野良犬の生活

部活もバイトもやっていない堕医学生の暮らしを記憶するレポート

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旅の途中(最終莫迦列車)



  一、郡上八幡

のどかな長良川鉄道に揺られて、ちょいと郡上八幡を訪れる
長良川支流の吉田川の走る小さな町は清流の里
日本の名水第一号の宗祇水をはじめとして
町民の生活は水の流れと近いところにあるのが印象として残った
駅員さんの話す「小さな町ですから」
ですからチャリを借りてきままに走り廻るのが気持ちいい
城登りは膝に大きなダメージをくらわすが
山頂から町を望んで飲む特産のサイダーがまたたまらない経験
行き先で触れる人々の気さくさもどこか清廉に思えて
町も食も人も、澄んだ水流に育まれているようだ
鉄道よし、駅よし、町よし、食よし、人よし・・・
前から訪れたかった郡上八幡は
今まで訪れたなかで最高の場所


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  二、飛騨高山の夜

飛騨高山だ
あたりはすっかり夜の色である
本格的な観光は翌日に回すとして
この夜は軽く酒でも飲んで休もうとした
町に出てふらふらと宿り木を探せば
あるある、よさげなお店が
とあるカジュアル・バーのカウンターに落ち着く、いちばん端の席
お兄さんお姉さんと話す流れで、人気の飛騨牛煮込みをつっつきつつ
当地の地酒を幾らか試してみる(こうなりゃどこまでも酒に肥えようではないか)
「それ、何食べてるの」―隣の旦那が口をきく
「ふきのとうとベーコンのキッシュです」
「それこそ燗じゃなきゃな。このお酒は燗にするとうまいんだよ。俺が飲ませるよ。ちょっと、この人に、燗で飲ませてやって」
こんなベタなことがあってもいいのか
いやでも、貧乏学生には心から嬉しい顛末!
なんてこともあれば、旅の気分もほぐれる
軽くどころか、普段以上に酒を摂り
ホテルに戻れば文字通り、バタンキューでこの夜を閉じたのだった


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  三、犬山明治村

時代モノの建築好きの私の聖地・博物館明治村にやってきた
広大な敷地内に大小様々の建物が立つ
驚くべきはそのすべてが明治から現代まで生き永らえてきた“本物”たちだということだ
邸宅や庁舎、教会や学校
さらには写真屋、芝居小屋、風呂屋、床屋までと幅は広い
そのどれもが“本物”
そこに路面電車やSLも走るとなれば
ここはまさしく私のHEAVEN
だがしかし、じっくり見るには一日二日では足りない・・・
閉園間際、ひとり乗車の路面列車で車掌さんと鉄道談義
新潟無機終焉都市から名古屋まではどのような交通がいいのか?
一旦、長野に出るのがいいか、新幹線を使うのがいいか
最終的に私たちが導いた結論は、飛行機を使う


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  四、大井川鐡道

少し前には抒情的なSLやアプト式鉄道の旅に浸っていたというのに
その時の私は、大井川鐡道井川線接阻峡温泉駅から
一つ隣の奥大井湖上駅を目指す自然遊歩道を、えいこらと歩いていた
奥大井湖上駅とは、名の示す通りに長島ダム貯水湖の上に建つ駅である
駅の建つ半島に架かる鉄橋は、線路脇に歩道があって自由に歩けるのだという
私がわざわざ徒歩で駅に進んでいるのは、ただその歩道を歩きたいがためである
自然遊歩道とは聞いていたが、自然要素が大きく
果てに人工物たる駅があるとは思えない
一抹の不安を感じながらもひたすら信じて歩くしかない
―キュイ!
こんなところで、キュイ!とはなんだ・・・
聞き慣れない音の方向を注視すれば
ガサガサと揺れる木の枝、うごめく影、影、影
「猿だ・・・!」
猿だった、しかも、群れでいる
そうか、自分は今、本物の獣道を歩いているのだな
猿たちの姿は見失ったが
全方位を囲む木々の上から視線を落とされているようで、歩いてもなかなか気不味い
不安もいよいよ大きく膨らんできた頃
とどめと云わんばかりの階段の連続、それを登りきれば・・・
「あ。駅」


