野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

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平成二十七年度 松竹大歌舞伎 新潟公演感想記

 いきなりのことで恐縮だが、まずは今回のtake home messageを提示しようと思う。

 「公演中は前かがみにならずに、きちんと座席の背もたれに掛けて鑑賞すること」

 これは意外と知られていないが、是非とも知っておいてほしい事実である。劇場で身を乗り出すような姿勢をとると、後ろの席の人は舞台がかなり見えづらくなってしまう。この時に困るのは、真後ろの席の人ではなく、どちらかというと斜め後ろの席の人。これは、身長がそれほど高くない人がやってもそうなってしまう。
 舞台から近すぎたりすると流石に難しいが、基本的にはどの劇場のどの席でも、角度の緩急はあれど、ステージの全景が視界に収まるようになっている。しかし、前方に座る人が前かがみになるだけで、その人の頭部が視界に入り、特に舞台の横の部分の結構な面積が見えなくなってしまう。前かがみは日常的には何気ない姿勢であるが、劇場内の他の観客に対しては、多くの人が思っているよりも大きな妨害作用を有っているのである。
 東京ディズニーリゾートではショーが始まる前に、ゲストが前かがみになってショーを鑑賞しないように注意をしている(最近パークに行っていないから、今もそうなのかは分からないが)。それに馴染みがあるために、私は公演中の前かがみは芸術鑑賞におけるマナー違反だと思っているのだが、しかし、これについてきちんとアナウンスしている団体はまだまだ少ない。公演中の飲食や写真撮影などの分かりやすいマナー違反と違って、前かがみは人が普段からよくする姿勢だし、何もそんなに厳しく注意される筋合いはないというのがおそらく大多数の一般人の意見だろうが、その行為が極端かどうかではなく、実際にどれほどの被害を与えるのかという点こそ考慮されるべきである。前かがみは確かに日常的な姿勢とは云えるが、実質的に他の観客の鑑賞を妨害しているのだから、各団体はこれについて今後はきちんと注意喚起をするようにしていただきたく思う。
 前かがみになってもいい劇場はストリップだけなのである。



 数年前まで私は、時間があるときに派遣の日雇い労働をして小金を稼ぐことがあった。単純な肉体労働はしたくなかったので、引っ越しのスタッフなどは絶対にしないで、主にコンサートの裏方など、こちらにも多少のうま味のある労働を選んで適当に働いていたが、その中でも変わった体験として私の印象に残っているのが、歌舞伎の公演の裏方というものである。仕事に関する詳細は秘すが、ゼロから歌舞伎の舞台が出来上がる行程を手伝い、公演中も裏で控える役者の息遣いや熱気を目の当たりにしたりと、その労働を通じて、普段できないことをして、見られないものを見たのである。私にとって日雇いの底辺労働はあくまでただの労働で、給与以外に得るものは何もなかったのだが、この時ばかりは素直に良い経験をしたと思ったものである。そしてそれと同時に、今度は舞台袖からではなく観客席から歌舞伎を観たいと思った。もともと歌舞伎には興味があったが、この日の体験を契機にその思いはいっそう強くなった。
 新潟無機終焉都市では、このような歌舞伎の公演が毎年一回は催される。私はその度に鑑賞のチャンスを窺っていたのだが、公演日の都合が悪かったり、チケットを手に入れることができなかったりして、これまではことごとく機を逸していた。それが、新潟暮らし最後の年度でついに鑑賞の念願が叶うことになったのである。
 ところで私はいま学校の卒業試験期間の真っ最中である。それに、公演日は某科目の試験前日に当たっている。今までの私だったら諦めるところだったが、流石にこれだけは譲れないので、この日の夜は何も勉強しなくていいような計画を立てて臨んだのだった。

 平成二十七年度の松竹大歌舞伎は「教草吉原雀」と「魚屋宗五郎」の二つの演目で構成されている。二十分程度の「教草吉原雀」から、幕間を挟んで八十五分の「魚屋宗五郎」と、思ったよりもコンパクトな公演になっている。私は歌舞伎に興味こそあれ、基本的な知識は一切ないので、演目名を聞いてもピンとこなかったが、予め調べてみると、両方とも割とスタンダードなもので、特に「魚屋宗五郎」は人気がある演目だという。
 最初の「教草吉原雀」は長唄の舞踊。話としては、江戸の花街・吉原にやってきた鳥売りの夫婦は実は雀の精で、それを鳥刺しが見破って捕まえようとするがさあどうなる、といったもの。舞台後方の囃子方の演奏と唄に合わせて、化粧を施した役者が舞踊や見栄を披露するという、私が抱いていた歌舞伎のイメージそのものの演目だった。
 長唄の歌詞が小粋で面白いものになっていると聞いたが、実際には聴きとれずに終わった。だが、それでも物語は理解できるし、何より囃子も歌も役者の所作もかっこよかったので私はそれで満足である。私が歌舞伎に興味を持ったのは、ひょんなことから歌舞伎にかっこよさを感じたからである。何度もある衣装の早着替えも見応えがあり、最後の様変わりは思わず『おお・・・!』と唸ってしまう。派手な演出もあって、最後まで舞台に引き込まれていた。
 幕間を挟んで、今度は「魚屋宗五郎」である。これは「新皿屋敷月雨暈」という物語の一場面なのだが、今では原作を通しで演じることは稀で、この場面だけを公演するのが一般的らしい。今年度は宗五郎を尾上菊之助が演じる。おそらく多くの観客は菊之助が目当てだったのだろう。
 江戸の魚屋宗五郎の家は悲しみに暮れていた。磯辺のお屋敷に奉公に行っていた宗五郎の妹・お蔦が不義を犯して手討ちになったという知らせが入ったからだ。その時、お蔦の同僚おなぎが家を訪ねて、お蔦は無実の罪で手討ちになったという真実を家族に告げる。憤慨した宗五郎は長い間断っていた酒を飲み始め、酩酊。女房のおはまや父親の太兵衛の制止を聞かずに酒乱に暴れ、磯辺の屋敷に殴り込みに行ってしまう。屋敷でも暴れる宗五郎は当然のように取り押さえられてしまい、さあどうなるというのが、大体のお話。
 あらすじだけを読むと、割と穏やかじゃない話に聞こえるが、基本的には人情物で、とぼけたところやひょうきんなところも多いので、思ったよりも明るい物語である。というか普通に面白いので、劇場には何度も何度も笑い声が飛び交う。
 唄や舞踊の要素は少なく、お芝居的な演目である。私は、先述した「教草吉原雀」のような演目を歌舞伎のイメージとして抱いていたために、『こういう歌舞伎もあるのか』と、少し印象を変えることになった。
 見どころは何と云っても、宗五郎の酩酊と大暴れの場面だろう。酒癖が悪いことを熟知している家人たちはほどほどでやめさせようとするが、それをあれやこれやでかわして結局酒樽を飲み干してしまう宗五郎の飲みっぷりや、それからの暴れっぷりは見ていていっそ気持ちいい。大事なお客さんであるおなぎにも食ってかかる酒癖の悪さは、現実には迷惑極まりないがお芝居として見る分には面白い。見てると無性に酒が飲みたくなり、帰宅してすぐに酒を飲んでしまった。翌日に試験があるというのに。
 鮮やかな「教草吉原雀」に明るく快活な「魚屋宗五郎」と、どちらも物語が分かりやすくて目にも華やかな演目なので、私のような初心者でも十二分に楽しめる公演だった。

  1. 2015/11/20(金) 19:00:00|
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筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

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