時間ができてしまうが、白山駅で待っているよりも、まだ行ったことのない内野で待っていた方がまだマシと思って乗り込んだ。
 この日は平日だったが、通学・通勤ラッシュを寸でのところでかわしたようである。それでも時間の自由度の高い大学生や専門学生は沿線の各駅で見かけるのだが、それぞれに降りる学生たちの雰囲気が妙に似通っているのが面白かった。地味な学生ばかりが降りるところもあれば、程度の低そうな学生ばかりが降りるところもある。類は友を呼ぶを拡大解釈するのであれば、そういう学校はそういう学生を呼ぶということであろうか。かく云う私は、古い云い方をすれば一応新潟県の最高学府に通っていることになるが、頭髪は明るい金色で、どこから見ても軽薄そのものだから、誰ひとりとしてそうは思わないだろう。
 計画時に天気予報で調べたとおりに、この日は空一面が青で染められ雲一つない所謂日本晴れで、重くなった気分を刷新するにはいい日和に思える。只見線莫迦列車で同路線に乗った時は雨が降りつ上がりつと最後までハッキリせずにヤキモキしていたが、今度はそういう心配もない。
 私は、電車や自動車に乗って車窓を眺めて過ごすのが、昔から好きだった。家族旅行の車内でも、部活動の遠征のバスの中でも、少しも眠らずに窓に流れる風景をひたすらに追い、その景色の中に立っている自分の姿を当てはめたりしていたのである。そもそも絶景として名高い車窓景もいいが、何の変哲もない住宅街や田舎の集落の方が見ていて楽しい。物干しに掛けられた洗濯物や庭の一画の小さな畑などの、実に生活的な光景を目にして、この町に暮らしたらどうかしらなどと考えてしまい、その想像に胸がトクンと高鳴る。越後線は沿線住民の生活用の路線で、目を見張る光景は一つとして有ってはいないが、最後まで人が住んでいる場所を走っているので、窓の外を眺めていれば、私にはそれほど退屈なものではないのである。
 出発からだいたい十五分位で内野に着く。初めて降りる駅で、それほど大きくはないが意想外に新しい。ここで四十分ほど待つことになるのだが、駅舎の外に出る気はあまり湧いてこなかったので、記念スタンプを手帖に押してからは待合で本を読んで過ごす。
 九時四十七分に吉田行に乗り込み、三十分位でその吉田に到著する。ここでいよいよ弥彦線に乗り換えなのだが、平日だというのにどういうわけか、大勢の乗客が弥彦行の列車へと向かっている。平日に暇のある人種といえば、私のような学生か余生を過ごす老人たちくらいなものだが、この大勢の乗り換え客は、私以外はその老人ばかりで成り立っているのだった。いま思うと、これから向かう弥彦は神社があって簡単な登山もできる、いかにも高齢者が好きそうな観光地である。弥彦といえば紅葉も評判で、地域誌や観光案内では必ずと云っていいほどに特集され、毎年多くの旅行者を集めるのだが、この日はまさに紅葉のシーズンど真ん中に当たっている。これは後から知ったのだが、恒例の菊まつりがつい先日に始まったばかりということで、老人に限らず多くの人間を引き寄せる条件を、この時の弥彦は悉く所有していた。それは、列車も混み合うわけである。
 またそれだけでなしに、幼稚園か小学校かは分からないが、その辺りの年頃の児等も、遠足か何からしく、先生の先導でヤイヤイとはしゃぎながら並んで歩いていた。そもそも歩くのが遅いくせに無秩序に広がって歩き、周囲には気を留めず突然に予測できない動きをする老人たちと、ゾロゾロと列を成して人混みの中を縫ってあるく、まだ注意力も成熟しきっていない小児たちに囲まれて、いちばん歩きにくい思いをするのは私である。私の年代よりも、子供や高齢者の挙動をこそ優先するべきだという見えざる世間の目も何かと肩身を狭くさせる。私は偏屈ではあれど決して狭量な人間ではないと思っているし、自分に実害が加わらない限り、自分より上下の世代には親切にしようという世間的な常識も有っているが、それはそうとして、自分に合った歩幅とペースで歩けないもどかしさと気持ち悪さは、思ったよりも大きなストレッサーである。
 発車を控える車両にすでに座っていた人たちも多く、それに加わるかたちで、列車の中は九割が高齢者の乗客でいっぱいになった。嗅球が受容するのは老人ホームの匂いそのものである。対面式の長椅子もそれに沿った吊革にもびっしりと人がいたため、先ほどの子供たちは、中央の空いた空間に縦に並んで立つことになってしまった。吊革や手すりなどつかまるものが何もない中で立っていれば、列車の揺れに耐えられないで、色々と危ないはずである。実際、列車がカーブなどをする度に、揺れてバランスを崩している。どう見ても危ないので、見かねて近くにいる児に「キミたち、電車が揺れて危ないから私につかまりなさい」と申し出てみると、舌足らずな「ありがとうございます」の言葉の後に、私の腕に二人の幼女がつかまることになった。それ以外に彼女らと話すこともないので、それからはずっと黙っていたが、金髪の青年の腕に二人の幼女がつかまっている光景は、傍から見ればさぞ風変わりなものだっただろう。ロリコンと思われたらどうしよう。
 弥彦駅に着いても、当然列車内の大勢の人が一斉に降りることになるので、そう簡単に外に出ることができない。この駅は自動改札もなく、よりによってたったひとりの駅員が切符を回収しているのだから、この事態がスムーズに収束することはまずない。
 同時に降りた人々と一緒に行動するのは嫌だったので、混雑のほとぼりが冷めるまでしばらく駅でぶらぶらとしていることに決めた。弥彦駅の外観は朱色に彩られた木造りの入母構造で、おそらく彌彦神社を意識した設計だと思うが、彌彦神社はこれほど派手ではない。簡単な土産も揃える売店もあって、新潟県屈指の観光地の玄関口らしく、それなりに大きな駅である。
 私は弥彦線に乗るのが目的だったので、別にそのまま戻ってもよかったのだが、せっかくここまで来たのだし、時間もあるからそれらしい所には行くことにした。ふと駅に貼られた横断幕に目をやると、「彌彦神社御遷座百年」と書いてある。由緒はよく分からないが、いずれにせよ今年は記念すべき年であるらしかった。加えて紅葉と菊まつりもあるのだから、あれだけ混むのにも頷ける。

  1. 2015/11/11(水) 19:00:00|
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筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

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