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  五、沼津

旅の合間、沼津で久しぶりの親戚と会う
沼津は私にとって幼い思い出の残る場所
記憶を辿るように町を廻り、あれこれの四方山を交わして
共通項を一つ一つと確めていく
あの頃と見かけは変わり果てていても、胸の奥に変わらず生きるものがあるのだと知った
夜は親戚のレストランでフレンチのディナーをご馳走になる
貸切のお店に、お客は私ひとりだけ
白赤ワインを香らせて、地産の食材をふんだんに使った料理を頂く
嗚呼、なんて静かで落ち着いて、愛すべき時間だろう


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  六、東京

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級友との四国旅行とつながる気楽なひとり旅も
最後の土地・東京に舞台が移っているのだから寂しいもの
ここでしたいことは、それほどない
だからふらりと寄席を覗きに行った(好きな噺家が上がるらしい)
椅子ではなく座敷に座って聴く落語もいいもので
皆々堅苦しいところなく、気持ちよく笑いも出てくる
これが毎日やっているというのだから、この町に住む人が正直羨ましい

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シルク・ドゥ・ソレイユ「TOTEM」
自然の世界というだけならこれまでにもあったが
ここに生命や人類の進化といったテーマも加わり
珍しくサイエンティフィックなショーへと仕上がっている
主題としては難しい作品かなと思っていたが
演目、演出、音楽、衣装等のどれもが世界観をよく表現していて
一貫したストーリーはないが、最後までステージに引き込まれてしまう
演目一つ一つも作り込まれていて見応えがある
特に、マニピュレーションの魅せ方が凄まじくよかった

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故郷・秋田への新幹線で、私の旅が終わろうとしている
私の旅、というのは今回のシリーズのみを指しているが
もっと、以前から続いていたものを意図してもいいような気がしてきた
大学に入り、親元を離れた私はいつの間にか旅をするようになった
色々なものをこの眼で見たくて、あるいは今とは違った場所に行きたくて
どれもが本当に楽しい旅だった
それでも、その日々のすべてを覚えているわけではない
記憶はところどころで途切れていて
まるで、いつか見た夢であるかのようにぼんやりとしている
車窓から、白い雪が未だに積もっている集落が見える
故郷はまだまだ寒そうだ
あーあ、全部終わっちゃった
私の旅も、大学生活も―
大曲で在来線に乗り換え、乗客の口からは懐かしい訛りが聞こえてきた

  1. 2016/03/23(水) 21:00:00|
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「浪漫鉄道」を聴きながら(四国瀬戸内旅行記)



  一、京都

級友との合流前、その合間で過ごすひとりの日
その地・京都でしたいことが思い浮かばず、終日無計画に廻り
某刻、新京極の映画屋に座を据えた
「秋刀魚の味」―新潟無機終焉都市で見損ねた映画
初見の眼に映ったのは、影と鏡の像がいい働きをしているということ
だがしかし、酒を飲むシインが多く、ゴクリと喉を鳴らすことしきり
案の定、宿までの帰路にそこらの店にアルコオルを求めたのだった


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  二、瀬戸大橋

おだやかなる海の文様は、日の傾きに沿って様々な姿を見せる
刻一刻と、その形なき形を変えていく
その瀬戸内の凪に大小の島々が浮かんでいた
さらに深みをますシアンの空に走る瀬戸大橋線の灯り
一様に塗られたオレンジの夕焼けに映る造船所のシルエット
私たちの島渡りの終着、間もなく坂出、香川、そう、そこはもう四国―
橋を往け、橋を往け
ひたすら真っ直ぐ、橋を往け


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  三、讃岐

「うどん県」を自認・喧伝する讃岐国、今は香川県
その実力には正に帽を脱するしかない
私たちが二十四時間内で訪ねたうどん屋は五軒
どの店のうどんも個性が違っていて多様性にまず驚く
そしていずれでも、一口目の感動は人生観が転回するかと思われるほど
御託のあれこれはほどほどに、只ひたすらにすすり食うといい
すると、雰囲気に云わされたものでなく、心からの「うまい!」が勝手に口から出てくるのだ


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  四、祖谷渓

大歩危・小歩危の奇岩を窓に見て、蛇行した山道を上っていけば
平家の隠れ集落の説も伝わる秘境・祖谷渓に至る
あ!日没が近い
怪しげな人形が見守るパーキングに車を置いて、かけ足
日本三大奇橋に数えるかずら橋が見えてきたろう
平家の落ち人伝説に由緒を発する、かずら造りの吊り橋
滅多に体感しない橋の揺れ、傾き
植物製というなんとなくの頼りなさ、歩きづらさ
極めつけが橋床の木組みの隙間から覗く、足下を走る川、岩・・・
あまりにもよく見え、落ちたら死ぬことが酷なまでに解る
感じるのは恐怖そのもの
へっぴり腰の旅人は、蔓を手放すことなく、そろりそろりと必死に歩く
ここで、とある発見
手ぶらで歩いた方が安定するじゃないか
この証明に、もう一度歩いてみたら、やっぱりそうだ!
だがしかし、安定を手に入れたからと云って、生々しい恐怖は霧散はせず
渡りきった背中は、妙な汗でジットリと湿っていた


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  五、夜土佐

高知に着いたのは夜のことで、晩酌には都合が良い
級友たちが調べていた飲んべえ市場に入った途端
ぎっしりと卓を埋め、酒に宴に興じる人々の陽気に少しくたじろいだ
「ハロー、マイフレンド!」
胡散臭いインド料理屋の席を押さえたら、各々、肴探しの小冒険に出る
カツオは当然として、地鶏にクジラ
土佐の夜でしか嗜めないものを集めれば、鼻も膨らむというもの
迷路のような市場を歩き廻りながら、同僚と、カップルで、家族で、ひとりで
それぞれのかたちで酒飲みを楽しむ人を何度も見た
その気軽さ、純粋さ、やさしさ
嗚呼、やっぱり自分も飲んべえだ
この時間が愛おしくてたまらない・・・!


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  六、松山

友人との旅行、とはいえ隙を計って己の趣味心は満たしたいもの
高松は琴電、高知は路面電車の土佐電
集団を離れたひとりになって、その地その地の鉄道に乗っていた
さて、ここ松山にも伊予鉄道―憧れの路面電車がある
当地中心部の交通は路面電車が最も便がいい
城も温泉も繁華街も、これ
平面交差の騒々しさも、街の空を幾何学的に飾る架線も
変遷する松山の地を、変わらぬ真面目さで走り抜けた路面電車が生みだした
街並みの景色一つ一つがとにかく新鮮で新鮮で
それでいてなぜかしら、こんなにも懐かしさが滲み出るのは


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  七、下灘駅旅情

松山での一日は、おはようからおやすみまでの個人行動となった
その利が落ちてきた時から、私の念頭に浮かぶもの
松山から予讃線で約一時間揺られて降り立つ
下灘駅
小高いところから伊予灘を望む、かつての「日本一海に近い駅」
思わず降りてしまう、旅人が辿りつく場所
沈み行く太陽に呼応するように瀬戸内の波や空が色を直す
歩廊に広がる景色に、一瞬と同じものはない
さあ海面に潜らんとする頃、信じられないほどに丸く、紅く燃える火の玉があった
戻りの列車、光の粒を残した凪を車窓のフレームに当てはめて、聴いた「浪漫鉄道」
久しく失いかけていた感覚に胸が熱くなる
鉄道旅行とはこんなにも楽しいものだったのか―


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  八、広島

戦争の終わった時代に生まれたことがずっとコンプレックスだった
勿論、話しを聴く限り、あの頃のような経験はしたいとは思わない
しかし、それを経た人間はそれだけで深みのあるような、気位が高いような・・・
戦争を知らない者は、人として“足りてない”かのような
まるでそんなことを言いたげな世間の風潮
それを真に受けてしまう自らの強迫のようなもの
それらはずっと私を鈍く苦しめ続けていた
だから、いつしか避けるようになった
話すことも、考えることでさえ
そんな私の目の前に、できれば見たくなかったものが立っている
広島県産業奨励館
人々は「原爆ドーム」と呼んでいる

焦げた壁面、剥き出しの鉄骨、当時そのままに周囲に散乱している瓦礫がいやに生々しい
広々と清廉な現代の平和記念公園の内で
その一画だけが一九四五年八月六日のままでいるような違和感
その差七十年のスケールの広大さに眩暈を覚えてしまう
見ていて嫌な気持ちだ、それは絶対に払拭できないだろう
だが、どこかは知らない心の片隅、確かに芽生えた気持ちがある
―自分はこのままではいけない
単純な人間と思われても構わない
でも私は、何も知らない若造だからこそ、変わりたいと思ったのだ

今でこそ世界遺産の意味合いも変わり
かすかに残っていた崇高さは廃れて
いまその有難みを噛みしめているのは、認定されたもの周辺の観光界といったところであろう
しかし、原爆ドームは真の意味で世界遺産にふさわしいと感じた
信じられないが本当に起きた人類史上最悪の事件の証拠としての意味
だからこそこの世界に遺すべきなのだ
だが、世界にはこの遺産に学ぼうとする人はそれほどいないのかも知れない
穏やかじゃないニュースを耳にするする度に、ふとそう考えてしまう
今もこの世界には様々な摩擦が存在するのだ
偏見や狭量の誹りを恐れずに云うなら、その摩擦のほとんどに、某国が関係しているような気がしている
かつて広島に、そして長崎に、もてあそぶかのように原子爆弾を落とした大国のことである
彼ら自らが生んだ遺産なのだから、そこから多くを学ぶはずだろうが
今も彼らはどこかの国に、時々爆弾を落としているらしい
朝のニュースキャスターはあっさりと、そう云う


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  九、別れ(京都2)

およそ一週間の旅行だった
それにしても一週間程度などは一瞬の夢である
寄り道しながらも、気がつけば始まりの地・京都に戻っているのであるから
一瞬の夢であるというのは、六年間のこの生活もそうかもしれなかった
振り返ればそう思うだけのことかもしれない
だが、今の私には一瞬の夢でしかないのだ
その一瞬の夢の中で、私は日陰者なりには、たくさんの人たちと交流をしたと思っている
その人々との意思の受信送信を経て
もしかすると自分は、どこか変わっている人間であるのかもしれないという思いを得るに至った
少なくとも一般的ではないのだろう(あくまで客観的に、だが)
私の普通は彼らの異常、私の異常は彼らの普通
振り返れば、その事実をひたすらに突きつけられ続ける毎日だった気がする
辛くはないが、ただなんとなく寂しかった
だが、困っていたのは私だけではなくて、チェス盤をひっくり返して考えてみると
私の異常な行動・言動には、彼らの方でも困っていたのではないか
それでも私を突き放さずにいて、時に遊びなどしてくれた彼らには感謝を思うしかない
これから彼らと何度会うことが出来るのだろうか
もしかするともう二度と会うことはないのかもしれない
だがそれでもこの関係は、一瞬の夢となってはほしくない

  1. 2016/03/22(火) 21:00:00|
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キス・グッドナイト(アメリカ旅行記)





  一、パサデナ

 高度一万メートルに初期値を置いて
 自転の方向を腹ばいに飛行機は滑る
 馴れぬ国際線に身体はざわめき
 わずかな揺れにも心騒いで少しも眠れずにいた
 寝息も聞こえるさなか、機内チャンネルの曲名を覚えている
 「Alone in the Universe」
 一時間、二時間、・・・・・・、嗚呼、ついに九時間!
 長旅の果てに降り立ったのは二月十二日午前十一時
 私は一度、この時間を生きたことがある


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 唐突に目覚めた真夜中は、考え事をするのにちょうどよい
 出国のターミナルの景色も瞼に留まるままに
 街に出て、ピザとコーラに決め込み
 マーケットで買い物をした
 私はいまアメリカにいる
 俄かには信じがたいが・・・
 家も草木も看板も、皆アメリカの顔つきをしている
 見上げる月とオリオンだけは変わらぬ姿だが
 私の異邦人の胸はそわそわとして
 その結果として、パサデナの夜に目覚めて、この項を草している
 この時間にも、モーテル沿いの道を走る車の音は絶えない
 往きの飛行機、機内チャンネルで聴いた曲をふと思い出す
 「Alone in the Universe」


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  二、ラスベガス
 
 シルク・ドゥ・ソレイユ「O」
 水深が瞬時に変わるプールで繰り広げられるアクロバット・ショー
 世界のエンターテイメントの最高峰
 私はこの芸術作品の観劇を、一生の念願に据えていた
 それが観れる、この緊張感
 私の鑑賞眼は少しく歪んでいるのか
 念願としての期待や思い入れが先行して
 素直な感興が兆さない
 それよりも悲しかった
 自分が積み重ねてきた多くのものが終わってしまったような気がして


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 至るところにネオンのケミカルな煌き
 ここは不夜城ラスベガス
 人々の叫声尽きることなく
 隅々に配された誘惑に囲まれて歩く
 ラスベガスの夜は素敵な夜
 こんなに綺麗な夜には、ふと立ち止まってみたい
 カラフルな街の姿をずっと眺めてみたい
 しかし、私を待つものはいない
 ああ、こんなに素敵な夜なのに―


  三、ラスベガス2

 誰も寝ぬ不夜城の朝
 蠱惑の漂う夜とは一味違い
 ストリートには健康的な活気がみなぎっている
 道ばたで思い思いのパフォーマーが日銭を稼ぐ
 多くを受け入れる土壌がここにはある
 私はこの街が好きになったのだった


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 「O」と並ぶラスベガスエンターテイメントのツートップ
 シルク・ドゥ・ソレイユ「KA’」
 ショーは劇場に足を踏み入れた瞬間にはもう始まっている
 巨大なシアターと舞台装置に、まずは圧倒される
 珍しくストーリー仕立てで、その合間に演目が挟まれる
 サーカスというよりは演劇の要素が強い
 しかし、凄い、凄い、凄い!
 自在に可動、回転するステージや
 映像が連動するハイテクの数々に、思わず身を乗り出してしまう

 夜はカジノ
 私は賭けごとは嫌いだったが、行く所行く所の派手な賭場と
 そこでギャンブルに興じる人々の熱気に当てられて
 最早、勝負せずにはいられない面持ちとなった
 ディーラーとのかけひきは初めてで、緊張しながら卓につく
 ギャンブルは運頼みでなく、いかに謙虚でいられるかの勝負と見た
 ブラックジャックで五十ドル勝ち、スリーカードポーカーで六十ドル負けた
 まあ、おおむねこんなもん


  四、カナブ

 レンタカーを借りて回っていた
 アメリカのドライブは刺激的だ
 ハイウェイはどこまでも真っ直ぐに伸びているし
 見渡す限り、どこか造り物のような荒野と岩山が広がり、また連なっている
 ドキドキのロードワークにトラブルはあって然るべき
 スピード超過をコップに見つかり
 ナビが示す先は途方もない砂漠の真ん中だった
 (ここがお前たちのモーテルだよ!)


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 誰かが「普通」と云った
 グランドキャニオンの大峡谷
 私の眼には「普通」ではなかった
 断崖の下に臨むのは、地割れ、地割れ、そして地割れ・・・
 そのスケールの大きさ、広さに眼がくらむ
 谷に向かってすっと突き出た、小さな足場に立ってみる
 一つ足を滑らすと文字通り命を落とす
 安全圏に復帰して程なく
 その状況の深刻さがじわりと真に迫って
 しばらく冷や汗を滲ませていた


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  五、カナブ2
 
 ナバホの聖地へはトラックバスで行こう
 ビッグホーンシープも身動きせずにこちらを見ている
 アンテロープ・キャニオンの
 幾重にも薄く重ねられた地層が
 円形にえぐれられて岩肌はあくまで滑らか
 どこか他の惑星にいるような
 空想的な景趣を往く


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 アメリカ西部の田舎町
 カナブは静かで星が綺麗で心地好い町
 荒地の真ん中、ひっそりとしたこの町には
 もう二度とは来ないだろう
 メキシコ料理屋で食べたタコサラダがおいしい
 アメリカでは野菜を摂れる時に摂るのがいい


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  六、ラスベガス3

 心の故郷、ラスベガスに「ただいま」を
 腰に疼く下心をぶらさげて、真昼間からジェントルマン・クラブ
 ストリップは日本でも行ったことがあるし、下調べもしてきた
 本格的なポールダンスを観たかったのだ
 そう、これは俗なエロ目的ではない
 芸術としての女体を堪能したかった、その純粋な一心である
 が、ダメ!
 思っていたのと大違いで、終始ビクビク
 ポールダンス等のショーは全く行われず
 私たちはひとりに分断され、そして各自にひとりの女性があてがわれた
 よく分からないままに、あれよあれよとプライベート・ダンスへ
 よく分からないままに、あれよあれよとベンジャミン先生を見失う
 (いや、しかし外国人の豊満な身体にぱふぱふされるのは気持ちよかったし)
 (ケツも揉めたので、よかったのだが)
 すきを見て逃げるように店の外へ
 見合わせるのは完全に敗者の顔
 流れるのは典型的な賢者の時間
 愚かな賢者たちがそこに集っていた・・・


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 シルク・ドゥ・ソレイユ「ZARKANA」
 割引の当日券で用意された席は
 劇場中央の真ん中、つまりいい席!
 キャラクター、演目、コンセプトはクラシックかつゴシックながら
 音楽は痺れるロック、映像技術や舞台装置もメカニカルで、その折衷がハイセンス
 サーカスの伝統は守っていて、ラスベガスの他のショーと比べると、カジュアル
 そして素直に楽しい、素晴らしい作品


  七、アナハイム

 レンタカーの旅が終わった
 実を云うと、ドライブ旅行に不安がないわけではなかった
 それは最後まで変わらないままだった
 私は車の運転はできないが
 事故やその他のトラブルが起きるのが恐ろしく
 揺られている時はいつも、全く気が気でなかった
 それが終わった、安堵感
 一つ大きな関門を抜けた、達成感
 さあ、これからはただ、ただ、遊ぼう

 私には、意味のある行動や言動が出来ない
 複数人の中でも、私はひとりになる
 しかし、もう少し立ち止まることをしてもいいのではないか
 一体何を急いでいるのだろう、それがまず分からない


  八、アナハイム2

 アナハイムの空からさし込む日差しはとにかく強い
 ナイロンのロングコートを脱いで、チェックシャツを脱いで
 Tシャツ一枚になっても暑い
 耐えかねて、グッズショップで帽子を求めたのだった
 「タグはお取りしましょうか」
 「ええ、お願いします」
 「賢明な選択ね。今日はとても暑いものね」


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 ディズニーランド・パークは開園六十周年だ
 「ワールド・オブ・カラー」も、それを記念するバージョンになっている
 メインショーが終わって、あたりのゲストも散り散りになってからも
 水は踊り、光は色づき、音楽は奏でられる
 この瞬間に、「余韻」の二文字を押したい
 切なさと美しさの溢れて、感情がしめつけられ、自然と涙が滲む
 「グッド・ナイト」
 とウォルトが云った
 そう、今夜は本当に素敵な夜


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  九、アナハイム3

 ウォルト・ディズニーが鉄道好きだったことは、誰もが知っている
 だからディズニーランドの構想に、最初期から鉄道はあった
 そのディズニーランド鉄道は、諸事情のために運行をしていなかった
 走る姿を見れない、かつ乗れないのは残念だったが
 そのおかげで駅に停車した機関車を、間近で見、触れることができた
 このことは貴重ではないだろうか
 ディッキーズのつなぎを着た熟練の機関士が、蒸気機関車の仕組みを説明してくれる
 英語はすべて聞き取れるわけではないが、云いたいことは分かる
 ひとしきりの講義を終えて、その機関士がぼそっと口にした
 “It is fun.”
 何気ない言葉だが、とても簡単な一言だが、だからこそ心に残った
 鉄道は楽しい―
 その思いから、自らのテーマパークに鉄道を走らせたウォルト
 その魅力を半世紀経ったいまでも受け継ぎ、守る者がいる
 そして、ここに集まる私のような者もいるのだ


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  十、アナハイム4


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 六十年の歴史のあるディズニーランド・パークはただ楽しいだけの場所ではない
 一つ紐解けば、文化遺産の宝庫と知ることができる
 ホーンテッド・マンション、カリブの海賊、蒸気船マークトウェイン号、ディズニーランド鉄道
 ウォルトの足跡、思いのこもったアトラクションがたくさん残されている
 ことに、魅惑のチキルームがよかった
 一九六三年オープン、晩年のウォルトが力を入れた新技術「オーディオ・アニマトロニクス」を初導入したアトラクション
 余計な演出なく、オープン当時とほぼ同じショーが行われているという
 そのタイトル・ロゴに“Walt Disney’s”という冠を見つけた
 説得力、重厚感、深み
 日本のパークが忘れてしまったもの、消してしまったものが
 ここには未だに息づいている、そしてそれを愛する人もたくさんいる
 それがただただ嬉しかったのだ


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 ディズニーランド開園六十周年記念のいちばんの目玉は
 「ディズニーランド・フォーエバー」だと云っていい
 プロジェクション・マッピングとファイアーワークスの融合したショー
 眠れる森の美女の城に、手をつないで歩くウォルトとミッキーマウスが映された
 これは「ワンマンズ・ドリーム」を結晶させたスペクタキュラーなのだと感じる
 メインショーの終わりに、リチャード・シャーマンがウォルトに捧げる「Kiss Goodnight」が流れる
 その優しい旋律に、あまりに幸せな時間に涙が止まらない


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  十一、ロスアンゼルス

 およそ十日の“アメリカぐらし”を終えてつく帰国の途
 その帰り道は海の上にある
 往きより長い十一時間のフライト
 結局一睡もせず、身体中がムズムズと疼くのをこらえていた
 アメリカ時間で深夜二時のテンションで、二月二十三日午後七時の日本に着いた
 このうちに、一度も生きなかった時間が生まれたことになる
 そんなことよりも気持ちが悪い
 ああ、これが時差ボケというやつなのだな
 宿舎へ向かう電車は鈍いトドメを与えた
 しかし、生きながらえて国に帰ってこられた安心、喜びを噛みしめる気持ちもある
 ふと思い返せば、どの夜もそれぞれ違って魅力的だったのを憶えている
 そして、こうしてコンビニで買ったフルーツゼリーを食べる日本の夜も、またいいものだ
 “A kiss goodnight is the start of a journey”
 “A kiss goodnight is the door where your dreams live”
 素敵な夜を過ごすたびに、あの歌を口ずさむのだろう

  1. 2016/02/26(金) 19:00:00|
  2. 旅行記
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筆者紹介

シバケン-いかれたNeet-

Author:シバケン-いかれたNeet-
Sex:\(`・ω・´)
Work:堕医学生
Base:新潟死期終焉都市

趣味はお散歩、特技は悪だくみ

筆者結語

日常系赤面ブログ「野良犬の生活」を応援していただきありがとうございました

「野良犬の生活」の物語

 はじめましての皆さんへ

長い間ありがとうございました

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